天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【旅】世界の驚異ローマ:聖ステファノ円形聖堂

もうずーーーーーーーーーーっとイタリアへ行ってない。習慣が急になくなって、しかも、もしかしたら二度と取り戻せないかもしれないと思うと寂しくて、心が弱ってしまう。そんな中大切な友人Mさんがローマ&ナポリ行きを決めたので、それに合わせてローマの話をしたいと思います。内容は彼女の旅の参考になればいいなと思う聖堂や美術作品の話がメインになると思う。

ローマのオベリスク

私にとってイタリアは、最初から美術と芸術の国だった。多くの人のように食べ物や観光地チラ見ツアーに参加する気は毛頭なかったから、一ヶ月のイタリア語猛特訓の末、親友Sと二人で旅立った。結局今まで何十回も旅してるけど、一度もツアーに参加したことがない。アフリカとか全然言葉のわからない国ならツアーもアリとは思ってるんだけど、なかなか機会がなくてそのまま。ちょっと前に友人の娘さんがお友達と旅の計画をしてるのを知って、ツアーじゃないなら絶対言葉を勉強した方がいいと勧めました。英語はどこでも役立つし、旅先の言葉を多少は覚えて行った方が、何倍も安心だし、何より何十倍も楽しいから。結局、旅で最も楽しいのはコミュニケーション。

Colosseo

ローマの話をしよう。初めてイタリアに着いたのはローマ。永遠の都。世界の首都。反知性主義の人は、美味しかったり綺麗だったりすればそれでいいのかもしれないけど、私は、物事は深く知っていればいるほど強く感動できるし堪能できると信じて疑わない。だから旅に行く前に本を読むこと。ネット情報だけじゃなくさ。ローマについてはオタクな研究書から、写真ばかりのものまでいくらでもあるからぜひ読んで。歴史好きならこれ以上素晴らしいものは世界にないし、芸術好きにも魅力は尽きない。なのでコロッセーオ(コロッセオじゃない)を見た時は本当に感動した。ローマに来た!着いたんだって実感した瞬間。バスの窓の外にいきなり現れたの。買い物やら日常生活のローマ人達に混ざってバスにスーツケース載せてたんだけど、みんな優しくて助けてくれた。

ローマ誕生秘話のオオカミ

ローマ誕生秘話になった伝説の雌狼とロムルスとレムルスの双子の彫刻も、やっと会えたね!って感じだった。全てエトルリア彫刻ってまだ言われていた頃で、信じ難かったけど一人悦に入って長々見つめてた。ミケランジェロがデザインに関わった、ローマで最も重要なカンピドーリオの丘に建つ、カピトリーニ美術館で会える。大英博物館に驚かされて、ヨーロッパの美術館博物館は日本の比じゃないと知ってはいても、それにしてもカピトリーニ(複合施設なので複数形)には圧倒される。大英博物館なんて屁でもないねって気になる凄さ。しかも大英が盗品の山なのと違って、ここは何もかもほとんどこの周辺のもので、建築物自体の歴史が違う。う〜ん、ローマ。「世界の首都」って言いたくなる気も分かる。

神父さんが歩くベルニーニの回廊

でもローマで何がなんでも外せないのは、やっぱり聖ピエトロ大寺院だと思う。それと広大なヴァチカン美術館。呆気に取られる立派さに、税金の無駄使いに怒りたくなる宗教改革者達の気も分かる。でも歴史を見れば、人々は宗教を欲していたし、今も違う形でその存在意義はあると私は思ってる。カルトやお金を取る目的の宗教はダメだけど、地味に助け合ったりちょっとづつ会費を徴収するのは問題ないし、健全な社会生活かなと。バチカン市国は、そこだけで丸丸一日使うから、今度話すことにして、今は小さな聖堂の話をしたい。

Santo Stefano Rotondo.Roma

サント・ステーファノ・ロトンド(円形の聖ステファヌス)聖堂は、凄く印象的だった。だいたい円は特別な形だ。ルネサンスの人たちも完璧を求めて、古代人が霊廟に使った円を平面図にした計画をたくさん描いている。今は超人気の結婚式場で、行く前に日時を調べる必要がある。中は中世初期のモザイクやルネサンス後期にかけてのフレスコ、それに極最近の修復で美しい。

Santissimi Primo & Feliciano.Santo Stefano Rotondo

7世紀のモザイクが残っているのもものすごく希少!だいたい初期キリスト教時代の聖人って、今では誰も聞いたことがないようなローカルな人ばかりで、聖母とか聖ピエトロみたいな公式で遠い存在じゃなくて、お隣さんみたいな感覚が残ってたんだと思う。構図や表現もシンプルで、地面に緑のモザイクを用いて花を配していくのも大好き。宝石で飾られた「勝利の十字架」は、磔刑にかかって復活したイエスの象徴で当時のお決まり。

頂点部分

後期古代建築の傑作って言われるだけあって、建物自体の構造が素晴らしい。曇ってるとわからないと思うけど、光が強いと陰影や夕陽の反映が、周囲に描かれたフレスコと調和しているっていうのを読んで、さらに感動して、再度夕方訪ねたのを覚えてる。

Santo Stefano Rotondo.Roma

この写真は1996年の修復後の写真。私が初めて訪ねた時は、天井が全然違ってて石の天井でした。修復は、時によって元の形に直さない場合があるけど、ここもあえて違ったデザインを採用したみたい。理由は知らない。とにかくこの聖堂は世界でも凄く数の少ない5世紀に建てられたキリスト教聖堂で、歴史的な価値もめちゃくちゃ高い。でも何よりその空間の霊的な美しさが印象的でした。チェリオの丘に行くことがあれば、寄ってみて。その時買ってきた建築研究雑誌は、いつ出たかもわからない古さだけど思い入れがありすぎて捨てられない。「至高の創造物の過去と未来:黙示録の新たなエルサレム、ローマの聖ステファヌス円形聖堂」っていう手書きも含めた英語論文で図説だらけ!

研究雑誌

これを読みながら、Mさんの旅にかこつけて自分も楽しみたい。旅やローマ、美術が好きな人に読んでもらえれば嬉しいです。最後に、ローマの青い空は最高です。それが最初の写真。

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