天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【美術・歴史】ローマ尽くしの講座

おかげさまで、今年の都立大オープン・ユニバーシティの二講座が開講決定しました。オンラインの「永遠のローマ」と対面の「ローマの美術館・博物館」です。ローマ尽くしの三ヶ月になります。オープンユニバーシティは、一般の大学と違い受講生がそれなりの人数集まらないと開校されないので、私が講座を続けられるのは一重に参加者のおかげです。コロナ明けには、飯田橋で講座を持ってから初めて開講されない講座が一つ出て大変ショックでした。もう辞めようかとも思ったけど、応援してくださる方々のおかげで、年末年始もローマを調べまくっています。

ポンペイ遺跡の影響を感じるPerugino

ローマには「世界の頭」というニックネームがあります。ヴェネツィアには「晴朗極まる都市」(ジェノヴァやサン・マリーノも同じ)という言い方があるのですが、ローマは特別です。世界の頂点(頭)とは古代ローマ帝国時代の栄華と、教皇庁所在地を指すと察しがつきますが、中世や近世、現在のローマはあまり知られていません。

Raffaelloのユリウス二世、Sebastiano del Piombo

この数年、私が子供の頃には想像もできなかった深刻な戦争が世界中で勃発していて、軍隊や国についてを真剣に考えるべき時が来ているように思えます。ある国が巨大ならば当然その影で苦しんだ人や、犠牲になった国が沢山あるわけですから、ローマ帝国万歳みたいな授業はとてもできません。しかしローマを訪ねた人なら誰もが圧倒的な美術の力を目の当たりにするでしょうし、調べれば調べるほど高度に進んだ文化の重みを感じるのも確かです。

大理石製布に覆われたバルベリーニの紋章 Barberini

教皇ユリウス2世がいなければミケランジェロやラッファエッロはあれ程の仕事を残すことはなかっただろうし、ローマ中で見かけるバルベリーニの紋章が地味に見えてしまう程、豪華絢爛で優雅なバロック美術も生まれなかったかもしれないし、ボルジヤ家の退廃の極みは多くのドラマや映画に題材を与えてきたし、良くも悪くもローマは他の都市とは比較にならないと思う。

Pinturicchioの描いたルクレツィア・ボルジャ

ルクレツィア・ボルジャの「化粧の書」が紹介できるかどうかはわからないけれど、狭い意味での美術ではなく、水道橋や下水道に見るローマ帝国の偉大さから、遺跡と美術に囲まれたローマの人々の現代までを念頭に、美術を中心に幅広く話していきたいと思います。ローマという地域は限定でも、ローマ帝国はイギリスやアフリカでも大きな足跡を残したので、そういう意味では広大な地域が対象となるとも考えられます。

キリスト教以前の文明を伝える巨大な松ぼっくり

対面授業の飯田橋で紹介するローマの美術館を、オンラインでも取り上げる予定です💕

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