天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【美術】目と感覚:発光アート

都立大オープンユニバーシティの今の講座が最終段階に入り、もうすぐ次の講座の参加者を募ります。次の対面講座はかつてない方法で行うので多少心配です。本当は極少人数でゼミみたいにやりたかったんだけど、ダメっていうから十人です。どうぞ開講できるように参加お願いしまーす😂

Gian Lorenzo Bernini

で、何が言いたいかって言うとただの宣伝じゃなくて、講座をする上でずっと悩んでいることがあります。それは美術作品をどうやって見せるかと言うことです。私の場合、西洋美術だからどうしても実物をなかなか見せられない。そこで対面の講座では、初めて大型美術書を使って授業することにしました。

Apocalisse

昔は撮影した映像をフィルムに起こしてスライド投影機で見せていました。(何歳くらいまで知ってるかな〜?この方法)お金もかかるし大変だった。その後映像はコンピューターに取り込んで処理するのでずっと経済的にはなったけど、鑑賞者に見せるのはスライドを通じてでした。スライドで見せるとき、MacならいいけどWindowsを通すと完全に色が変わるし、すごく嫌です。でも何より辛いのは、投影機は大きくは写せるけど、ぼやけてしまうので細部まで伝えることが難しい。

Raffaello

だから今回の講座では、参加者全員に意向を聞いて大型テレビ(業務用ディスプレイ)を用いました。大きくできないので教室の後ろに座る人には見にくいから、前に来るように言っても、おとなしい日本人では椅子だけ持って前に来る人は滅多にいません。でもやっぱり全然画像がはっきりするし、色の違いも少ないのです。

Pinturicchio

それでも常に違和感がありました。だって本物(絵画や彫刻、フレスコなど)は発光してないのに、コンピューターを使うとどうしても内側からの光や、画面がツルピカだから異質に成ります。デジタル処理を加えると、ある意味でみんなギラギラした浅い質感になります。色彩も単純になる。これはインスタ映えに慣れきってしまった人には、わからない感覚かも知れないけど私は痛感しています。

ワット・パークナム

そんな時テレビで、タイの息を呑むほど美しい行くべき場所としてワット・パークナムの寺院を紹介していました。私にはこれが、誰もが感動する最高の美しさだとはとても思えませんでした。タイの美術を馬鹿にする気は全くありません。20億円かけて2012年に完成したそうだけど、外のライトアップといい、本当に今風の感覚でマーケティングに成功してる感じです。

immersive degital art

イマーシブミュージアム | Immersive Museum

埋没型美術館は嫌いではありません。しかしこれでゴッホが分かったとか、彼の作品を知ったと言うのは絶対違う。これを元に興味を持ったり、作品や生涯を知っている人が楽しみに行くにはいいと思う。高いけど😭

世界美術大全集

昔の日本人は現在よりもずっと沢山の色の名前を知っていました。山吹色、鶯色、江戸紫とか色々。アフリカにもそう言う研究があるって言うのを読んだ事がある。何百種類も識別できる人たちがいるとか。私はコンピューターが大好きですが、美術を堪能するにはもっと繊細な感覚があった方がいいって思ってるの。だから、少しでも実物に近い媒体として、紙と美術印刷で沢山の作品に触れて欲しいと思います。

https://www.ou.tmu.ac.jp/course/detail/7331

文句ばっかりと思わないで、ちょっと感覚のことを考えてもらえれば嬉しいです。

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