天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【美術】東京の美術館

「東京の美術館」という4回だけの講座を初めて夏季講座にしました。非常にたくさんの方が参加してくださり、大教室での授業となりました。対面ということもあったのかもね。その授業に関して感想をいただきましたので掲載します。Hさんは、私が放送大学で対面の授業を行なっていた時から受講してくださってるお一人です。大変お忙しく、色々なことをなさっているのでいつも来られるとは限りませんが、そういう方が辞めるのではなく、可能な時に参加してくださるのも、とても励みになります。以下はいただいたそのままです。

岩崎ちひろ

今回の講座も楽しく受けさせて戴きました。

先生の講座を、始めて受けさせて戴いたのは、2018年春でしたので、5年以上前になります。

以降コロナ下でのオンライン講座を含め、幾つか受けさせて戴きましたが、最近ある事柄に気が付き、一度先生にお礼メールをしようと思い立ちました。

町田国際版画美術館

その① 直近では(少しお話させて戴きましたが)町田の国際版画美術館です。授業で見せて戴いた版画に記憶があり、町田の美術館に電話してみると、9/24まで「版画家たちの世界旅行」開催中との事。松戸が住まいですので少し遠方でしたが、思い切って行ってみました。保有作品も多い立派な美術館なのに驚きました。松戸の聖徳大学の講座「ローマの美術探索・教会編」でG.B.ラネージに接しましたが、彼の版画10点も展示されていました、当時と殆ど変わっていないローマの建物や風景がとても面白く、本物を見ることが出来、感動いたしました。

 

その② システィーナの約30回の講座は、コロナ下・オンラインで受けさせて戴きました。中身がとても濃く、多岐にわたっていて素晴らしかったです。いつも作る復習の為のレジメは(あっちこっちと自ら脱線することもあって)ほぼ完成しましたが、多分200枚を超えています。スクリーンショットも使わせていただいているので、詳しく深い解説が沢山あって、なんとも豪華なレジュメに仕上がっています。

最近NHK柏の「肖像画の世界」の講義のレジュメを、友人からいただき勉強を始めましたが、この中で、チャールズ1世が登場。ロイヤル・アルバートホールに展示されているラファエッロのタペストリーの下絵は、彼が買い取ったとの事、思わず膝を打ちました。私はロンドンで働いていたこともあり、アルバートホールにも行っているのですが、見逃しています。当時は関心がなく残念でしたが、今になってではありますが、このような気づきを頂けて本当に嬉しいです。先生の講義中は「タペストリーの工房が、ラファエロへの尊敬から、下絵を元通りに貼り合わせていた」ことに大いに驚いたのですが・・・・。

Cappella Sistina

その③去年の「世界の美術館のシリーズ」も、大変面白かったです。私には現代美術はやや難解でしたが、少し近づけた気がしています。素朴派を知ることが出来たのは嬉しかったです。何とも綺麗なので、カレンダーを作り先生にもお渡ししてしまいました(冷汗)。最近、原田マハの「楽園のカンヴァス」をルソーやピカソの絵をダウンロードして眺めながら読んだのですが、彼も素朴派に入れられているんですね、とても興味深く読めましたのもこの講座のお陰です。

 

・・・と言う訳で(他にもカラヴァッジョや、コレッジョ、などなど幾つもあるのですが)、今更ながらではありますが、これらの感動はSABA先生の教えを受け、得られたものだと気付きました。これは一度お礼のメールを差し上げねば、と思った次第です。お忙しいところ、長々とすみませんでした。

現代美術館

いえいえ、こちらこそ!お礼を言います。私が言いたいことは、有名な作品や芸術家ばかりに気を取られないで、自分自身のまっさらな感性で見てどう思うか、感じてほしい!ということと、分かったと思わないでほしいということです。私はどんなに有名な美術史家でも間違うことはあるし、制作しない人が制作する人のことを分かるはずはないと思っています。私たちにできることは、純粋に作品を眺め感じることと、理解したいと思うなら、歴史書思想書、聖書や技術など凡ゆる種類の本を読むことだと思う。それで間違いなく少しは近づける。全く違った時代や社会の人の考えを、現在の日本人の感覚で理解することが間違いだと知ってほしいと思うのです。でも逆に言えば、どんな時代でも共通する感情や感性もあると思うし、それを知るのは喜びです。皆が、自由に美術を楽しめますように💕

【旅】ヴァチカン美術館:スダール症候群と「書いた。愛した。生きた。」

友人Mがヴァチカン美術館征服の旅へ行く前に、思い出を書いています。今回はスタンダール症候群について。

地図の廊下の天井

スタンダール症候群」のスタンダールは、1783年にグルノーブルに生まれたフランス人の小説家(評論もある)。今では文学史の重要な一人だけど、よくあることに生前は理解されなかった。でも元々裕福な良家に生まれ、軍人なのに馬にも乗れず剣も持った事がなくてひたすら遊び呆け、その後も財務官やフランス領事になったんだから全く文句は言えないよね。

映画「パルムの僧院

赤と黒」「パルムの僧院」が断然有名で、映画にもなってる。1948年の映画だけど、映画史上、最大級の良い男と言われるジェラール・フィリップが主演。北イタリアのパルマの修道僧が主人公。その他「イタリア年代記」とか「イタリア絵画論」とかも書いていて、スタンダールがいかにイタリアを愛してたかが分かる。

新古典様式のクーポらと柱

7才の時にお母さんが亡くなったんだけど、生涯母を異常に愛し続けた。女遊びはすれど、理想の女性は母ていう定番のタイプ。まーね。産んでくれた人ほど、大切にしてくれる人がいないのは至極当然な事だけど、芸術家にはよくあるような気もする。レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロもそう言われる。とにかく大好きなお母さんはイタリア系でロマンチックな人だった(らしい)。お父さんは彼女と正反対の実務家で王党派、高等法院の弁護士だった。父に社会的な成功を求められて勉強しまくり、成績優秀で理工学校に合格したんだけど、慣れないパリの生活でノイローゼになっちゃって母方に引き取られて、そのコネで陸軍に入隊しイタリア遠征した。これも時々あるんだけど、軍隊で遠征してるとは言え、本を書いたり研究したり、いわゆる兵隊の仕事とは無縁の生活をする人がいる。しかも敵国に遠征してるのに、そこが気に入っちゃうっていうのも珍しくない話で、スタンダールは母への愛と合わさって、気持ちの上ではイタリア人になっちゃった。

地図の廊下というように地図が主役だけど天井がもの凄い

軍隊を辞めた後は、また母方のコネで官僚になりガンガン出世。ナポレオンはロマンチストのヒーローだったんだけど、ナポレオンの没落と共にスタンダールも出世の道が消えちゃった。でもフリーのジャーナリストになって、イタリアの自由主義者たちと親交を結んで活躍する。大嫌いなフランス(父は完全なフランス人だ!)だったにも関わらず、フランスのスパイと思われ、40才を目前に失意の内に帰国。

天井は似たようでそれぞれ違ったデザインになっている

代表作「赤と黒」は、フランスの王政復古時代を批判的に捉えた、彼の思想をよく表したこの時期のもの。でも「赤と黒」の出版された1830年七月革命が起きて、自由主義者の天下が再び訪れる。オーストリアメッテルニヒが反対してトリエステのフランス領事にはなれなかったけど、教皇領のチビタヴェッキア駐在フランス領事(だ〜いぶ小さい)になった。1842年、パリの街頭で脳出血で倒れた。墓碑銘はものすごく有名。「書いた。愛した。生きた。」でも実はその前に彼の名前が書いてある。「ミラノ人アッリーゴ・ベイレ、書いた。愛した。生きた。」だっていうのを知ってる人は少ない。フランス人小説家って言って欲しくないんじゃないかな〜と思ったりする。

バロック風の円天井

このスタンダールの名前がついた症候群っていうのは、1817年にスタンダールが初めてイタリアを訪れた時、フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂で、猛烈な眩暈と動悸がして気分が悪くなり、しばし茫然自失したことに端を発している(という)。1989年に、イタリア人の心理学者マゲリーニが、多くの観光客に似たような症状があると気づき、名付けた。ほとんどが外国人観光客で、崇高な充実感と強い圧迫感が伴うんだとか。原因ははっきりしないんだけど、実証的説明をすれば、首を5分以上長時間後ろに反らせたまま(見上げる状態)でいると血流が悪くなる、というもの。

Dario Argento

ちなみに世界に誇るイタリアB級ホラーの帝王ダリオ・アルジェントはこれを利用した映画を撮ってる。主人公はウッフィッーツィ美術館の中でスタンダール症候群になって倒れちゃうのだ。ボッティチェッリのビーナスと主人公の顔が上手く重なってると思わない?イタリアでは大ヒットしたけど、日本未公開。

ウェッジウッド式、新古典様式の天井

これでわかったと思うけど、ヴァチカン美術館では、気をつけないとスタンダール症候群になる危険が大いにある。あまりに有名な絵や作品があるから、それほど真剣に見てる人は少ないけど、何キロにも及ぶ天井は、様々な内容と様式の美術で埋め尽くされているから。これだけで他の国ならとっくに大作品になってるのに、見向きもされないのがヴァチカンの凄さかな。

【旅】ヴァチカン博物館:グレゴリウス・エジプト美術館

友人Mがヴァチカン博物館へ行くので、思い出を書いてます。最初の方に出てくるグレゴリウス・エジプト美術館へ。

白と黒のコントラストが美しい

初めて見た時、無知な私は、こんな素晴らしい古代エジプトの作品が集められているのに単純に驚いた。でも考えてみれば、旧約聖書にはエジプトの話が何頁も出てくるのだから、古代エジプトキリスト教徒の源の一つなんだと分かる。教皇のうち何人かはエジプト文明にとても関心が高く、19世紀の教皇グレゴリウス八世時代に、エジプト学者だったウンガレッリ神父の提唱で開館した。どんな宗教もそうだけど、表面的で強権的な理解しかできないゴリゴリの頭の硬い人と、本質を大切に広い視野を持つ人がいる。

象形文字がかっこいい

象形文字っていうのは具体的な物を絵にしたところから発展した物だけど、一言に言っても色々ある。エジプトのヒエログリフが一番有名だけど、メソポタミア楔形文字とか日本語もそうだ。見た目は可愛いかったり面白いけど、合理的じゃない。だっていくらでも必要だし、覚えるのに時間がかかり無駄が多い。地中海やアラビアの表音文字の方がよっぽど合理的で私は好き。だって漢字を覚える労力を、物事を深く考える時間に充てられるじゃない。

フレスコの女性頭部

このフレスコの女性を見た時、やっぱり地中海文明だと思った。ポンペイの壁画とそっくり。二重に違いないパッチリ大きな目と、隈取りしてるんだろうけど、瞳、まつ毛、眉毛、豊かな黒い髪がはっきりした顔立ちを作る。鼻は高くて肌は真っ白って感じじゃない。今のイタリア人にも多い傾向だ。

紀元前664−524年の浮き彫り

古代博物館には、どこでも破片が沢山あって、私はイマイチ苦手。でもここの破片には色々絵が彫り込んであって芸術的!職人の質が高かったのがはっきり分かる、動物や鳥の光景と、縞模様のデザイン性が東方と西方の美術の融合を見るようだ。

アンクやスカラベ

古代エジプト文明はとーーーくの昔に滅んだのに、今も人々を魅了する古代文明の王者だと思う。エジプト十字のアンクや黄金虫を模ったスカラベなど、現在も若い人向けの様々なデザインに取り入れられてる。私はイタリア留学時代に、あるエジプト人の女の子と仲良かったんだけど、彼女は色々なことを教えてくれた。英語ができたから向こうで観光ガイドをやってたんだって。古代エジプト人は頭をパワーの源と考えていたので「後頭部を前頭部と同時に描くために横向きで描いた」という話が印象的だった。

おもちゃかな?

これはおもちゃか、副葬品か?身の回りものを一緒に埋葬するのは、死後の世界を信じる宗教には一般的で、イタリアではエトルリアのお墓が凄い。

紀元前1300−1250年の彫像

エジプト専門の博物館といえば、トリノに世界で2番目(一番は当然現地)を争う巨大な博物館があるんだけど、ここに収められたものは、ローマとティヴォリのハドリアヌス帝の別荘から出土したものに個人コレクションが加わってできた。ラムセス二世の象も歴史的には印象に残るけど、造形的にはファラオの神官で医者だった人の像があってそれが素晴らしい!個人的には、人間と動物が合体したものや動物の像が面白く、上の写真で〆と思います。写真は自分で撮影、説明はヴァチカン博物館の出版物から。ヴァチカンの旅は始まったばかり・・・(*_*)

【旅】唯一無二のヴァチカン市国:博物館ルートと序章

ローマの旅の思い出を美術を中心に書いています。恐るべき内容のヴァチカン博物館の全体像を描いてみることにしました。だってあまりに壮大で、目的と体力と時間によって考える必要があるからサ。で、全体像がこの地図。入り口と出口は決まってるんだけど、あとはどうしたいかで変わってくる。

ヴァチカン博物館の位置と道順

図の下方、赤い丸が入り口。最悪、本気で時間の無い人は、システィーナ礼拝堂だけ見て帰る。悲しーけど、人生はなかなかうまくいかないから、そんな時もある。システィーナ礼拝堂は、図の一番上の写真のところ。ウルトラすっ飛ばしコース。そうでない人は左下あたりのグレゴリウス博物館で、エジプト美術から始める。

ラオコーンのある中庭は博物館の起源。さあ、これからだ!

最初の方に集中してるのは古代彫刻。この辺りはみんな、いよいよ来たぞ!観るぞーっ!って言う活気に溢れていて、人の頭でラオコーンの写真なんか撮れやしない。正面からは無理だったんだけど、この写真は結構上手く撮れた。アップもあるけど、後ろの浮き彫りも比較になるし気に入ってる。この中庭は博物館の起源になったもので、ルネサンスの教養人たちの趣味や憧れが感じられるし、有名なラオコーンやアポロなんかと違ってちょっとした石棺や、門の上についていた変な顔たちとか、ローマ人のいいんだか悪いんだかわからない趣味が面白い。私は、お墓を囲むローマの松の浮き彫りが好き。

門の上で「入ってくんなっ!」と言ってるみたい。太り過ぎ・・

普通の旅なら、この中庭だけで十分すごい名所って感じで撮影して終わりなんだけど、いよいよ建物の中へ入ると、ローマらしい彫刻の部屋が並んでる。物凄く残念ながら部屋には入れないで、正面から覗くだけ。しかし凄い。古代人、彫刻上手過ぎませんか?迫力ある自然主義の動物や神様が、大小様々。ここでは完全に脇役っぽいけど、他の美術館なら、この中の一点でもあればメインになるようなものばかり。私にとってのローマのイメージそのもので、動物中心の部屋では、襲ったり、戦ったり、殺したり、怖い内容のものばかり。豚もリアルに丁寧な作り。ぶーちゃんは、なんのために作られて、どこに置かれていたんだろう?

動物がいっぱい

旅は始まったばかり。最初の大感動は「ベルヴェデーレのトルソ」です。壮絶な美術尽くしの宮殿の廊下で、特別に展示してあるにも関わらず、多くの人は見ていません。水色のシャツのおじさんはガイドかな?この作品の価値をわかっている様なのは彼一人。それにしてもなんて素晴らしい背中なんだろう。前から見てもいいけど、この角度も陰影がよく出て力強い。これはヘラクレス像らしいんだけど、ギリシャ彫刻をローマ人が紀元前1世紀に複製したもの。ルネサンスの、良くも悪くも偉大な教皇ユリウス2世時代に発見された。教皇ミケランジェロに「頭や手足をくっつけて修復しろ!」と言ったんだけど、この彫刻の美に打たれたミケランジェロは必死の抵抗をして、出てきたままになった。トルソっていうのは、胴体だけの部分を呼ぶ美術用語。本当にミケランジェロはすごいよ。権力に屈せず、真の美を愛してるんだなーっと、痛感する、ミケランジェロらしい最高のエピソード。

ベルベデーレのトルソ

天井のフレスコや立派な柱に圧倒されまくりスタンダール症候群になりそうな廊下を抜けていくと、グレゴリウス博物館。???なぜ???こんなにエジプト?と思うけど、状態も素晴らしく、美的にも綺麗な面白いエジプト人の作品が並んでる。友人は、ここで楽しみすぎて長居しちゃって、あとは駆け足になったくらいです。

マントヒヒとか

続きはエジプトからね😃

【旅】唯一無二のヴァチカン市国:絵画館

ローマに行く友人のために、ローマの思い出を書いています。と言っても完全に美術紹介中心の内容だけど。今日はヴァチカン絵画館について。絵画館なので絵を見せたくて写真が大きいけど、暗いので質が悪く残念。

Niccolo` e Giovanni

ヴァチカン博物館はイタリア語ではMusei Vaticani と複数形。これは世界一有名な美術作品の一つ、ミケランジェロの「最後の審判」や「創世記」があるシスティーナ礼拝堂や、これ以上なく完璧なルネサンスの理想図「アテネの学堂」を含むラッファエッロの間(これも複数形)、彫刻の王様のような「ラオコーン」のある中庭など多数の博物館、美術館の集合体だから。たくさんあるので少しずつ。今日は絵画館だけ。ヴァチカン博物館に行ったことがある人は、たいてい絵画館には最後に行くか、もう疲れ切って行かないかって感じだと思う。もし本気で、美術が好きで日時が許すならヴァチカン博物館だけに最低二日は取りたいから、私はすぐ近くのB&Bに泊まって通いました。

Beato Angelico

ヴァチカン博物館は、一般の美術館と違い建物自体が壮絶に美術で塗り固められているので、一つ一つ丹念に見ていたら一生涯でも必要なほどです。多くの人は「わ〜っ!すごーい」と圧倒されながら素通りします。知人なんか、最初に出てくるエジプトの間で時間とエネルギーを消費して後はなんとか最後まで歩き通したくらいだから、自分の目的と体力、時間を考えて見てゆかないとね。でも今回の目標はヴァチカンだ!と決めたら2〜3日(長ければ長いほどいい)通うのも楽しいよ。

聖人殉教場面

第一室は中世絵画の間。ルネサンスのように有名だったり華やかだったり上手くなかったりするけど、中世愛好家には嬉しい場所。ほとんどが板絵で木にテンペラで描かれてるところも後の油彩や水彩とは趣が全然違う。美術史なんか読んでる、ちょっと物知りな人たちにはジオットの祭壇に気が行くかもしれないけど、私はジオット信者ではないので、なんといっても12世紀の鍵穴の形をした巨大な最後の審判図に注目したい。一番上の写真が、いい写真じゃないのはガラスの覆いがついてて暗いからです。よく見たい人はプロの写真を見てください。ビザンチンとイタリアの融合した質の高い作品で見逃せないし、ものすごく珍しい。中世の絵画は、自然主義ではなくて、キリスト教の教えが説明的に描かれる場合が多い。それに当時の流行や習慣が入り込んでくる所が楽しい。聖書に詳しければ詳しいほど、何が描かれているかわかるので面白さは100倍です。

Giotto

ジオットについては色々日本語の本が出てるから読んでください。私は彼の生真面目な感じと顔立ちが好きじゃないんだけど、ものによってはとてもいいと思うし、木や岩の表現は面白い。それに対して時代は降るけどベアート・アンジェリコ(=フラ・アンジェリコ)は全面的に大好きです。彼のサンタクロース伝説の元になった聖ニコラ伝やその他の断片は、どれも珠玉の作品。彼はルネサンスに入れられるけど、中世を十分に感じさせる信仰深い点と、ルネサンスの新たな意欲を感じる。ジオットと違って、優しさとおもしろ可愛い感じがあるのが好き。

Ercole de Roberti

↑これじゃ全然わかんないと思うけど、通ならフェッラーラ派っていうのを聞いたことがあると思う。エルコレ・デ・ロベルティはフェッラーラの宮廷でエステ家の仕事を色々とやった画家で、物凄く面白い。フェッラーラ派で一番有名なのはカルロ・クリヴェッリだけど、他にもマルコ・ゾッポ、コスメ・トゥーラ他異色の画家が揃っていて、エルコレはその筆頭です。硬質な筆と北方的な緻密な表現や、幻想的な岩や建築物のある風景に謎の生物が描かれたりする。フェッラーラ派はどこかグロいところが共通点だから、好みはあると思う。

Melozzo da Forli

↑それに対してメロッツォ・ダ・フォルリの「楽奏の天使たち」は一般的に人気の高い作品。すぐ分かる通り、本当は聖堂のフレスコだったのを剥がしてバラバラにされちゃった、可哀想な例。天使には階層があって神様の周りを飛びながら天上の音楽を演奏してる。でこの作品は今展示されている様な場所とは全く違った、天井の高いところでぐるぐる回って配置されていたので、下から見上げたところを考えて描かれてるから、変な風に斜めだなと思うかもしれないけど、本来の場所にあればすごく綺麗なはずでした。もっとたくさんいるんだけど、特に可愛くて状態の良い天使が、いろんなところで使われています。

Cola dell'Amatrice

↑コーラ・デッラマトリーチェの名前を知ってる人がいたら、全然ただ者ではない。普通に日本語で出版されてる本にはまず出てこない画家だけど、この三連祭壇画を見れば一流なのが明白だと思わない?私はいつも思うんだけど、世の中はいろんな意味で不公平でしょ。美術の世界も全くそうで、素晴らしい美術家でも全然無視されてる人もいれば、大したことない作品なのにバカみたいな高額取引の対象になったりする。特に美術に興味がなければミケランジェロレオナルド・ダ・ヴィンチ、ラッファエッロくらい知ってたら十分と思うけど、美術好きを自認する人たちが、まるでジオットやカラヴァッジョしか価値がないみたいに考えてるとしたら、それはすごく残念なことだと思う。

Pinturicchio

↑ピントリッキォは私にとって特別の画家。これも「いいな〜っ」と思う。私がイタリア留学のために、初めて住んだ住所がピントリッキォ通りだった!(勝手に美術研究のために来た私のために用意された部屋の様に感じた)彼はペルジーノと合わせてペルージャを代表する画家で、ルネサンス教皇たちのために素晴らしい仕事をしたし、ヴァチカン博物館の驚くべき教皇たちの部屋の中で、ボルジアの部屋を手掛けたのは彼です。ある意味、一番綺麗なところだと思う。シエナのピッコローミニ図書館(シエナの大聖堂内にある)という宝石箱のような部屋を描いたのも彼。写本画家の装飾的な部分、ビザンチンの東方的な雰囲気、ルネサンス自然主義を併せ持った、穏やかで明るく繊細な画風が特徴です。

Raffaello

ラッファエッロについても沢山本が出てるから説明はしない。とにかくここにタペスリーも含め、彼の最高傑作が固まって飾られてるのは、絵を好きなものには本当に感動的。その他レオナルド・ダ・ヴィンチの聖ヒエロニムスもある。私はレオナルド信者でもないんだけど、この絵を見た時は思わず好きになりそうだった。エピソードもすごいしね。必見!

Giovanni Bellini

↑これはルネサンスの最後の方に展示されてるんだけど、ジョヴァンニ・ベッリーニの珠玉の作品としてとても名高い作品。ピエタの一種で、死せるキリストの体を下ろしているところ。埋葬する前に打たれた釘の跡(聖痕)を見つめてる。一枚で十分に美しい作品だけれど、本来はペーザロにある祭壇画の頂点に置かれた部分だった。キリストの姿が哀しくも美しいし、アリマタヤのヨセフとニコデモの堂々とした姿が印象的。この絵が見たくてたまらなかったから、初めて見た時はとても感動して、長い間前に立っていました。もちろんペーザロにも行って全体像を思い浮かべてみた。

Guido Reni

ルネサンスの作品が中心で、最後の方はバロック期の作品になる。力のこもった作品がいくつもあるけど、そこから二つ。一つはグイド・レーニの聖ピエトロの逆さ磔。怖いよー😭 聖ピエトロは初代教皇だから、ヴァチカンにとっては他の聖人とは比較にならない重要な聖人。師のイエスと同じ刑はおこがましいからと、自らより恐ろしい逆さ磔になった!そんなことしなくても〜。でも殉教できるような人はそういう気持ちになるものなのかもしれないとか、思ったりする。画家のグイド・レーニは、当時は大人気で多作なんだけど、作品の質に結構ばらつきがある。売れっ子になり過ぎてダメになるタイプ。でもこの作品は本領発揮で圧倒的な力強さがあるし、彼の構図の才能がよく現れてると思う。

Caravaggio

バロックの頂点を極めるような作品が2枚並んで、ヴァチカン絵画館は終わる。カラヴァッジョは、人間的にもデッサン力も問題のある人だったけど、この作品は良い。私はカラヴァッジョ信者でもないんだけど、彼の作品はほとんど見ていて、この作品は最も好きな作品の内の一枚。着想、色彩、構図、素描、キリストの顔など全てがカラヴァッジョにしては珍しく完璧に近いと、私には思える。

Giuseppe Momo

カラヴァッジョを見終わった頃には、いつも疲れ果てていて「もう終わりだから出てくださーい。」と言われながら、名残惜しんでギリギリまで頑張って、ヴァチカン絵画館に別れを告げる。絵画館はヴァチカン博物館の中では、ごく一部でしかないのに、普通の美術館に十分負けない広さで、内容はもの凄い。やっぱりヴァチカン博物館に2時間とかいう算段では、とても見切れないから、美術好きの人はせめて二日に分けて、ゆっくり見てください。清々しい外気に触れて、満腹感を噛み締める瞬間を大切にしたい。

【旅】終わりと始まりのローマ:聖女コスタンツァ霊廟

ローマの旅の思い出を、美術を通じて書いています。第一回はチェリオの丘の円形聖堂について書きました。今日は円形続きだけど霊廟です。昨日との関連は円形ってだけじゃなく、穴場ってことも同じだし、古代ローマと初期キリスト教美術の時代って事も重なります。

天使、葡萄、牛が可愛いモザイク

大雑把に地図から。今日紹介するのは赤いポイントが付いてる場所。超有名観光地としてまずトレビの泉やコロッセーオ、バチカンの位置を確認してね。緑のボルゲーゼ公園も見える。今日の開始は「ローマ」のマの上にある「ピア門」ここから始まり〜。ローマ中心部から歩くには相当かかるので、バスに乗ります。目印はまず Porta Pia(ポルタ・ピーア:信仰の門)。この内側がいわゆるローマの中心部で外へ出ます。

聖女コスタンツァ霊廟への地図

ポルタ・ピーアは271−5年に古代ローマ皇帝だったアウレリアヌスが作った城壁の門だったんだけど、バロック時代に対抗宗教改革に力を入れていたピウス4世(門の名前の由来)がミケランジェロにデザインさせた門。このファサードは内側のデザインで、ミケランジェロ案を改変して彼の死後にできたもの。結構変更されてはいるんだけど、初めて見た時に「なかなか良いなー」と思ったのをよく覚えている。いいなと思った時は何も知らなくて、調べたらミケランジェロだったので、流石〜!と感心した次第です。

Porta Michelangelo

イタリアを旅していれば至る所に門はあるけれど、基本似たり寄ったりです。この門の裏側ファサードは新古典様式の、忘れちゃうようなデザインなのと比較すれば、いかにミケランジェロファサードが独自性があって力強いデザインか分かる。ミケランジェロと比較されちゃ、かなう人はなかなかいないけど、ふっつーの偉そうなデザインは新古典様式の特徴かな。で、バスでこれを通過して目的地へ向かいます。目的地は聖女コスタンツァの霊廟です。

ピア門をローマ中心部の外側から見たところ

ローマは一年中観光客で溢れていて、バチカンやトレビなんかはうんざり状態なんだけど、ここへ来る人は滅多に居ないので心が休まります。周りには普通の家が並んでいて、緑に囲まれて城壁がちょっと見え隠れする。奥まったところに、古代ローマが終わりキリスト教が始まる頃の建造物が見えます。方形と円形を組み合わせたシンプルだけど、威厳のあるデザインです。

Mausoleo di Santa Costanza

当時は下の図のように、円形の建造物が向かい合い、ローマ人が熱狂した競技場があったんじゃないかという説がある。元々お相撲だって死者を弔うための奉納の儀式だったっていう説もあるくらいで、亡くなった人が好きだった事を、近くでみんなが楽しめば、確かに弔いになるような気もする。ちなみにこの図は18世紀の天才舞台芸術ピランデッロが、古代ローマの原型を再現しようと試みたもの。四角いファサードは、実はバジリカの奥の壁で、現在入り口への道になってるところに身廊があったっていう説もある。図の中央部分が身廊だったってことだけど、残念無念に今はない。

現在は壁と建築物の一部が残るのみ

そもそも霊廟っていうのは、偉い人のお墓のこと。タージマハールもそうだし、ローマならCastel Sant'Angelo(カステル・サンタンジェロ:大天使要塞)も皇帝ハドリアヌスの霊廟だった。イタリアの場合は古代ローマ帝国崩壊後に、キリスト教の聖堂に改変される例は全然珍しくない。建築史上の傑作ローマのパンテオンも「全ての神」って意味なんだから、キリスト教のわけはなくてローマの神々に捧げられてた。でこの霊廟は、キリスト教を公認したことで西洋史に名高い(本当かどうかは実は謎)コンスタンティヌスの母ヘレナ(この人は熱狂的キリスト教徒)と娘のコンスタンティアのお墓で、この周囲で崇められてた聖女アグネス(サンタニェーゼ)の殉教したお墓の上に造られてるというのが通説。歴史はこの辺にして、とにかく良い雰囲気のところです。

航空写真で見るとよく分かる

中に入った!ウワォ!目を見張る素晴らしさ!円形に弱いのかな私、と思いたくなるけど、聖ステファノと違って、ここは回廊の天井がドーナツ型みたいになってて、そこに全面古代ローマと初期キリスト教が融合したモザイクがある。サイコー!!340-45年に造られた建物で、モザイクも4世紀のものがこんな素晴らしい状態で残ってるなんて、神に感謝!写真は黄色くなってるけど、モザイクは白地です。最初にある小さい写真はモザイクの一部。

Maosoleo di Santa Costanza

今は地下は見られないけど、本当はクリプタ(地下礼拝堂)があった時の立面図が下。平面図はわかりやすいし、聖ステファノ聖堂より、あらゆる所に円形を使っていて、古代ローマ皇帝の親族の特別扱いぶりが明確な、がっちりどっしりした素晴らしい作り。

平面図と立面図

それにしてもこの聖堂の一番は、モザイクの天井画の内容が独自なところ。中世のキリスト教が確立して以降とは全く違う表現で、いわゆる神様や聖人や救世主(イエス)の姿が、直接表されることがない。それらはみんな「葡萄の収穫」に象徴的に表される。

圧巻はドーナツ型の天井モザイク

聖書を読めば誰でも分かる通り、葡萄、葡萄の木、収穫、という言葉は何度も繰り返され、それが神の恵みを豊かに実らせ、刈り入れる図柄になってる。この頃はまだまだキリスト教徒は多数派じゃなかったから、信者を増やすことが「豊かな収穫」で望まれている。一つ一つの人物や動植物の表現はリアルで、古代ローマの美術らしさが満載。

アプシスのモザイクも見どころ

天井は完全に、葡萄の蔓をデザイン化した部分と、幾何学文様が交互になって、白地に紺色の配色も清々しい。その下には、美術史的にはめちゃくちゃ有名なキリスト像がある。4分の1球形の部分をアプシスって言うんだけど、ここは特別な場所で中世以後の雰囲気を伝えて、救世主の姿が見える。全く違った、とても同じ人とは思えない表し方が面白い。

このイエスが凄い!

金髪、無髭のめちゃくちゃ若々しいキリストは、ラヴェンナでも見られるんだけど、ラヴェンナの金髪無髭のキリストは古代ローマの髪型で、完全にローマ貴族を彷彿とさせる点で威厳がある。こっちのキリストは長髪で、古代ローマ人でもないし「ヘイッ!」って言ってるみたいで親しみが持てるというか楽しい。両側にいる聖人はペテロとパウロで、律法(新しい法律=キリストの教え)を渡してるところ。両聖人は殉教したから、その印の棕櫚の木がリアルだけど、お家みたいなのはエルサレムとローマの象徴かな。もちろん羊は信者。無花果と柘榴もキリストの象徴。

金髪髭無し!

このモザイクを初めて見た時は、まだまだ勉強し始めで知識も少なかったから、このキリストにかなりびっくりしました。昔の人(4世紀)はこんな風にキリストを想像してたのだろうか、でももっと中世で一般化するユダヤ人らしい髭のある、長髪を二つに分けたキリスト像もあるんだよね〜。それが先にあげた写真で、内容は同じ律法の授与。

どっしりし過ぎの石棺

最後にこのどうしようもなく重そうな巨大な石棺を紹介します。本物はヴァチカン美術館に移動されちゃって、これは複製品。それでもびっくりする。モザイク同様、葡萄の収穫と鍵(律法)の授与がテーマ。間違いなく職人の質が高かったことが分かる作りで、なぜこのあと中世に入ると、とんでもなく下手くそな作品が増えるのかと、その時も不思議に思ったのを覚えてる。私にとって、古代ローマらしい美術は、迫力のあるリアルさで威圧的、時には怖い印象を与えるもの。一方中世らしいっていうのは、どこか笑っちゃうような素人くさい部分があるものが多いのだ。経済力と国の威信の違いかな〜。ボルゲーゼ公園付近に二日かけられるようなら、絶対おすすめしたいです💖

【旅】世界の驚異ローマ:聖ステファノ円形聖堂

もうずーーーーーーーーーーっとイタリアへ行ってない。習慣が急になくなって、しかも、もしかしたら二度と取り戻せないかもしれないと思うと寂しくて、心が弱ってしまう。そんな中大切な友人Mさんがローマ&ナポリ行きを決めたので、それに合わせてローマの話をしたいと思います。内容は彼女の旅の参考になればいいなと思う聖堂や美術作品の話がメインになると思う。

ローマのオベリスク

私にとってイタリアは、最初から美術と芸術の国だった。多くの人のように食べ物や観光地チラ見ツアーに参加する気は毛頭なかったから、一ヶ月のイタリア語猛特訓の末、親友Sと二人で旅立った。結局今まで何十回も旅してるけど、一度もツアーに参加したことがない。アフリカとか全然言葉のわからない国ならツアーもアリとは思ってるんだけど、なかなか機会がなくてそのまま。ちょっと前に友人の娘さんがお友達と旅の計画をしてるのを知って、ツアーじゃないなら絶対言葉を勉強した方がいいと勧めました。英語はどこでも役立つし、旅先の言葉を多少は覚えて行った方が、何倍も安心だし、何より何十倍も楽しいから。結局、旅で最も楽しいのはコミュニケーション。

Colosseo

ローマの話をしよう。初めてイタリアに着いたのはローマ。永遠の都。世界の首都。反知性主義の人は、美味しかったり綺麗だったりすればそれでいいのかもしれないけど、私は、物事は深く知っていればいるほど強く感動できるし堪能できると信じて疑わない。だから旅に行く前に本を読むこと。ネット情報だけじゃなくさ。ローマについてはオタクな研究書から、写真ばかりのものまでいくらでもあるからぜひ読んで。歴史好きならこれ以上素晴らしいものは世界にないし、芸術好きにも魅力は尽きない。なのでコロッセーオ(コロッセオじゃない)を見た時は本当に感動した。ローマに来た!着いたんだって実感した瞬間。バスの窓の外にいきなり現れたの。買い物やら日常生活のローマ人達に混ざってバスにスーツケース載せてたんだけど、みんな優しくて助けてくれた。

ローマ誕生秘話のオオカミ

ローマ誕生秘話になった伝説の雌狼とロムルスとレムルスの双子の彫刻も、やっと会えたね!って感じだった。全てエトルリア彫刻ってまだ言われていた頃で、信じ難かったけど一人悦に入って長々見つめてた。ミケランジェロがデザインに関わった、ローマで最も重要なカンピドーリオの丘に建つ、カピトリーニ美術館で会える。大英博物館に驚かされて、ヨーロッパの美術館博物館は日本の比じゃないと知ってはいても、それにしてもカピトリーニ(複合施設なので複数形)には圧倒される。大英博物館なんて屁でもないねって気になる凄さ。しかも大英が盗品の山なのと違って、ここは何もかもほとんどこの周辺のもので、建築物自体の歴史が違う。う〜ん、ローマ。「世界の首都」って言いたくなる気も分かる。

神父さんが歩くベルニーニの回廊

でもローマで何がなんでも外せないのは、やっぱり聖ピエトロ大寺院だと思う。それと広大なヴァチカン美術館。呆気に取られる立派さに、税金の無駄使いに怒りたくなる宗教改革者達の気も分かる。でも歴史を見れば、人々は宗教を欲していたし、今も違う形でその存在意義はあると私は思ってる。カルトやお金を取る目的の宗教はダメだけど、地味に助け合ったりちょっとづつ会費を徴収するのは問題ないし、健全な社会生活かなと。バチカン市国は、そこだけで丸丸一日使うから、今度話すことにして、今は小さな聖堂の話をしたい。

Santo Stefano Rotondo.Roma

サント・ステーファノ・ロトンド(円形の聖ステファヌス)聖堂は、凄く印象的だった。だいたい円は特別な形だ。ルネサンスの人たちも完璧を求めて、古代人が霊廟に使った円を平面図にした計画をたくさん描いている。今は超人気の結婚式場で、行く前に日時を調べる必要がある。中は中世初期のモザイクやルネサンス後期にかけてのフレスコ、それに極最近の修復で美しい。

Santissimi Primo & Feliciano.Santo Stefano Rotondo

7世紀のモザイクが残っているのもものすごく希少!だいたい初期キリスト教時代の聖人って、今では誰も聞いたことがないようなローカルな人ばかりで、聖母とか聖ピエトロみたいな公式で遠い存在じゃなくて、お隣さんみたいな感覚が残ってたんだと思う。構図や表現もシンプルで、地面に緑のモザイクを用いて花を配していくのも大好き。宝石で飾られた「勝利の十字架」は、磔刑にかかって復活したイエスの象徴で当時のお決まり。

頂点部分

後期古代建築の傑作って言われるだけあって、建物自体の構造が素晴らしい。曇ってるとわからないと思うけど、光が強いと陰影や夕陽の反映が、周囲に描かれたフレスコと調和しているっていうのを読んで、さらに感動して、再度夕方訪ねたのを覚えてる。

Santo Stefano Rotondo.Roma

この写真は1996年の修復後の写真。私が初めて訪ねた時は、天井が全然違ってて石の天井でした。修復は、時によって元の形に直さない場合があるけど、ここもあえて違ったデザインを採用したみたい。理由は知らない。とにかくこの聖堂は世界でも凄く数の少ない5世紀に建てられたキリスト教聖堂で、歴史的な価値もめちゃくちゃ高い。でも何よりその空間の霊的な美しさが印象的でした。チェリオの丘に行くことがあれば、寄ってみて。その時買ってきた建築研究雑誌は、いつ出たかもわからない古さだけど思い入れがありすぎて捨てられない。「至高の創造物の過去と未来:黙示録の新たなエルサレム、ローマの聖ステファヌス円形聖堂」っていう手書きも含めた英語論文で図説だらけ!

研究雑誌

これを読みながら、Mさんの旅にかこつけて自分も楽しみたい。旅やローマ、美術が好きな人に読んでもらえれば嬉しいです。最後に、ローマの青い空は最高です。それが最初の写真。

【芸術】講座参加者S氏の感想

Sさんは、想像する限り、私とは大違いの大変羨ましい余裕ある人生を送られています。アメリカやイギリスでの駐在経験が元の性格に加わってか、芸術に広く関心があり、ずっと講座に出てくださっています。いただいた感想をそのまま掲載します。

ケルズの書

SABA彩子先生
講義『映画になった西洋美術』感想

遅ればせながらで申し訳ありません。「映画と美術」というありそうで、なかなかお目にかかれないテーマでの、10回講義でした。渾身の解説にとても感銘を受けましたので記憶に残る分だけでも、と思い一言感想文にしてみました。思い出しながらなので勘違いが多々あると思いますが、当方のキャパシティ不足に付きご容赦ください。

各回、興味津々の重要テーマを蘊蓄満載で深掘りして紹介いただきました。
①   ザックリ映画史
イタリア・ネオリアリズム愛が伝わります。
②   ピグマリオン神話―アンドロイドの源流

絵画『ピグマリオンとガラテア』ー映画『メトロポリス』―SF『アンドロ羊』、映画『ブレードランナー』―TVドラマ『ヒューマンズ』
③   映画『美しき諍い女』、文学と芸術論。プッサン割と好きなので、文学に登場するほど偉大な存在だったのかとびっくり。
④   ゴッホ神話
最も多く映画化された画家。『星月夜』はLEGOにもなっています。
⑤   モナリザ神話
世界で最も有名な絵画。あらゆる芸術で引用される。
⑥   映画『ゲティ家の身代金』ゲティ美術館の誕生秘話。
以前西海岸に住んでいたことがあり、ゲティ美術館や新聞王(『市ケーン』)のハーストキャッスルに行ったことがあります。どちらも70年代に誘拐事件があったのは何かの因縁か。ともに西部劇かフィルムノワールのような、想像を絶する展開でアメリカらしい
⑦   ケルト伝説、アニメ『ブレンダンとケルズの秘密』
まずは装飾写本「ケルズの書」で中世のケルト美術を学ぼう。そのあとエンヤを聴いて『指輪物語』を読んで古代ケルトに思いを馳せる。
⑧   パゾリーニ映画と宗教画
オムニバス映画『ロゴパグ』の中の一篇ではロッソ・フィオレンティーノ、ポントルモの絵画を再現。
決して理解できないであろうと思っていた映画監督だが、『奇跡の丘』もう一度見てみようと思いました。「マタイ受難曲」も聴けるし。
⑨   ユディット伝説(芸術における男と女の戦い)ロダンが罵倒される力の入った講義。
ちょうど旧約絵画の本(秦剛平)を読んでいたら表紙がジェンティレスキでした。その他8人の女性アーティストの壮絶な人生が紹介されます。
そのテーマとは少し離れますが、前期の講義でマティスの『知られざる生涯』を紹介いただきました。そこでマティスの第二次大戦中の大苦闘を知りました。レジスタンス闘士の妻と娘、有能なロシア人パートナー、リディア。闘病中のこの三角関係(?)もまた壮絶です。占領期のフランスを描いたJ.P.メルヴィルの傑作『影の軍隊』を久々に思い出しました。(シモーヌ・シニョレ
⑩   映画『C階段』『The Square
美術評論家の出てくる名画。確かに日本では映画の主人公となり得るような、存在感のある職業ではないかも。我々素人には教養ある解説は絶対に必要ですが。

じつは前々期の講義『夢見るファッション』(これまたユニークな講義内容でした)で西洋服飾史を学んだことにより、映画を見るとき、ストーリーや演技以外の美術や衣装にも注目するようになりました。昔の映画でも新たな魅力に気づくことがあります。今度美術賞とか衣装デザイン賞などを取った作品について解説いただけたら面白いなと思いました。(今回『真珠の耳飾りの少女』について少し触れられていました。)

今シーズンもよろしくお願いします。

Ro.Go.Pa.G

3回の講座についての一口感想と、映画の講座でのメモのようなものですね。終わってから自分で思い出して、メモを取るのは記憶するためのとても良い方法だからお勧めします。ただ聞くだけの受け身と、自分で意見や感想を考えたり、メモを取るのは全然違います。能動的行動が、勉強の鍵!いつまで経ってのできるようにならないとか言ってる人は、能動が足りないのではないか、考えてみて。Sさん、心から感謝します💕

セロリ爆食いの危機と美術

いつも西洋美術に関係することばかり書いています。それが本業だし、一番好きなことでもあるから当然です。でも今日は、滅多に書かない個人的な日常の話をします。

Paolo Uccello

運動不足が激しいし、絶対痩せないと好きなワンピースも着れないと思って、少しは真面目にダイエットしようと決めました。野菜がもともと大好きなので普通の食事の代わりに野菜スティックに置き換えることにしました。スーパーでちょうど良いことにセロリが安くなっていたので即購入。しかも一本じゃなく一房。

Juan Sanchez Catan

でお昼にガリガリバリバリ、塩とオリーブオイルで爆食い!他にも何か食べろと思うけど、ちょっぴりにんじんを食べたくらいで、セロリ愛が打ち勝ちました。昔、付き合っていた人に、食べ物は何が好きかと聞かれて「セロリ!」と答えたら、変な顔をされたのが忘れられません。彼は夕食に行く場所(和食、フレンチ、ピッツァなど)が決められる返事が欲しかったのだけど、嘘はついてないからしょうがないよ。セロリが好きなんだもん💖

mosaici della Villa Numisi,Roma, Vaticano

セロリは非常に古くから地中海では親しまれてきた野菜で、古代ローマ人も大好きでした。好きすぎて、素晴らしいモザイクにしてしまうくらい。古代ローマのお屋敷の床モザイクは、当時の生活を忍ばせてくれるものが沢山あって、美術好きだけでなく歴史好きやお料理好きにもすごく面白いよ。私は古代ローマ人の如く、バジリコやルーコラなど香りのする野菜が特に好きです。なわけで、美味い旨いと食べまくってしまいました。

作者不詳 1860c

そしたら数時間後、なんか胃が痛い・・。それからは地獄とまではいかなかったけど、その手前くらいまで行きました。完璧に腹ごなしだったのに腹痛はなくて胃痛。その上、なんだかめちゃくちゃ寒い。熱もないのにただ寒い!セロリって体を冷やす野菜ナンバーワンです。胃ってストレスで痛くなるのが有名だけど、私なんか生きてること自体ストレスでストレス慣れしてるから、間違いなくセロリの爆食いのせいだと思い、検索したら色々出ました。丸一日、ほぼ飲まず食わずで二日目は軽ーく入れ始め、三日目で普通の食事を少なめに。今四日目。おかげで数キロ減量に成功😁

Tiepolo

ワンピースは着たいけど、こんな格好するわけもないからいい加減なダイエットでいいやってことにします(とほほ)お菓子や揚げ物の爆食いが体に悪いのは誰でも知ってると思うけど、みなさんもセロリの爆食いには気をつけましょう!

最後のお願い!美術館の講座はあっという間に一杯になったけど、オンラインはまだまだ空いてるので是非お願いします。正直、絶対こっちの方が面白い!と私は思う。もちろん美術館も全力でやるけど💕

【美術】フェルメールと贋作事件

雨ばっかりで鬱陶しい日々!授業の調べ物と資料作りが忙しいってこともあって、何日家から出ていないかわからないくらいになっちゃった私です。

絵画芸術

夏期都立大オープンユニバーシティの講座募集が始まっています。前回、開講できない講座があり考えた末、今回は短期の初心者用、対面講座を一つ作ってみました。そしたら早くも一杯です。ところが本来、私がやりたい「日常的な学習」というか「考えたり知識を増やすことを習慣付ける」と言うか、そのために、基本的に毎週行っている西洋美術系の講座はまだまだ定員に足りません。こちらはオンラインでいつでも見られるので都合がつかず損することもないし、より深く掘り下げて考えられるし、知らないことがたくさんあると思うのですが・・。そんなわけで是非、オンライン講座に参加お願いします!

内容は上にあるように、フェルメールとその贋作事件を中心としました。上の説明ではフェルメールしか取り上げないような印象を受けますが、フェルメールを中心としてその周辺のオランダの画家たちや当時の絵画事情から、サルバドール・ダリ他、有名画家の贋作など贋作事件に関わる問題を色々と話したいと思っています。

メーヘレン

私は子供の頃から展覧会へ行って、「これが同じ人の作品なんだろうか?」と思うことが度々ありました。学生時代から贋作や鑑定に関する本を読み続けてきました。この半年ほどは、フェルメール関係の本を読み直して、現在もこの問題は非常に興味深く、問題が深いと思っています。すごくスキャンダラスな内容になるかもしれませんが、是非参加をお願いします。フェルメール・ファンの人は絶対待ってます。もちろんそうでない人、西洋美術を自分の目で見られる人には最高に楽しい授業になると思います💖

【美術】映画と美術の授業は進行中

おっ久しぶり〜!いまだにコロナによって変化した生活(仕事他)に慣れてないんだな〜っと、思う今日この頃です。すっかり怠惰になったというか、引退気分というか、稼がなきゃと頑張るというより好きに生きよう(元々めちゃくちゃそういう性格なんだけど)という感覚が強まったのか、更新してませんでした。

サルザーナの老舗お菓子屋さんで

 

特に最近は、進行中の映画と美術の授業のため、いつもよりさらに益々、映像、画像を見ている時間が長く、体に悪いっていうのもあるかな。こんな記事を書くにも、結構目、手、頭、時間なんか使うんです。

リベリオン

ところで映画と美術の授業は、自分でも本当に楽しくて自分の映画好きを改めて確認しました。参加してくれてる人たちも、できる限り映画を見ようとしたり、興味深く見てくれてるのが伝わります。講座の後には質問&感想タイムがあるんだけど、少なからずみんなの性格が現れて面白い。笑っちゃうこともしばしばあるし、こちらもすごく参考になります。ある男性がアクション映画が好きだと言ったので、最初は考えていなかった「リベリオン」を取り上げました。めっちゃかっこいいアクション映画だけど、アクションについて講義するわけもなくて、これをきっかけに「モナリザ」について話しました。

ゴヤの名画と優しい泥棒

今までは西洋美術と歴史背景(作家の人生も含め)を中心にした授業だったけど、さらに映画が入ったことで、アクションとかSFとかアニメとか、今までは取り上げなかった要素が加わりました。まだまだ続くよ〜。すごく楽しみです!

講座一覧 東京都立大学オープンユニバーシティー

そんなこと言ってるうちに夏講座の募集が始まりました。前回は、私史上初の未開講となったので、もー本当に折れそうになったので、考えを改めて今回は4回の初心者講座もいれて見ました。初心者と言っても、美術のことならちょっとは知ってると思う人にも十分知らないことだらけの講座にはなると思うけどさ。4回講座だから気軽だし安いよー!どんどん参加してねー!!と書いた側から、一般募集はまだのようです。都立ーOU事務局もっと頑張れ〜!と言いたくなりますが、ネットもすぐ更新されると思うのでよろしくね💕

 

【意見・感想】西洋美術愛好会

(前回に引き続き、講座に参加してくれているSさんからいただいた感想を掲載します。カッコ内は私のコメントですが、あとはいただいたままです。)

先生のブログで、昔バンドをやっていたというくだりがあって、なるほどこの講義の人を楽しませるライブ感の所以はそこかと納得しました。毎回の新曲発表、本当に大変だとお察しします。感謝しかありません。今回のセットリストから、特に印象に残ったものについての感想です。(バンドはやってたけど、おしゃべりはしてなかった。ヴォーカルじゃなかったし、大抵は実験的なバンドだったから。感謝は私の方です。ほんとにいいつも支えてくれてありがとう!)

Matisse

マティス: 色彩のきれいな分かりやすい画だと思っていたので、特に人となりについて考えて見たことはありませんでした。目からうろことはこの事です。キュビズム構成主義と関連があるとは。マティスを通してならこれらのイズムも楽しく学べそうです。猪熊弦一郎の顔の画と似ているなとも思いました。また意外に複雑、ある意味一筋縄ではいかない性格も興味深いです。

デュフィ: 昔リヨンに旅行した時泊まったホテルでデュフィデザインのネクタイを買った思い出があります。なぜここに?と思った記憶がありますが今回の講義で謎が解けました。

エゴン・シーレ: 嫌いな画家でしたが講義を受けた後にはファンになり早速図書館で彼のドローイング水彩画作品集を見て線描に感嘆、シーレ展にも行きました。そこではウィーン分離派の多彩な作品にも出会うことができました歴代皇帝肖像で有名なオーストリア切手が、分離派の重鎮コロマン・モーザーのデザインとは驚きでした。以前の講義で啓蒙君主について学んだことを思い出します。

スタンレー・スペンサー:初めて知るが非常に興味深い英国画家。

Spencer

①  ロンドン郊外風景画。英国の田舎は本当に美しい。古めかしくて落ち着いたたたずまい。日本とはまた違った四季感。

②  宗教画。ちょっと変わったこんな挿絵で聖書を読みたいと思わせます。旧約外典教えていただきありがとうございます。

③  戦争画。現場の庶民目線で描いた戦争画。BBC制作のドラマ『刑事フォイル』(原題はFoyle’s War)シリーズを思い出します。ヘイスティングス以前講義であったバイユーのタペストリの舞台)の田舎町でのWWⅡ時の様子が描かれますが、棺桶工場のエピソードがあってスペンサーの画を彷彿とさせます。ところで西洋人は最後の審判で、自分が棺桶からゾンビのように現れるとイメージしているのですね。だから土葬なのか。

断片的で申し訳ありませんが以上、今思いつく感想です。

最後に、先生の自己紹介の回ではハマった音楽としてスカ、レゲエを挙げていらっしゃいましたので、少しイギリスへの思い入れを感じました。(中南米では珍しい英語圏)好きなSSWはどなたなのでしょうか。

Madness

(Sさんは長くイギリスに駐在していらしたので、少し違った見方をする方です。心が広いというか、美術も本当に好きなのがよく伝わります。が、今回は音楽の質問をされちゃいました。大体SSW(シンガーソングライター)と書くあたりで、音楽好きが分かります。スカとレゲエと書かれていたのでマッドネスを載せたけど、私が一番好きだったのはスカでもレゲエでもない気がする。スカはパンクの流れで聞いていたんだと思う。そう、パンク・バンドはほとんどなんでも知ってました。コンサートも散々行ったしね。ドノバンとかピンと来なかったけど、むか〜しのフォークソングからメタルまでなんでも聴きました。レゲエと言ったら当然ボブ・マーレイを思い出します。

ブラジルのメタル

幼い頃からクラシックをやっていたのでバッハは大好きです。

鍵盤より弦楽器が好きで、ギターはエレキだろうがリュート(違うけど仲間?サイトはお友達のリュート奏者桜田さんです。ぜひ見てね♪)だろうが一番好き。苦手なのは、ひたすら打ち込みだけで作った単純な曲(リズムはめっちゃ硬い)を大勢のアイドルと称した人たちが歌うより踊るのとか、演歌かな〜。ひねくれててごめん🎶

【意見・感想】西洋美術愛好会

(今月終わった講座の感想を何人かの方にいただきましたので掲載します。以下、いただいたそのまま。括弧内は、私のコメントです。)

今回の講座でも興味深い授業をありがとうございます!

アーカイブですべての回を視聴しています。

Kokoschka

ウィーン分離派の授業の中で、アドルフ・ロースの「装飾は犯罪である」という言葉があり、とても印象に残りました。過剰な、秩序のない装飾を指すのか、装飾全般を犯罪だと言っているのか、発言の背景など、もう少し詳しく知りたいと思っています。文化水準との関連についての指摘も考えさせられました。

(分離派全体としては、過剰な装飾に対する警戒だったものが、ロースに至るとあらゆる装飾は非文明的なもの、未文化人ほど装飾を好む、となる傾向があります)

A.Loos

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今回も私にとっては知らない芸術家ばかりで、毎回新しいことを知るワクワクがありました。

エゴン・シーレは知ってはいたものの、絵の感じというか、あまり好みでなく、今まできちんと作品を見たことがありませんでした。授業で作品を見て興味が湧き、食わず嫌いを反省して、先日エゴン・シーレ展に行ってきました。油彩でも水彩でも、チョークでも自在で、才能にあふれていたことがよくわかりました。

展示の後半にココシュカの作品があり、迫ってくるような強烈さでした。不意にパンチをくらったような衝撃が忘れられません。

(この感想は、他の方からもいただきました。今では圧倒的にシーレの方が有名ですが、当時はココシュカの方がむしろ有名なくらいで、シーレはなくてもココシュカは取り入れられている日本の美術全集もあります。彼は非常に作風が変わるのですが、迫力のある作家です。絵だけでなく文章や演劇など、多彩な人でした。)

Kokoschka

コロナ禍でしばらく美術館から足が遠ざかっていましたが、やはり実際に作品を見ないとわからないことがあると実感しました。

今後もぜひ、先生おすすめの展覧会等、授業の中で触れていただけたら嬉しいです。

 

最終回の授業、また、次の講座「映画になった西洋美術」も楽しみにしています!

ピグマリオン

(本当にいつもSさんには感謝しています。今回、オープンユニバーシティの講座が人数が足りず開講できませんでした。こんなことは20年以上続けて来て初めてです。オンライン授業は早々に決定したものの、対面授業はコロナ以後、本当に難しくなったようです。もっと大きな歴史の流れで、経済と文化の問題もありますが。対面を待つというメッセージもいただくので、諦めずにまた挑戦したいと思います。どうか応援よろしくお願いします!!)

【講座】ミステリアスなアート

早々とオンライン春講座「映画になった西洋美術」が開講決定しました。ところが残念なことにまだ水曜日の対面授業が決定していませんので宣伝させてください。

Magritte

対面授業はコロナ前までは盛況でしたが、コロナになって長い間中止になりました。しかしオンラインではなく対面でやって欲しいと何人もの方に言っていただいたので、対面講座も再開しましたが、長い休止状態で社会のさまざまなことが変わりました。外出は危険だという心情、家で過ごす時間が多くなるに連れて何かするのが面倒になってしまった人も多いと思うし、悪化する経済状況や、もっと長い目で見ると教養に対する価値観の低下は恐ろしいほどです。多くの文化活動が低迷する中、なんとか続けてゆきたいです。そのためにもお力添えをよろしくお願いします💕

対面講座は、基本的にオンライン授業で先行して行ったテーマを取り上げます。しかし私の授業は参加型なので、来てくださる方により内容はかなり変わります。

Giorgio De Chirico

オンラインと対面はやはり色々と違います。対面の良さは、授業前後で、必ずしも授業と直接関わりの無い話ができることや、一緒に出掛けるような副次的な楽しみがある事でしょうか。その代わりオンラインのように何度も見て復習することができないので、今まではやって来なかったのですが、資料を渡そうかと考えています。正直言って、私は緩くはあっても環境保護論者(エコロジスト)なので、やたらにコピーを取ることに反対です。このコンピューター時代に無駄な大量の紙資料、しかもろくに読みもしないのに、って考えてしまうのです。もう一つは、私の大学院や留学時代の尊敬する先生たちは「ノートすら取るな」という人達でした。それより先生の話に頭脳を集中させ理解することに努めよ、というのです。私はかなりそれに賛成なので、紙資料を極力出さないで来ました。でも欲しいという人が結構居るので、対面の弱点を補おうかと思います。

Fernand Knopf

今回の「ミステリアスなアート」では、本当に謎に満ちた作品が勢揃いします。可愛い少女や美しい花などを完璧な技法で描く、落ち着いたアカデミックな作品が好きな人には、もしかしたら不愉快かもしれません。しかし自由な発想や、謎めいた異世界、夢の不条理などに関心がある人には、これ以上ない最高の楽しみとなるでしょう。マグリットやキリコのようにかなり知られた美術家もいますが、中には初めて知る美術家も少なくないと思います。

Dadd

ミステリアスな作品はどんな人が描くのか。いつも以上に個人的な性格と作品の関わりが深く、中にはダッドのように非常に才能があり成功していながら、狂気に陥り父親を滅多刺しにして逃亡し、最後は精神病院で誰にも描けない、彼の世界を描出した人もいます。オンラインでは十一人を取り上げたのですが、対面授業は10回となっているので、一人削るか、一回だけ短く二人分紹介するかは参加者の好みで判断してもらおうと考えています。

Delvaux

中世後期のブリューゲルやピエロ・ディ・コジモから建築家として名高いガウディまで本当に際立った才能のある、魅力的な美術家たちの作品を堪能して欲しいです。

ミステリアスなアート 2311J004 東京都立大学オープンユニバーシティー

飯田橋で会いましょう💕

【展覧会】佐伯祐三:自画像としての風景

重要文化財明治生命館が長い修復を終えて見学できるというので、以前から行きたかったのが、Mさんのおかげで昨日やっと実現。行動力抜群のMさんはステーションギャラリーの半額チケットも持っていたので「佐伯祐三展」も行きました。

郵便配達

水曜日の午後の明治生命館が結構混んでいて少し驚きでしたが、ステーションギャラリーは大盛況って感じでしてた。年配の人ばかりの展覧会を寂しく感じる私ですが、それなりに若い人もいて、熱心にメモを取ってる女性もいました。美大生かな〜。自分の美大時代を思い出します。ただ、美大時代の私は、日本の20世紀初頭の油絵より欧米の現代美術に断然惹かれていたけれど。

Oldenburg

ほんと、美大時代でなく今でもそういうところはあるかな。というのは下落合のせいぜい数軒の家を描いた油絵より、いろんな手法で製作された楽しい作品の方が好みかもしれない。(ラウシェンバーグ、オルデンバーグ、ジャスパー・ジョーンズとか色々)佐伯祐三は、日本では必ず美術の教科書に載るような有名な画家です。世界で最も美術史上名高い日本人西洋美術画家は藤田嗣治だと思うけど、日本での知名度はそれに次ぐような人ではないでしょうか。もちろん現代美術では、奈良美智とか村上龍とか草間とか、何人も世界的に活躍する人がいるけど、現代美術は別の枠組みで考えたくなるので。

下落合

佐伯祐三の時代は、パリに憧れて油絵を描く時代です。印象派も早くから日本に紹介されました。佐伯がゴッホを知って大変感銘を受けたのが手に取るようにわかります。下の作品は、ほとんどゴッホと同じ角度で描いた同じ聖堂です。私はこの絵を見ると同時に、悲劇を連想してしまいます。だって佐伯もゴッホも悲劇の人だから。

ゴッホに共感した佐伯

激しいタッチや、強烈な色彩を置く所などは野獣派の人々の影響を至る所で感じさせます。全体に暗い色調なので、時々置かれるバーミリオンのオレンジがかった赤や、生々しいチタニウムやパーマネントの白が強烈なハイライトになるところも、野獣派を研究した結果でしょうか。元々そういう色彩感覚があったと思われるけれど・・。

レストランで

佐伯祐三というと、アルファベットを書き殴ったようなパリの街が代表作だと思いますが、今回の展覧会には実に大量の佐伯作品が並んでいて、全然知らないタイプの作品もありました。最も「やられた!」のは「人参」でした。暗い背景に真っ赤な物体が横たわっていて、上には「蟹」の絵がかかっているので「烏賊」だと思い込んでしまいました。カニイカが1匹づつ描かれている絵、というだけで西洋には無い日本らしい感じですが、題名を見るとイカじゃなくてニンジンでした!謎の暗澹たる空間に横たわる真っ赤な人参一本・・・。うーむ。ムツカチーッ!

今回の展覧会の主役の一つとして初期に描かれた多数の自画像があり、中でも下の作品が大々的に取り上げられているのですが、この作品の裏には上下逆に「ノートルダム寺院」が描かれています。素敵な額縁はノートルダム寺院の方が表面だと言っていますし、この自画像は顔の部分が剥がれて壊れかけてもいるし、佐伯は自画像じゃなく裏のノートルダムを見て欲しかったのでは無いかと思いました。

自画像

ま、建物より人間の方に親しみが湧くのも健全でしょうし、有名人に弱い日本人にはこっちの面の方がウケるとは思われます。ノートルダムはめちゃくちゃ暗い色調で、目の悪い人には何が何だかわからない感じだし、このパレットを持つ自画像には、どこか人を惹きつけるものがあるのは確かです。特に素朴派好きの私にはそう思われますが。

今週末で私の都立大オープンユニバーシティの冬講座が終わります。春講座の募集が始まっているので、ぜひ応募してください。残念ながら応募期間が短いのでお気をつけて。佐伯の作品と違い、ミステリアスではあってもずっと面白い作品ばかりだから、ぜひ来てください!飯田橋で待ってます🎨

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ