天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本・映画】芸術家の人生:ラファエッロ

Ciao Tutti! お休み楽しんでますか?私はいつもと変わらず本とコンピューターに浸かっています。

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La Fornarina, 1944

いよいよ来週がミケランジェロの授業の最後となりました。以前はシスティーナの天井画と祭壇壁画【最後の審判】を2回に分けてやろうかと考えた事もあったんだけど、この1年以上盛期ルネサンスシスティーナ礼拝堂にかかりっきりで私も疲れたので、次の秋講座でシスティーナとはオサラバしようと思います。

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Raffaello, 2017

ミケランジェロは物凄く本格的に見てきたので【最後の審判】は、また別の機会があればって事でよろしくお願いします。いつもの私の望み通り、やたら有名な同じものばかりやるんじゃなくて、知られざる素晴らしい作品や作家を紹介したいので、ウルトラ有名な【審判】に関しては、どうぞ本を読んでください。

www.ou.tmu.ac.jp

ということで来週がミケランジェロの最後で、休みなくラッファエッロが続きます。オンライン授業の開講は普段の対面授業より人気が無いみたいで、なかなか大学も苦しい戦いをしている中、秋講座の開講もとっくに決まり、私の授業に参加してくださる皆様に本当に感謝しています。Grazie mille!(ありがとうを一瞬で千回言います)

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Raffaello, 2021

再来週から始まる「ラッファエッロ」もシスティーナ礼拝堂の作品を追うので、美術史に燦然と輝く傑作【アテネの学童】も触れるけど、中心は「使徒言行録」のタピスリーです。ミケランジェロが異様に複雑で難解極まる表現だったのと裏腹に、素直な内容なのでご心配なく。

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Raffaello, 2017

そこでラッファエッロについて資料を紹介しようと思ったら、まともな研究所(美術史や歴史など)の本はミケランジェロやレオナルドとは比較にならないほど少なく、その代わり映画や漫画がありました。それもほぼ恋愛ものです💕

私はイタリアに住んでいた時「イタリア人ならラッファエッロが好きだ(レオナルドやミケランジェロやカラヴァッジョなんかより)」という事を言われたことがあります。日本の美術に関心のある人の間では、間違いなく評価が低いので印象的な発言でした。個人的には、ミケランジェロは突出した大芸術家だと思いますが、レオナルドをそう思ったことがないし、ラッファエッロがいいと思えるようになったのは結構大人になってからでした。私は外見とは真逆に尖った人間ですが、これでも人間が丸くなったのでラッファエッロの良さが分かるようになったのかもしれません。

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ラファエロ その愛

やっと今回の内容に入ります。里中満智子の漫画はズバリ少女漫画ちっくに「ラファエロその愛」です。研究書を探しに都立の図書館へ予約してまで行ったのに大した本がないし借りられないから、ひっさしぶりに少女漫画を読んじゃいました。2、30分で読めるので良いかもしれません。一緒に行ったMさんは「ラッファエッロがモンのすごく良い人」に描かれていたと感じたそうですが、私は「優柔不断極まりない人」に描かれていたと感じました。本当はどうだったのかもっと正確な資料を読まないとだめですね。

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La Fornarina, 1944

ごく一般的な入手しやすい本としては「ラファエッロの秘密」があります。これはカラヴァッジョなどの「秘密」シリーズで、イタリアのテレビで美術番組を作っていた人が書いただけあり確かに読みやすいものです。でも正直、私はこのシリーズ(著者)が好きではないので、何も知らない人で読書経験のあまりない人にはお勧めしますが、本の読める人はもっと別なものを読んだ方がいいかもしれません。

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ラファエッロの秘密

レオナルド、ミケランジェロ、ラッファエッロの三代芸術家を主人公にした入門書は何冊か出ています。どれも絵が多く、3人で一冊だしとっつきやすいと思います。西洋美術の通史も漫画があります。今では何でもかんでも漫画じゃないとダメなのかと思うと、日本の将来は暗いですね。漫画には漫画ならではの良さがあると思いますが、歴史や思想などはやはりもっと文字数の多い本で、さまざまな角度から深く考えながら読みたいものです。

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ルネサンスの三代芸術家

このマンガ西洋美術史シリーズは一冊ではなくルネサンスは2になります。ボッティチェッリダ・ヴィンチ(イタリアならレオナルドと書くところですが)、ミケランジェロラファエロティツィアーノ(ここまでがイタリア人で)エル・グレコルーベンスとなっています。私のイメージと絵が違い過ぎで、誰が誰だか???

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マンガ西洋美術史

小説もあります。ちょっと古いですがいわゆるミステリー(犯罪もの)でそれなりによく出来ています。意外にきちんと調べてあって、ず〜っと昔読みました。

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ラファエロ 贋作事件

先にゴッホの映画を紹介したのでラファエッロを探したら日本語のは見つけられませんでした。引き換えイタリア語は沢山あって、先述のリヴィオの言葉を思い出します。1944年製作の映画は少女漫画の上をいくロマンスで題名もラッファエッロではなく、その悲劇の恋人と言われている「ラ・フォルナリーナ:パン屋の娘」です。史実では全然恋人かどうか分からないし、どれが彼女なのか、描かれているのかさえはっきりしないのにね。

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La Fornarina

レトロなポスターがカッコいいので色々載せてみました。ウィキから拝借しています。(ちなみに私はめっちゃくちゃ少額ですがウィキ・サポーターです。これを読んでくださっている方は知識を大切に考えてくださる方々だと思うので、寄付してみてはどうでしょうか)今年製作された映画はネット配信されています。3番目の図「繊細な天才ラッファエッロ」です。

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Luca Viotto

最後に超イケメンの写真で締めます。ルーカ・ヴィオットは2017年のヴァチカンも協力して製作されたテレビ映画で「芸術の王子(君主)ラッファエッロ」で主役を演じました。ミケランジェロには望めない喜びです。

 

【映画】美術家たちの伝記:ゴッホ・展覧会も

 

ゴッホの展覧会に合わせて、観たかった映画を見たので感想です。

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At Eternity's Gate

先日見た映画は2018年製作の「永遠の門 ゴッホの見た未来」です。いつものことですが原題は単に「永遠の門にて」です。言うまでもないことですが<永遠>とは<神>に他なりません。日本で公開される前から観たかった映画です。

決して分かりにくい映画ではないのですが、ごく普通の伝記映画ではありません。ゴッホの心情と彼の視点に焦点を当てて制作していると思いました。そのため、映像は普通の視点ではなかったり、それこそピント(焦点)が合わなかったりと、かなり意図的なものとなっています。監督のジュリアン・シュナーベルは1996年の『バスキア』で一躍有名になりました。「バスキア」は発表後すぐ観たし、なんといっても本人が死んでからすぐ(1988年に亡くなった)だったので非常に印象的でした。あの映画もとてもスタイリッシュな映像でしたが、それがバスキアの作品と何となく合っているようないないような感じを受けたものです。そう言う意味では今回も同じですが、彼の映像には一貫した様式美を感じます。

かつては大変身近だった上野は、コロナ禍の私には永遠に感じられるほど遠いので展覧会に行けるかどうか疑問ですが、都美術館でゴッホ展をやっています。いわゆる有名な作品もありますが、彼のごく初期の作品や心情を反映した素描など、素晴らしい内容でぜひ行ってみたいのです。

ゴッホは、現在ではそれこそ最も知られた美術家の一人に違いありません。が生前は全く評価されず、悲惨な生涯を遂げました。作品の魅力に加えて文字通り劇的な人生のためか、彼についての作品は大変沢山あります。本や画集は無数に出ていると言いたくなるほどだし、映画も何本もあります。

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Lust for Life

映画としては1956年のヴィンセント・ミネリ監督、カーク・ダグラス主演の作品が、古いですが有名です。「天国の門にて」と違い、いわゆる伝記映画として、人生の初期から死までを、ハリウッド・ドラマらしく表現しています。

ゴッホに関する映画を集めたブログを見つけました。全ての作品は見ていませんが、好きな作品もあります。

 

フリーダ・カーロの映画紹介の時にも書きましたが、私は映画も好きだし、作品や作者を理解する助けにもある程度なると思っているから紹介しているのですが、何より美術好きだからか、やはり本人の作品を見てほしい、それに勝るものはない、と感じてしまいます。

【美術】ミケランジェロの次はラッファエッロ💖

このところずっとシスティーナ礼拝堂を詳細に観ています。昨日も大勢が大変熱心に講座へ参加してくださり、心から感謝します。ここで紹介している本もずいぶん読まれていて、入門とはかけ離れた本にも飽き足らない様子の方に、授業でやっと納得したと言っていただけました。もっと詳述しているものはないかと探されている人も何人かいるのですが、紹介した日本語の物以外をお求めなら、論文か英語かイタリア語文献しかないでしょう。しかし論文は部分的な、実に専門的な研究なので、私としてはそこまでするよりもっと多くの芸術家や、世界史、美学としての哲学など幅を広げた方がいいのではないかと思います。

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Raffaello Sanzio, Borghese

参加者は全員、歴史、美術、文学、作品の背景や画家の個人的な人生など、皆それぞれの興味を持ち、それを深めているのが伝わり、本当に嬉しいです。

今取り組んでいる「ミケランジェロの天井画」は、空前絶後の複雑な内容を持っているので、一回の授業が実に盛り沢山できっと頭が疲れることと思います。私の授業はいつも盛り沢山ですが、今回は、様々なことを同時に考えるので特別大変です。でもみんなで違った訳の聖書を読んだり、一人ではできないこともできて楽しいです。昨日は、神様に楯突くヨナをみんなで読みました。

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Raffaello, 自画像

10月からの三ヶ月、秋講座ではラッファエッロを取り上げます。ミケランジェロとは性格も画風も、人生も全く違った天才です。悩み、怒り、猛烈で、孤高であると同時に、本当はとても暖かい人だったミケランジェロとは違い、明るく、社交的で、みんなに愛され、誰とでも上手くやれた美男子ラッファエッロは、実は非常に冷静で、大変若くして成功の頂点を極めました。

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ラッファエッロの間

この一年システィーナ礼拝堂に取り組んでいるので、メディチ家の史上最年少教皇レオ十世によって発注されたタピストリー(織物)を中心に見てゆきますが、ミケランジェロの授業とは違い、ずっと肩の凝らない授業となるでしょう。複雑怪奇な作品ではない上、画風も晴れ晴れとしたラッファエッロらしい美しいものです。もちろんミケランジェロも美しいですが、彼の作品とは戦わなければならないのに引き換え、ラッファエッロの作品はゆったり堪能できるのです。

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システィーナ礼拝堂にかけるための織物

作品解説がそれほど難しくないので、彼の人生の話に時間が割けます。ローマでの話を中心に、取り巻きたち、女性関係、発注者たちも華やかな人ばかりです。ラッファエッロは女好きがたたって死んだと言われてきましたが、本当でしょうか?信じ難い量の仕事をこなしながら、いくら大勢を使うのが上手かった彼とはいえ、そんなに遊びまわっていられたのでしょうか?

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Villa Farnese, Roma

屈強な男性の裸体で溢れるミケランジェロの授業とは正反対に、柔らかな女性たちが大勢出てきます。ミケランジェロとの対比も見ものです。

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パン屋の娘?

コロナで本気で自粛している私は、全く美術館へ行けていません。そういう方も多いと思います。今年の最後はラッファエッロの美しい作品で、癒されて終わりたいと思います。来年はルネサンスと離れて全く違った内容で始める予定ですので、盛期ルネサンスに興味のある方、ぜひこの機会によろしくお願いします。

 

秋講座の申し込みが始まっています。上記、大学のサイトからお願いします😃

【本】ミケランジェロについての様々な本:漫画から学術書まで

夏休みだからかリモートにも関わらず、授業間隔があいているので、ミケランジェロについての色々な本を紹介します。何回も書いているのですが、ミケランジェロは流石、西洋美術最高最大の芸術家と多くの人が考えているだけあって、なかなか出版物も多いです。

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ミケランジェロ・ブナローティの生涯

ミケランジェロ・ブオナローティの生涯』

デイビット・ハムソール 著 2020年

この本は愛読書の一つです。『芸術家列伝』の著者であり美術史の父と謳われるジョルジョ・ヴァザーリミケランジェロを崇拝し、手紙のやりとりをする間柄で、彼はミケランジェロについて何冊か書いているのですが、これはその決定版に当たるのではないでしょうか。冒頭は著者ハムソールの解説ですが、中心はマニエリスム期に出版されたヴァザーリの著書の翻訳です。入門書とは言えませんが、ある程度知識があれば、非常に臨場感があり、堪能できます。

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ミケランジェロ

ミケランジェロ

木村長宏 著 2013年

中公新書は知識をつけるための非常に有効なシリーズです。様々な分野の、入門からかなり専門的な内容のものが出され、値段も大きさも手頃で、日常的に色々読んでいます。これは題名もズバリ「ミケランジェロ」。ところが内容は一般的なミケランジェロの解説ではなく、美術史の定番となっている解釈や解説とは違った内容なので、初めて読むのに適当とは思いません。いわゆる美術史より思想史寄りで、情動や感覚に重点を置いた独自の解釈をしている点が、拍手を送る人も、反対の人もいるでしょう。何冊か読んで深めたい人にお勧めします。

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システィーナのミケランジェロ

『システィーナのミケランジェロ

青木昭 著 1995年

完全な入門書です。写真中心、非常に平易な文章と、美術や歴史の知識がなくても十分読めるので、少し古い本ですがお勧めします。図書館やネットで探してください。著者は、1981年に始まったシスティーナ礼拝堂修復の大プロジェクトの中心にいました。自身を含めた日本テレビの制作スタッフ、修復家たち、その他のプロジェクトに実際に関わった人々などの個人的な挿話にかなりの頁が割かれるので、テレビの番組制作(今は全然違っているけれど)などに興味のある人など、幅広い読者を獲得できると思います。当時の修復技術の問題などは他では読めないものですが、反対に、システィーナに関わる聖書の基礎知識なども一応記されているとはいえ、学術的な印象はないのでもっと美術史やルネサンスの歴史が知りたかったのだと言う人には物足りない印象です。

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神のごときミケランジェロ

『神のごときミケランジェロ

池上英洋 著 2013年

西洋美術、イタリア美術などに関する著書が多数ある池上先生の本が、これまた読みやすい「トンボの本」シリーズで出ています。このシリーズは写真で構成された入門書として大変親しみやすい(簡単に入手できる、簡単に表面的な知識がつく)シリーズで、私も子供の頃から何冊読んだかわかりません。今でも数冊は持っています。

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神のごときミケランジェロさん

『神のごときミケランジェロさん』

みのる著 2015年

少年チャンピオンの漫画です。残念なことに私は読んでいません。大人になっても漫画しか読めない人を、私は問題だと真剣に考えていますが、これは漫画を絶対否定するものではありません。子供の頃は私も漫画漬けでした。読んでみたいです。

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システィーナ礼拝堂を読む

システィーナ礼拝堂を読む』

松浦弘明、越川倫明、深田麻理亜、甲斐教行 著 2013年

この本はその外観からは想像できないほど非常に本格的な内容なので、誰にでもお勧めはできません。西洋美術、ルネサンス史、聖書の知識がある程度身についていないと難儀すると思います。ただもう色々読んだからもっと知りたいのだっ!という人には素晴らしい内容ですので挑戦してはいかがでしょうか。私もこの本からは多くを学びました。思い入れのある一冊です。

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世界の巨匠シリーズ

最後に紹介したいのは大型本です。

美術出版 1966年

『世界の巨匠シリーズ』にはミケランジェロだけでも四冊の本があります。「ミケランジェロ素描1」「ミケランジェロ素描2」「ミケランジェロ彫刻」「ミケランジェロ」というように分かれていて、「ミケランジェロ」は絵画が中心となっています。写真はいつも使っている「日本の古本屋」のサイトからお借りしました。

www.kosho.or.jp

今ではこのような本格的な大型本はすっかり姿を消してしまいましたが、私は子供の頃からこういった本に埋もれて育ったので、大変愛着があります。日本の住宅事情を無視したボックス入りの重く、大きな何十冊もあるシリーズですが、大きい上、当時最高の印刷技術で刷られているので、美術作品を見るには最適だと思います。非現実的なほど鮮明なネット画像に慣れている現在の若者にとっては、残念な印象かもしれませんが、勉強する価値は十分にあります。何より、ミケランジェロだけについて四冊も、それも大画面で素描を堪能できるような物は他にありません。文章は現在の淡々とした論文調の学術書とは大いに違った、ロマン・ロランの評論を彷彿とさせる感動的なもので文学的で、色々と考えさせられる内容です。ミケランジェロについて日本語で読める、最もまとまったものだと思います。お手軽さの正反対ですが、ミケランジェロや西洋美術を愛する人には感動もののシリーズです。図書館や古書で探してください。

【ドラマ】驚愕の「弔い写真」

海外ドラマファンです。海外といってもほぼ欧米ものです。たまに南米とかアフリカ映画とか観ます。理由は、単純に画像と物語構成や主義主張が合うからですが、英語やイタリア語(多少はフランス語やスペイン語)だと、言葉の勉強になると言い訳ができます。北欧ものになるとこの言い訳は通じないのだけれど・・。

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英国ドラマ Dead Still

最近見たドラマで、知って驚いたことがあります。日本語の題名は【弔い写真家の事件アルバム】というものです。邦題は常に原題より説明的になっています。

www.mystery.co.jp

話の内容は不愉快極まるもので、流石、幽霊や心霊物が大好きで、しかも皮肉の効いたイギリスらしいものでした。素直で健全なものが好きな人はみてはいけません。ホラーに慣れている私も気持ち悪くなった程です。映像が気持ち悪いわけではなく、死んだ人の写真を愛するという行為が気持ち悪過ぎ。拷問も大嫌いなので、そういう写真の蒐集家の大権力者たちのお話だから二度と観たくない。ってネタバレだけど・・。ドラマを擁護すると、英国ミステリーといってもビクトリア朝時代のアイルランドが舞台で、映像は普通に綺麗です。エドガー賞も受賞した高評価の作品ですし、何より知識が増しました。

まさにこの内容の記事を書いている人がいました。日本語です。

karapaia.com

ドラマを見ていて、こんなこと本当にあるんだろうか?とか、どこまでが創造で、どこまでが歴史的真実だろうかと考えます。ドラマだけでなく、私はそういうふうに生きているというべきかもしれませんが。それですぐネットで調べます。ネットが無いと生活はどれだけ変わるかわかりません。日本語でも調べますが、できるだけ現地の情報や多角的に調べるようにしているので英語や現地の言語などでも調べます。

Post-mortem photography - Wikipedia

memorial portraiture

en.wikipedia.org

英語のwikiサイトです。

誰かが亡くなると、その人に生きているようにポーズを取らせ、家族の集合写真のようにしたり、飾り付けて撮影するという風習が欧米で流行したそうです。

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Louis Jacques Mandé Daguerre

歴史的にはダゲレオタイプと言う写真の撮影法を発明したルイス・ダゲール(写真)によって始められ、1840年台から弔い写真は広まったようです。しかし元を正せば、ヨーロッパには古くから死者を描く習慣がありました。それにヨーロッパの聖堂を巡っていれば、あちこちで蝋人形のようになった聖遺物(本人そのものもある)に出逢うし、眠っているようなミイラも各地にあります。

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1648年頃のデンマーク王の絵画

キリスト教の歴史は、信仰深く、汚れなく、尊敬に値する偉大な人の聖遺物(持ち物も含むが、本人なら最高に効果がある)が奇跡を起こし、人々や街を助ける話で一杯です。中世の人々は聖人の体の一部(皆が欲しがるので切り刻まれる)に慣れていましたが、バロック時代から近世にかけては権力者が一族の者の記念に上のような絵を注文するようになりました。写真の発達と共に一般の人にもそういった習慣を真似ることができるようになり、絵画はなくなって行きます。

ja.wikipedia.org

世界一美しい遺体として有名なシチリアのロザリアちゃんのように、幼い子供が亡くなると、親が悲しみのあまり、焼いたり、土に埋められたりするのが可哀想で、ベッドで寝ているようにしてあげたいと思う気持ちから、上のような行為が行われるのは理解できます。弔い写真にも子供が多い気がするのは間違いでしょうか。

 

しかし、湿度の高い日本だからか、私は日本に似たような習慣を見つけることができませんでした。思想、宗教観などさまざまな理由があると思いますが、西洋美術を勉強していると、かなりの感覚の隔たりを感じる場合が多々あると思います。この歴史もまたその一例でした。

【時事】2021東京オリンピックとイタリア

オリンピックが終わって少し落ち着いたところで、イタリアとの関連を書きたいと思います。

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流石のイタリアチームのユニフォーム

私はオリンピック開催が決定するずっと前から反対の立場でしたが、始まってしまえばスポーツ観戦好きなので、当然可能な限り応援しました。世界中の人が集まって最高のパフォーマンスを披露したり、平和的に競い合うのは素晴らしいことです。でも実際には経済的に余裕のある国の人しかほぼ参加できないし、経済的な利害が深刻に結びついた人々によって開催される、しかも政治的な側面も少なくないイベントなのが大きな反対理由です。さらにオリンピックが経済的効果を生むというのは、いつものことですが政府の御用学者が弾き出す数字で、現実には極めて酷い赤字です。それには私たちの税金が投入されるのだから、税金の使い道について市民、国民には意見を言う権利があると思います。私だったら、日本中の古くなったインフラ整備や、病気やさまざまな理由で苦しんでいる人々の福祉に使いたいし、具体的には小学校から高校までの給食の無料化に使って欲しい。日本の子供の貧困がどんどん進んでいる現状を無視して、何がレガシーでしょうか。

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佐野研二郎東京五輪シンボル

特に今回の東京オリンピックは、醜い側面がどんどん湧いて出て、どうにもならない政治不信を決定づけました。まずパクリデザイナーと言われた佐野研二郎のオリンピック・ロゴデザイン。ベルギーの会社に訴えられてから、サントリー多摩美などでもどんどんパクリが発覚。新国立競技場のデザインも根底から大変更。最初のザハさんのデザインの方がずっとカッコ良かった。お金がかかりすぎるとか言うの変じゃないですか?最初にもっとしっかり詰めるべきでしょ?

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ザハ・ハディド、デザインのスタジアム

何より最低なのは、ジョコビッチが怒ったのも当然の「スポーツするには過酷すぎる天候」。日本の8月はスポーツに最適とかいう嘘。東京生まれ東京育ちの私は、イタリア人の友人たちに「春か秋に来て!夏は最悪だから」と常に言っていますが、あの蒸し暑さの中で極限状態で走ったら死ぬ人も出るんじゃないかと思った人も少なくなかったのではないでしょうか。事実、救急車で搬送されたり途中棄権する選手続出の反アスリート主義の東京五輪でした。オリンピックが終わった途端、突然涼しくなってなんと言う皮肉!

news.yahoo.co.jp

組織委員会厚顔無恥な腐敗ぶりは、オリンピックに費やした全金額と全損失を決して公開(後悔も)せず、使途不明金は当然闇に葬られようとしています。私は、純粋にスポーツ観戦が大好きです。こんな背景の無い、心から楽しむことができるオリンピックが開催されることは可能でしょうか?

www.japanitalytravel.com

イタリアのオリンピックはっていうと😃

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BBCユーロヴィジョンから

日本は、アメリカと中国に次メダル獲得世界3位でしたが、イタリアは10位でした。この数字をどう見るかは人によって違うと思いますが、イタリアではかなりな評価を獲得したようです。なんと言っても夏の五輪の最大の花とも言える、世界一早い男はイタリア国籍のマルセル・ジェイコブス選手でした。ちょっと勉強すれば分かるように伝統的なイタリア人の名前ではありません。子供の頃移住したとか。彼の金の直前には、これぞイタリア人って感じのジャンマルコ・タンベーリ選手が高跳びで金。他に空手やテコンドー、強歩などなどで金。ヨーロッパでは、イギリス(EUじゃ無いけど)やロシア(ヨーロッパでは無いけど)が4、5位で7位からオランダ、ドイツ、フランス、イタリアと続きます。あんな気候でなければサッカーとか、もっとヨーロッパ勢は活躍できたと思うけどさ。

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古代ギリシャの跳躍

国別メダルの順位って、これも問題じゃない?だってオリンピック憲章6で「国家間の競争ではない」って明記されていて、「選手個人」の競争となっています。源に帰れば古代ギリシャのポリス国家間の戦争を一時的にでも止めるために、始まったらしいし。ヒトラーがオリンピックを最大限に利用したのはあまりにも有名な話だし、政治利用も経済利用もしちゃいけないって書いてあるのに、現状は真逆。

 

明るいニュースの無い世界で、視聴者に一時的でも明るい話題を提供したのは事実で、イタリアでも毎晩オリンピック番組が特集されたようです。コロナ下、無観客、反対多数の中、強行されたことも報道されていて、それに対して「お疲れ様、ありがとう」と言うような空気があるのは理解できます。

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BMX

私は愛するボクシングは別にして、自転車BMXを最高に楽しみました!スケートボードやサーフィンもかっこいいよね💖

 

【本】ミケランジェロのトンデモ本から考える

題名:隠されたヨーロッパの血の歴史
副題:ミケランジェロメディチ家の裏側
著者:福島隆彦

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表紙

う〜ん、普段全く読まない類の本で、数行読んでビックリしちゃった。こんなメチャクチャな・・・で、著者を検索したらトンデモ本の中でも最高のとんでも本大賞を受賞しているような人だった。これも表現の自由の難しさだな〜っと。でもすごく宣伝されているし、ファンがいてこの本も購入者からは支持されているのが分かって、民主主義の難しさを感じる。もっと難しいのは、中々良い事言ってたりして、そうだそうだと共感できる部分もあったりする。右翼的なのに左翼を公言してる。

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ロレンツォ・デ・メディチを讃えまくる!と著者

どっちにしろ思索より行動の人なのは明確で、何冊も書いてます。
社会運動もアカデミックな学会も両方知ってると、熟考と行動について考えさせられる。要するに、歴史や思想などを理解するには、非常に多くの知識が必要、しかもそれは多角的、総合的にとらえる視点が必要。さらにある事実を普遍化することはできず、ある歴史には必ずその時固有の偶然も絡んでくるもので、単純に言い切れば必ず無理が出る。だから論文をたくさん発表しようとすると極限定的な内容に絞って、資料偏重でつまらないものを量産することになる。今の学会がこういう傾向にあるのは、誤った内容をできるだけ避けようとする態度もあるからで、それは当然正しいとは思う。でも昔の学者はもっと思想的で壮大な内容を発表したから、ずっと感動的で面白いものが書けた。今ではそれは勘違いだったりするのが証明されたりもしているけど。

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著者の大師匠、羽仁五郎著「ミケルアンチ”ェロ」

特に経済学や社会運動系の思想などを研究している人は、実社会でそれがどれだけ役に立つかという点と切り離せないけれど、真剣に考えれば考えるほど問題は複雑で行動が取れなくなるのに対して、そんなことをしているから学者は役立たずだという人たちが出てくる。で、そういう人たちはさまざまな行動に出るんだけれど、研究者から見れば、そんな単純で乱暴な方法でいいのかと疑問を持ってしまう。

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感動小説ミケランジェロの決定版はロマン・ロラン

だけど、編集者に言われて、初めてちょこっとフィレンツェに行ったような人に、ルネサンスミケランジェロの真実を観切った!!とか言われちゃうと、真面目に長年研究してる人がいるのにあまりに不真面目だと思う。でも考えてみると日本のテレビってそういう人で満ち満ちてる。その話題なら、専門家がいくらでもいると思うのに、無知な芸能人の内容のないおしゃべりに終始する。スポーツだって欧米なら、普段からそのスポーツに特化したプロの記者が解説したり質問するのに、日本では試合の内容や技には無関心な素人記者が、無理矢理ありがとうって言わせようとする。私はスポーツが好きなので、泣き顔が見たいわけじゃありません。選手に失礼だ。そういう人だって少なくないと思う。

真実はいつも複雑で難しく、見極めることは人間には不可能だ。単純化したものは大勢に、直接的に訴えるし、やはり、その歴史や思想に何かしら意味を見出したいと、私も思ってしまう。

 

ミケルアンチ”ェロは、いま、生きている。
うたがうひとは”ダヴィデ”を見よ!
羽仁五郎

【本】ミケランジェロ:絵本や子供向け伝記もいっぱい!

またかの緊急事態宣言直前、うんざりな私は都立大OU(オープンユニヴァーシティ)の夏季講座の準備に勤しんでいます。どこへも行けないのでひたすら近所にお手かけ。ということで図書館(これは私の人生のおなじみだけど)を隅々まで見ているうちに、子供コーナーまで踏破してしまいました。子供の本って、くだらない大人の本よりよほど良いものが揃ってる。偉人伝記シリーズなんか、小学校時代を思い出します。全部読んでおくんだった。

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世界の歴史:ミケランジェロエリザベス女王

世界の偉人にミケランジェロは入っているようで、あちこちのシリーズで見かけたけれど、ミケランジェロエリザベス女王ってのは珍しい。

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石の巨人:ミケランジェロダビデ像

全部読んだわけじゃないけど、子供向けミケランジェロで一番気に入ったのは「石の巨人」です。デザインも文章もとても良い。子供モノは文字数が少ない分、いよいよ単純で短絡的(決まり文句のような)になりがちだけど、ある程度は仕方ない。実際の歴史はそんな簡単なもんじゃないのに、大人向けのルネサンスの本だって、馬鹿の一つ覚えみたいに「人間復興」とかメディチ家バンザイみたいな内容が多いんだから。

絵本にしては、とても真面目に時代考証ができていて、イラストにそれが反映されていた。いつも私の推薦図書が難しいと言ってる人、そうでない人にもお勧めします。授業の前に読みましょう。10分で読めますが、絵を堪能して1時間くらいかけてあげて欲しいです。

一般書ではやたらレオナルドばかり目について、ミケランジェロの本なんか普通の本屋さんには絶対売ってないけど、絵本の世界ではミケランジェロ、結構人気で嬉しかった。やっぱり作品がしっかり残ってるもんね。作品の写真をイラストと合わせている絵本も一杯あります。

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レオナルドとミケランジェロ

これは「もっと知りたい世界の美術」っていう一般書のシリーズがあって、その子供番。子供版の方が大きいから作品が見やすくて良いかもしれない。ただ私は元々このシリーズが好きじゃない上、子供版は、大人版の情報をそのまま入れ込んでいる部分と、本文の子供へのお話口調が乖離していて変な感じ。絵本というより簡単な資料がまとまってる点が特徴。

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ミケランジェロBL出版

正直言って表紙は全然魅力的じゃない(ミケランジェロが良い男だったら全然違う)けど、内容はとても良い。デザイン(装丁)も文章もレベルが高く、十分に大人でも読める。というか、ミケランジェロの授業に参加しようかなと思ってる人には、第一にお勧めします。地図も歴史も作品もきちんとした資料です。

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イレーネ・ステッリングヴェルフ著

子供教養シリーズの美術版で、イタリアで各国語が売られている中の日本語版です。これはレオナルドだけど同シリーズで「ミケランジェロを手伝ったよ」というのがあります。写真と様々な技法を駆使したイラストで表現され、何より現代の子供がタイムスリップしてレオナルドやミケランジェロに会うという設定が変わってる。

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ミケランジェロを手伝ったよ

差別化を図ろうとするのはわかる。けど内容はかなり酷い。誰も研究者や編集者が内容をチェックしなかったのか、めちゃくちゃなことが堂々と書かれています。レオーネ五世って誰ですか?レオ十世の間違いですよね?最後の審判ミケランジェロに発注したのはパオロ三世(パウルス)じゃなくてクレメンス七世だけど。ミケランジェロは天井画を描いた時寝転んでいませんよ、マルクス・アウレリウスの騎馬像はコンスタンティヌスと勘違いされていたからカンピドーリオの真ん中に据えられたんです。とかとんでもない歴史的な間違いが多々ある上、翻訳もかなり問題あり。凝ってるんだけどさ。もったいないね。専門家にみて貰えば良かったのに。

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ヴァザーリ芸術家列伝

これは子供向けじゃないけど、本が苦手な大人向けシリーズ。ボッティチェッリとリッピもあったと思う。

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ミケランジェロの封印をとけ

変わり種としては、ファンタジー小説ミケランジェロが使われたりもしています。

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子供のための美術史

ミケランジェロで本を検索すると、まだまだ沢山出てきます。最後に「子供のための美術史:世界の偉大な絵画と彫刻」もどうぞ。子供向けの方がいいところは、とにかく版が大きいので作品が見やすい点です。最近老眼で文字が読みにくいとか、忙しいとか、読書するにもエネルギーが足りないとかいろんな言い訳で、なかなか読めない人、子供向けだって、すごく役に立つので手にしてみてね。何にも読まないより百倍もいいよ!

 

 

【美術】暑い夏は熱いミケランジェロと

今日は大雨でカルチャーセンターがお休み(振替)になりました。豪雨で窓が開けられずコロナ対策の空気入れ替えができないからだそうです。そこで zoom 授業の最大の利点を痛感。都立大も大雪とか台風とかの時大変だった。一度なんか電車が止まって大金払ってタクシーで授業へ行ったこともある。オンライン授業のありがたさが身に沁みるなぁ。明日も元気でコンピューター越しに逢いましょう!

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Genesi 創世記

明日は都立大OU(オープンユニヴァーシティ)の我が西洋美術講座【システィーナ礼拝堂の図像探究】第一弾、最終日です。この前「もっのすごく面白かった」と言ってもらえました。こちらも、もっの凄く嬉しいです💖
春夏秋冬、三ヶ月づつの講座なので、コロナ前なら先週には終わってたはずなんだけど、今回は1年以上お休みが続いたからできるだけ長くやろうということで7月に食い込みました。新たな講座も始まる予定(人数確認があるから最後まで決定しないけど、私の講座は一度も潰れた事がありません。参加者に感謝。神に感謝。)。みんな申し込んでー!おねがいーっ!私の収入には参加人数は無関係だけど、できるだけ多くの人に来て欲しいんだもん💕

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Palazzo Vecchio, Firenze

講座【システィーナ礼拝堂図像探究】の計画は以下の通り。

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紅海で真っ二つになった海に飲まれるエジプト軍「あぎゃ〜っ」

1:初期礼拝堂。
画家はボッティチェッリ、ペルジーノ、ギルランダイオ、ロッセッリ他大勢出てきます。
画題としては「旧約聖書」のモーゼ伝と「新約聖書」のキリスト伝
歴史的には「パッツィ家の陰謀」というルネサンス史の有名事件が中心。(明日が最後)

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美青年の筋肉祭り

2:ミケランジェロの天井画。
美術家はミケランジェロが断然中心。敵対勢力や教皇も活躍(暗躍か)。
画題としては「旧約聖書」の創世記
歴史的には、メディチ独裁対サヴォナローラや共和政府の激動のフィレンツェ史に翻弄されるミケランジェロ
ミケランジェロは超長生きなので全部は語れないけど、特に誕生からローマに呼ばれるまでの初期人生、「ピエタ」や「ダヴィデ」など美術史上の金字塔を打ち立てた事など、システィーナ以外の話もします。7月の第3土曜日、17日から。乞うご期待!

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天国へ引き上げてもらうにも筋肉勝負

3:ミケランジェロ最後の審判

美術家はミケランジェロを主人公に彼の信奉者、追従者、おべっか使いから敵陣営まで。
画題は「新約聖書」の「黙示録」から特に最後の審判。聖書の内容もますます面白い!
歴史的には、宗教改革ルネサンスの終焉、中世から近世へというヨーロッパ史の大転換期。(秋講座)

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流石に美しいラッファエッロの織物

4:ラッファエッロの垂布
美術家はラッファエッロ。彼の師匠、弟子、ライバルに女性関係まで豪華絢爛。
画題は「新約聖書」の使徒言行録から聖ペテロとパウロの挿話。
歴史的には、戦う教皇ユリウスから、世界史における最も豪華な宮廷を持ったメディチ家のレオ十世へ。(冬講座)

この4回で一応「システィーナ礼拝堂図像探究」シリーズは終わる予定。コロナ明けにはローマに行きたくてたまらなくなる、システィーナ再度挑戦、ますます西洋美術が大好きになる、そんな講座を続けるためにも、あなたの参加を待っています💗

 

【映画】美術家たちの伝記:フリーダ・カーロ

いよいよ「システィーナ礼拝堂を詳述する」シリーズ第一弾が終わろうとしているところです。次はミケランジェロだからみんな都立大OUの私の授業に来てください!

とか言いながら常に映画やドラマは見観ちゃってて、昨日は「フリーダ」を観ました。

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フリーダ

題名:Frida フリーダ
監督:ジュリー・テイモア
製作:2002年 アメリ

アカデミー賞2部門受賞だし、何より美術を知る人には有名人だから当初見たんだけど再見。美術を知る人にはって書いてから気付いた。美術を知らない人にも結構有名だ。その証拠に彼女をモチーフにした商品ってびっくりするほどたくさんある。バカっぽいプリントのパンツや雑貨から彼女の写真や作品を配したシャツやカバン、靴まである。ヴォーグの表紙はファッション好きの人なら誰の目にも留まるものだし、映画も何本か、本もいっぱいある。

今年2021年もフリーダに魅せられた人たちが作品を作った。これによると「世界で最も賞賛される三人の芸術家」はレオナルド・ダ・ヴィンチピカソフリーダ・カーロなんだそうだ。ふ〜ん。私には、美術っていうより人生や性格に関心があるように見えるけど。

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フリーダ・カーロに魅せられて

フリーダ・カーロは最高に上手いわけでも美しいわけでも深い思想性があるわけでも無いけど、人を圧倒する迫力がある。彼女の作品は気持ち悪過ぎ、怖過ぎ、悲しくなるかと思えば温かい気持ちにさせる。正直言って全然私の趣味じゃ無いけれど、フリーダの家に行ってみたいとずっと思っている。フリーダと才能あるろくでなしの夫リベラが住んでいた南米としか言いようのない色の家。現在は博物館だから。

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死を目前にした共産主義者フリーダ

映画は、単純な伝記映画の作りで大事件には触れているけれど、彼女を特徴付けている政治性や思想が描けていないと思う。上の写真が証明しているようにコミュニストとして、愛国者としてのフリーダのことがあまり感じられなかった。スターリンから逃げてきたトロツキーと恋仲になる場面があるくらい。体を締め付ける拷問具のようなコルセットに、ベッドの上に据えられた鏡を見ながら自分で描いた社主義者、共産主義者としての印。その下には胎児が見える。

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1945年の作品

上の作品には彼女が影響を受けた人々がぎゅうぎゅう詰め込まれている。すぐ分かる通り、右も左も無関係に自分で気に入った思想を選んでいる。これとは全く違った見た目だけど、私も大学の卒業制作で、自分が影響を受けた人々の肖像を、その人の思想や生き方をイメージしながら製作したことがある。ただ情熱的に奔放に恋愛やセックス、大酒飲んで生きた人じゃないとこが、すごいと思う。恋人の中にイサム・野口が全然出てこなかったけど問題あったのかな。

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子供を失い、身体は切り刻まれた彼女ならではの作品

一応彼女の人生は分かるし、一応似てるし悪い映画じゃないよ。知らない人は見てください。でもやはりなんと言っても彼女の作品を見てほしい。文字通り壮絶だから。

最後に、私の意見では「女にしか描けない作品」の代表はフリーダ・カーロ、アルテミシア・ジェンティレスキ、ジョージア・オキーフかな。

 

【映画】九人の翻訳家 囚われたベストセラー

題名:Les traducteurs(翻訳家たち)
邦題:9人の翻訳家 囚われたベストセラー
製作:2019年。フランス、ベルギー
監督:レジス・ロワンサル、アラン・アタル(製作)

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ポスター

評価は特に高くはないけど、私には、身につまされる部分も大きいからか、とても面白かった。常に説明的な日本のフライヤーでは「105分、あなたは騙され続ける。真実はDedalusこの中にある。」となってる。謎解きは得意な方だから、言うほど騙されはしなかったけど、騙されるとかいった表面的な面白さとは違ったところが良かった。

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日本のフライヤー

「翻訳家たち」という題名で観たかった映画。実はダン・ブラウンのラングドン教授シリーズ(「ダヴィンチ・コード」が第一弾)の4作目「インフェルノ」を出版するときの実話が元になってると知ってビックリ。ラングドン・シリーズはイタリアが大いに関係してるから一応全部見てるけど、映画としてはちっとも好きじゃない。大袈裟で平凡だし、元の作品(レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」やダンテ・アリギエーリの「新曲・地獄篇」)をねじ曲げまくるのも不快。

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ダン・ブラウンインフェルノ

世界中で売れまくった本のシリーズだからって、出版社が著者の許可をとり、翻訳者たちを地下室に閉じ込め完全隔離し、一斉に翻訳させて海賊版などが出回らないようにしたんだって!本当!?信じ難いけど、確かに勝手に翻訳してネットに載せる人も結構いて、そこで読まれちゃうと本が売れなくなっちゃうし、変な訳でも管理できないし、著作権問題とか色々ある。とにかく翻訳家たちを隔離したのは実話。

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とにかくダヴィンチ・コードが売り文句

一見優雅なフランスの田舎のお屋敷は、実は地下にとんでもない隔離施設を持った要塞建築だった。世界各国(イタリア、スペイン、ポルトガルギリシャデンマーク、ドイツ、中国、イギリス)から翻訳者たちが集結。中国人は中国から来たんじゃなくて長年フランスに住んでる。オリジナルがフランス語だからか、イタリア、スペイン、ポルトガルラテン語圏、それにギリシャ人もいて地中海文化圏の言葉は沢山あるのに、日本語はないんだなーというのが、日本人としての第一印象。やっぱりこういう哲学的な本格文学は日本人は嫌いなのかなーとか思わされた。

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登場人物メインに考えたポスターもある

単純に犯人は誰か、なぜそんなことをするのかという謎解きの面白さももちろんあるけど、それ以上に「文学」愛がテーマで、何度も本が出てきて、この本の中に真実があるとか言いながら日本語訳ではその辺が全く無視されている。問題の本はDEDALUSという。

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1973年のイタリアン・プログレッシブ・ロック・バンド

DEDALUSと聞くとロック好きの私なんか、いきなりイタリアン・プログレのバンドを思い出しちゃう。それから当然ギリシャ神話のダイダロスダイダロスイカロスのお父さんだけど、発明家であり巧みな職人で、クレタ島ミノタウロスを閉じ込めるための迷宮を作った人として思い浮かぶ。下は16世紀初頭のフランス人画家による物語絵。右端に迷宮が見える。映画では、厳密には迷宮ではないけれど、閉じ込められて出られない謎の場所として関連付けられる。

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Maître des Cassoni Campana

そしてなんといっても20世紀最大の小説家ジョイスが自己を投影したと言われるスティーブン・デダルスが思い浮かぶ。映画の中では重要な本は二冊しか出てこない。それはジョイスプルーストの「失われた時を求めて」。映画の中でも文学とは何かという場面でジョイスの名が出てくる。

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Stephen Deduls

資本主義によって堕落させられた売れる小説と真の文学の対立が軸で、そういう視点は目新しくはないけど、私自身が常日頃感じていることで、そういう点でも私にとっては深みのある映画だった。でも犯行の動機は理屈ではなくすごく人間的、情緒的なものなのも良い。

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読書家でも躊躇する全14巻。失われた時を求めて

細かな点ではさまざまな言葉が飛び交うところが面白く、囚われの翻訳者たちが怖いロシア人警備員や出版社の社長に分からないように、目の前でスペイン語で連携したり、三重通訳したりする場面も私にとってはリアル。日本語、英語、イタリア語で通訳したことがあって、能力のない私は死にそうになった経験がある。そうそう、今回新たに知ったのが情報通信研究機構が開発した対サイバー攻撃アラートシステムの名前がダイダロスっていうんだって。コンピューター好きなのでこのサイトも面白かった。

そーいえば一回だけ日本が活躍したことがあった。世界一早いコピー機の一つとして登場。



【美術】システィーナ礼拝堂のミケランジェロ

おかげさまで、1年以上できなかった都立大の講義もオンラインではあるけどやっと再開でき、楽しく授業しています。都立大OUとしては例外的に大勢の参加者も皆熱心で、ここで紹介する本を読んで、旅に行ったりもしているようでとても嬉しいです。

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Michelangelo, Cappella Sistina

講義できなかった1年以上、さまざまな内容を考えていました。初めて緊急事態宣言が出された当初は、今こそ歴史的にパンデミック(社会に大規模に疾病が広がった状態)について考えるべきと思い、「ペスト」について散々調べました。親しくしていただいている石坂先生が日本を代表するペストの研究者(病理学的ではなく歴史研究)なので極めて専門的な資料も提供していただき、講座を用意していました。ところが何度も中止になる内、毎日いつ終わるともしれない病気の話ばかりされるのにうんざりしているのは私だけでは無いだろうと思い始め、やっと再開が決定した時には、晴れ晴れと私の専門(正確には中世だけど)の内容で明るい授業をしたいと感じるようになりました。

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Michelangelo, Cappella Sistina

それで原点に帰って、間違いなく美術史上最も重要な場である(他に無いとは言わない)システィーナ礼拝堂を選びました。私の講義に興味を持ってくださる方なら、訪問した人も少なからずいるでしょうし。ところがここからが私流で、システィーナといえばミケランジェロと思っている人が圧倒的だけど、そうではなく創建当初から始めました。あそこでは大勢の素晴らしい美術家が仕事をしているのに、まるでミケランジェロしか居ないような紹介の仕方は間違っているし、ミケランジェロの最高傑作は絵ではなく彫刻だと、以前から常に考えてきたからです。

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Michelangelo, Cappella Sistina

そこで現在行ってる春講座では創建当初のシスティーナと教皇の画家たち(ペルジーノ、ボッティチェッリ、ギルランダイオ、ロッセッリとその弟子たち、ラッファエッロ、ピエロ・ディ・コジモ、フィリッピーノ・リッピ他)等が描いた「イエス伝」と「モーゼ伝」を取り上げています。次の授業ではかの有名な「海が真っ二つに割れる」モーゼの大奇跡などについて話します。

夏講座は、ミケランジェロが主役。参加者の募集が始まったところなので、ぜひ上をクリックして都立大のページへ行ってください。夏講座は天井画「創世記」からはじめ、「最後の審判」まで、とにかくローマのミケランジェロを追いかけます。ミケランジェロは非常に長生きだった上、複雑な人物で彼の全てについて話すわけには行きませんが、フィレンツェの隠れていた地下礼拝堂など、極最近公開になった場所や、ルーブル自慢の所有作品「瀕死の奴隷」など、ローマ以外の話もすることになるでしょう。西洋美術史上、最強最大の悩める芸術家ミケランジェロを知ってみたくありませんか?

 

【料理】9000年の歴史を持つ小麦でパンを作ってみた

私にしては珍しく料理の話!

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ルッカ料理フェス

ルッカ(イタリアはトスカーナ州の街)を知ってる人なら、このポスターを楽しめるはず。ルッカで最も印象的な(世界中でも珍しい)古代ローマ帝国時代の競技場アレーナ広場(ローマのアレーナはコロッセーオ)をお鍋に見立てた料理フェスのデザイン。Bollito(ボッリート)は沸いた、煮た、茹でたという意味で、1月26日(日曜)に食べられるものの筆頭にfarro(ファッロ)がある。全てルッカの特産品でちなみに38ユーロだから安くは無いね。ファッロは日本では「スペルト小麦」の名で定着させようとしているみたい。

日本語で理解するには上のサイトをお勧め。それによると9000年以上前に地中海の人たちが食べてたことが分かってるんだって!その小麦を北海道で栽培してて、この小麦を使ったイベントに参加する予定でした。

ところが前日に夜更かしして微妙に具合が悪く、普段なら行ってたけどこのご時世だからお友達に代わって行ってもらいました。国立の素敵なイタリアンレストランでのイベントで、楽しんでくれました。

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Farro

2時間弱って話だったんだけど実際には倍はかかったみたい。だってひたすらシェフが一人で練って、参加者は美味しく食べたらしいから。で、お土産にその小麦粉をドーンといただきました。普段はしないパン作りに挑戦。正直いうと、私の母は元栄養士でお料理は得意、パン作りも一時ハマってたからほとんどやってもらった!

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ファッロのパン作り一回目

レストランで頂いた資料による材料は:

スペルト小麦140グラム、中力粉60グラム、バター20グラム、、塩3.5グラム、塩麹18グラム、イースト2.5グラム、水120グラムで、一次発酵のみ、焼き時間210度12分です。

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スケッパーを使いました

でも母は慣れてるし、ネット調べもし、レストランのお釜と家庭のオーブンの差を考えて変更。2次発酵させ温度と時間も調整しました。 

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二回目のパン作り

綺麗に丸めるのって技がいるよね。私が丸めたのは載せません。結果として、しょっぱ過ぎる気がしたので、二回目は塩麹を入れないでやりました。このために塩麹買ったのに、要らなかった。それから低温自然発酵で一晩寝かせて作ったのが二回目。普通のパンよりもちっとしています。どうしても下が潰れてしまいます。

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ファッロのパン作り三回目

三度目は、ますますレシピを変更して塩と水を少なく、形も丸くしないで焼きました。いつもパウンドケーキなど焼いてる容器です。微妙に他の材料も分量を変えています。焼く前に卵のキミを筆で塗って艶も出します。

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ファッロのパン作り三度目の出来上がり

結果、一番上手にできました。下もほとんど潰れていませんし、全くしょっぱくありません。後悔したのは、全部使い切ってしまったこと。もう一回分残して、バターの代わりにオリーブオイルでやってみたかった。さらに美味しくできた気がします。

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最も基本のレシピ

なぜ料理好きでもない私がこのイベントに参加しようとしたかというと、ファッロはルッカの特産品で伝統料理だから、現地で何度も食べているの。向こうではパンではなく、基本は上の写真のように、具沢山スープのような、昔風に言えば日本のおじやのようなもので、私はこれが大好きです。

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ファッロを使った料理

他にパスタに成形したり、揚げたり、小麦なので色々作れます。普通の小麦より何倍も栄養があってアレルギー対策にもなります。興味のある人はググれば色々レシピが出てきますし、イタリアのようにはいきませんが国立のイベントでも紹介されたように日本産の商品もあります。

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ルッカ近郊のガルファニャーナ産ファッロ

イタリアにはいろんな種類の商品がたくさんあって、価格も品質も選べますし、もし本当に気に入って大量に欲しいなら、直で(イタリアから)買う方が経済的かも・・。

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ファッロ料理を出すガルファニャーナのレストラン

あー、いつまた行けるんだろう?!でも行ったら当然ルッカには行くし、ルッカ周辺のガルファニャーナにも愛するロマネスク聖堂や古代美術など色々あるからできるだけ長期滞在して、そのおりには間違いなくファッロをいただきます。

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古代の女神

発掘された古代の女神の目が、ファッロなんだって。イタリア語の記事を読みました。私にはよく分からんけど、多分、ものすごい吊り目がファッロの目だと思う。要するに豊穣のお守りだ。これを読んでアレルギー対策の食品に興味のある人は是非、色々調べて欲しい。食べるのが好きな人、イタリアが好きな人は、一緒に食べに行けたらいいね💖

【イタリア語】Tutti i Giorni❣️L'italiano イタリアのドラマ

何語でも勉強するには、不断の勉強が必要だけど、辛すぎると続かないから楽しみながら、息抜きしながら勉強したい。と言っても、語学学校の定番「ひたすら楽しいばかり」の勉強なんてあるわけないし、そんなんでできるようになる人はいないのが真実。基本は、絶対「単語覚え(発音も一緒に)」「基本文法」「多読」「聞き取り」であるのは当然のこと。それらはみんな受け身。それがある程度できたら能動も加えて「書い」たり「しゃべったり」する。

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Cattedrale, Milano

そこで気晴らしと楽しみに加え、社会背景も感じられるように「音楽」を聞いたり、「映画」を観たりする。もしあなたが音楽好きならば断然音楽を聴くことを勧める。私は、いわゆる勉強の他はほぼ音楽一辺倒で単語やニュアンスを覚えた。でももし音楽好きじゃないなら、ドラマがおすすめ。映画ももちろんいいけど、映画は何回も見る人は少ないでしょ?やっぱり繰り返しが単語や言い回しを覚えるのに良いから、音楽やドラマのように、何度も聞いたり観たりしやすいのが良いと思う。

今日本で見られるドラマは、たとえばこの『パラディーゾ:恋する百貨店』原題はParadiso delle Signore(ご婦人方の天国。古風な訳だけど)といってデパートの名前と重なってる。日本はいつでもださいサブタイトルをつけるんだけど、今回の「恋する百貨店」は、ま、良いかな、そんな感じのドラマだから。イタリアではシーズン5まで終わってるけど日本では1が今年から始まりました。主人公がシチリア人で、言葉の問題とかも出てくるので、勉強してる人には面白い。1950年代、百貨店が目新しかった時代の、女性のサクセスストーリー。エミール・ゾラの小説を下敷きにしてる。

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Mazara della Valle, Sicilia

仕事のない男尊女卑のシチリアからミラノに出てくる、度胸満点で美人の主人公は、NHKの朝ドラも彷彿とさせるようなお決まりなんだけど、原本がゾラだけあってちょっとは深みがあるし、なんといってもミラノのドゥオーモや建築史的にも有名なヴィットリオ・エマヌエーレのギャラリーが毎回見られ、ミラノを知ってる人には聖ロレンツォなど他の聖堂も出てきたり、それだけで嬉しい。もちろん女性向きデパートの話だからファッションや髪型なんかも楽しめる。個人的にはデザイン広報部のディスプレイ作業なんかも楽しい。

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Galleria di Vittorio Emmanuele, Milano

私は恋愛ドラマはぜ〜んぜん見ないんだけど、これはイタリア語のために見てる。

またもとんでも無く日本番はださいサブタイトルが付けられたモンタルバーノは1999年にイタリアで始まり、ヨーロッパ中で有名になった本格派の刑事ドラマ。主人公のモンタルバーノ役ジンガレッリは舞台でも有名な俳優で、あまりにヒットして長いことやり過ぎだからかなり前から辞めたかったらしい。それでも今年までず〜っと続いて37話で一応完結した。驚きの最後!と思った人も多い。もともとアンドレア・カミッレーリの小説で作家が2019年に亡くなった事もあって、やめてよかった。あまりに人気が出たから、よくあるようにスピンオフ作品 Il Giovane Montalbano(若き日のモンタルバーノ)も作られた。

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Michele Riondino

元のシリーズに慣れてた人には、突然のフッサフサの髪の毛にまずびっくり!作品の舞台ヴィガータ(シチリアの架空の街。実際にはシチリア島のあちこちで撮影してて、最も印象的なのはラグーサ)に着任する前から始まる。主人公はまたまた有名なイケメン俳優のミケーレ・リオンディーノ。ちなみにルーカ・ジンガレッリも若い頃はイケメンで知られていた。つるっとしてるのしか見た事ないけど。ルーカがコメディも得意な良い俳優なのに対してミケーレはいい男役をしてるのしか見たことないのは私だけ?

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Ragusa, Sicilia

ラグーサは個人的にとっても思い入れの深い場所って事もあって、毎回タイトルバックに出る景色が最高。それにテーマ音楽もシチリア音楽を意識した印象的なもので、話の内容は現実のシチリア問題が満載の複雑なもの。ということで、作品としての質が高い分、語学勉強にもかなり高度。方言も頻出だし、イタリアらしいマシンガントークや犯罪絡みの専門用語や偏屈な人たちの冗談など、よほどできる人でないと全部聞き取るのは難しい。

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Don Matteo

マッテオではなくマッテーオ神父は、絶対超おすすめ。2000年からやってるドラマ。神父探偵ってイギリスのブラウン神父が最初らしいけど、同じイギリスの牧師探偵「グランチェスター」なんかぜーんぜん聖職者らしからぬ雰囲気と内容で、好きじゃないの。それに対してマッテーオ神父は、聖職者らしい神様万歳!なところが好き。だってそうじゃなきゃ、わざわざ神父とか牧師にする意味あるの?

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Gubbio

モンタルバーノのシチリアの迫力ある風景や深刻な話の内容とは全然違った、中部イタリアのこじんまりした街が舞台という事もあって、穏やかで気楽な雰囲気。犯罪があるのにそれも変だけど、血も涙もない極悪非道の輩とか残酷な場面とかはまず出てこなくて、犯罪者のほとんどはいわゆる弱い人間で、昔懐かしい感じのいい音楽がかかるとドン・マッテーオが神のみ言葉をとくと、罪人は涙ながらに改心する。

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Spoleto

主役の完全無敵のヒーロー神父は、元西部劇の英雄だったテレンス・ヒルで国民的スターだった事もあり、人気番組だったのに撮影場所がお金がかかり過ぎで打ち切りになりそうだったのが、舞台をグッビオからスポレートに移して続行中。イタリア語勉強にはかなり役立つと思う。グッビオもスポレートもウンブリア州で、留学していたペルージャからすぐだから何度も行った思い出の場所。ロマネスク聖堂も素晴らしくて、コロナ明けには久しぶりに行ってみたい。

 

以前は全く見られなかったけど、ネットフリックスとかケーブルとかで日本でも少しずつ見られるようになってきた。やっぱり字幕がついてる方が、入りやすいからイタリアのテレビやYouTubeを直に見るよりおすすめします。

 

Ciao!

 

【映画】外出禁止だからせめてロード・ムービー

不要不急の外出禁止令をがっちり守りまくっているので、仕事(授業)の資料作りの他に、本を読んで、映画を観て、ドラマも完走、世界中の人とゲームで交流、音楽リストも作成して、その上裁縫や手芸、さらには普段は絶対やらないパンまで焼いてみた。

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The Straight Story

で、美術ファンの中には当然映画ファンもいると思うので、こもり生活の正反対の映画をお勧めしちゃうのだ。ロード・ムービー特集、思いつくまま。ブラピが出てる1993年の『カリフォルニア』なんかもあるけど、もっと良い映画とか強烈な作品を選んでみた。

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レニングラードカウボーイズアメリカへ行く

強烈といえばウルトラ前に見たのに、忘れられないレニングラードカウボーイズ、ゴー・アメリカ』な・・・なんだ!あの頭は!リーゼント過ぎるっ!!と言う人たちのロードムービー

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Leningrad Cowboys Go America

びっくりした〜。芸術映画にハマってる時期、観客いるの?みたいなアングラ(アンダーグラウンド、マイナーとかそう言った意味)な小さい映画館によく行きました。タルコフスキーとかブニュエルとかゴダールとか、いわゆる芸術映画史上の大監督作品を見まくった。そんな中、たまに馬鹿馬鹿しい自主制作や際物とかもあって、この映画は大ヒットでした。派手だもん。で製作はロシアかと思いきやフィンランドスウェーデンの合作で1989年の作品。故郷シベリアからアメリカ、メキシコと民族音楽含め色々演奏しながら旅をするバンドマンたちのお話。北欧独特のとボヨ〜んとぼけたコメディ。架空のバンドだったのに大ヒットしたのでバンド名を変更して(ホントのバンドが出演)映画も続編が出たほどです。も一度みたいな〜。初めて北欧モノの面白さを知った頃でもあります。

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Leningrad Cowboys Go America

で絶対思い出しちゃうのがブルース・ブラザーズこれは好き過ぎて何度も見てる。1980年の作品がカッコ良過ぎて1998年に第二弾も作られた。これはすごく有名な映画だから知ってる人も多いとは思うけど、レニングラードカウボーイズ同様、時代錯誤のバンドマンの話。でも対照的なのは北欧のロシア版カウボーイたちがボケまくりなのと正反対に、流石ハリウッドのコメディアンと超一流ミュージシャンがソウルフルに歌って踊るこっちはキレまくり。第二弾では子供までプロ根性で踊って歌ってくれる。あとロードムービーは、車も重要だけどパトカーってとこも印象的。

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The Blues Brothers

音楽とロードムービーといえば2018年の『グリーン・ブック』が外せない。すごく良い映画だった。実在の天才黒人ピアニストと運転手兼用心棒のイタリア系アメリカ人が、1962年に行ったアメリカ南部ツアーを再現した伝記物。BLM (Black Lives Matter 警官に執拗に暴行され亡くなった黒人の事件から、差別に対する反対運動の標語になった。大阪なおみが身につけていたのを記憶している人も多いと思う) のように現在も明確な差別が存在するけれど、この時期にはもっと極端な差別があった。イタリア系で貧しい大家族の一員トニーも、黒人が飲んだコップをゴミ箱に捨てる程差別していた。でも成功した天才ピアニスト、ドン・シャーリーの仕事で一緒に過ごす内、考えが変わってゆく。最後に実際の二人の写真が出てその後が紹介されるのも、定番だけど良い終わり方。いろんな賞を受賞しまくった反面、白人ヒーローっていうのがどうなのよ?とか時代考証の問題とかの指摘もある。確かにトミーは腕っ節が強く度胸満点の完全にヒーローだけど、ドン・シャーリーも際立った才能と高い教養があり、もっと楽に稼げるのにわざわざ苦難を選んだ根性ある黒人として描かれ、負けずにヒーローだから、私はケチつける人(人権活動家なんだろうけど)が言い過ぎの気がしなくもない。何より黒人だから日々不愉快な思いをさせられているにも関わらず、正しく生きようとしているところが素晴らしい。

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Green Book

タイトルの「緑の本」って言うのは20世紀に実際に使用されていたパンフレットで、グリーンという人が書いたんだけど、それは黒人が宿泊可能な宿などが記されているもの。知らなかった。そんなものがあったんだ。ほんと悲しい。それから考えれば、ほんの少しづつだけど世の中は進歩してるのかもしれない。それから私的には、結構出てくるイタリア語も楽しめた。よく、絶対この人喋れないよ、みたいな外国語喋る人(中国人や韓国人が日本人役で日本語喋るとか、イタリア移民の役のアメリカ人が訳のわからんイタリア語喋るとか)と違って、結構みんな二世だったらこんなかな?みたいな自然なイタリア語喋ってた。

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Green Book

 これをテーマに製作されたかっこいいポスターもたくさんある。デザインに関心のある人は探してみて。英語でね。

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Green Book

受賞と実話といえば2016年のオーストリアアメリカ、イギリス合作のインド人青年を主役にした『獅子』(日本語タイトルは『ライオン:25年目のただいま』がある。

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Lion

極貧生活をする兄弟が、僅かなお金を稼ごうとして夜中、駅に出かける。兄を待つうち列車内で眠ってしまった弟は見知らぬ場所で目覚め、危険をすり抜けながら孤児院で育つ。程なくして遥か彼方の良い家庭に引き取られて愛されて育ったんだけど、大人になってから自分のルーツを探す旅に出る。愛に溢れた母親役がニコール・キッドマンの割には、低予算で作られたが全世界で話題を呼んで大きな収入を上げた。信じられないような実話。表現なども特に凝っていない素直な良い映画。

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The Straight Story

最後に低予算&実話繋がりで、お気にりを紹介します。1999年の『ストレート・ストーリー』。このブログの一番上にある図はこの映画のもの。これも信じ難いことに、アイオワ州からウィスコンシン州まで560キロを、なんと芝刈り機で爆走した73歳の老人の話。長年疎遠だった兄が入院したという一本の電話がきっかけ。上で紹介してきたどの映画より地味な映画だけど、ある意味一番好きかもしれない。タイトルのStraightをどう訳すかが難しいと思うけど、日本版はただカタカナにしているのに対してイタリアでは「真実の物語」とイタリア語にしている。1994年に「ニューヨークタイムズ」に掲載された記事を元に作られた。

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Una Storia Vera

主人公は自分も腰が悪く、自力でなんでもやるのが困難になっているから、知恵遅れと判断された不幸な娘も大反対するが、有り金叩いて芝刈り機を購入し、時速8キロで出発。芝刈り機に乗って道をゆく彼を街の人々は面白がったり、驚いたり。故郷の小さな田舎町を出発して、都会を通過、巨大なトラックの横をすり抜ける時なんか、心配になってしまう。道を聞くと人々は仰天するも、雨にも負けず、ただひたすらゆっくり進む。唯一緊張感のある場面は、坂道でブレーキが壊れて止まらなくなるところ。ごく普通の善人、よくある問題を抱えた女の子、ちょっとずるい人、ちょっと意地悪な人、同じように寂しい人など、よくいそうな人々に出逢いながら目的を達成する。

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The Straight Story

有名なヒットメイカー監督、デヴィッド・リンチの作品中圧倒的に好きな作品。主演のリチャード・ファーンワーズはスティーブ・マックイーンゲイリー・クーパーロバート・レッドフォードみたいな人たちが共演を望んだ名優で、本当のカウボーイ(西部劇でスタントができる)だったみたい。彼がなんといっても素晴らしいんだけど、この映画が公開された翌年、癌の痛みに耐えきれず自殺した。撮影中も辛かったに違いない。老いて心身共に辛くとも自力で尊厳を持ってやり通す主人公に、まさに敵役だったんだろうなと思う。

 

カウボーイにはじまってカウボーイの話で締まった。カウボーイよ永遠に💖

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ