天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリア語】Tutti i Giorni❣️L'italiano イタリアのドラマ

何語でも勉強するには、不断の勉強が必要だけど、辛すぎると続かないから楽しみながら、息抜きしながら勉強したい。と言っても、語学学校の定番「ひたすら楽しいばかり」の勉強なんてあるわけないし、そんなんでできるようになる人はいないのが真実。基本は、絶対「単語覚え(発音も一緒に)」「基本文法」「多読」「聞き取り」であるのは当然のこと。それらはみんな受け身。それがある程度できたら能動も加えて「書い」たり「しゃべったり」する。

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Cattedrale, Milano

そこで気晴らしと楽しみに加え、社会背景も感じられるように「音楽」を聞いたり、「映画」を観たりする。もしあなたが音楽好きならば断然音楽を聴くことを勧める。私は、いわゆる勉強の他はほぼ音楽一辺倒で単語やニュアンスを覚えた。でももし音楽好きじゃないなら、ドラマがおすすめ。映画ももちろんいいけど、映画は何回も見る人は少ないでしょ?やっぱり繰り返しが単語や言い回しを覚えるのに良いから、音楽やドラマのように、何度も聞いたり観たりしやすいのが良いと思う。

今日本で見られるドラマは、たとえばこの『パラディーゾ:恋する百貨店』原題はParadiso delle Signore(ご婦人方の天国。古風な訳だけど)といってデパートの名前と重なってる。日本はいつでもださいサブタイトルをつけるんだけど、今回の「恋する百貨店」は、ま、良いかな、そんな感じのドラマだから。イタリアではシーズン5まで終わってるけど日本では1が今年から始まりました。主人公がシチリア人で、言葉の問題とかも出てくるので、勉強してる人には面白い。1950年代、百貨店が目新しかった時代の、女性のサクセスストーリー。エミール・ゾラの小説を下敷きにしてる。

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Mazara della Valle, Sicilia

仕事のない男尊女卑のシチリアからミラノに出てくる、度胸満点で美人の主人公は、NHKの朝ドラも彷彿とさせるようなお決まりなんだけど、原本がゾラだけあってちょっとは深みがあるし、なんといってもミラノのドゥオーモや建築史的にも有名なヴィットリオ・エマヌエーレのギャラリーが毎回見られ、ミラノを知ってる人には聖ロレンツォなど他の聖堂も出てきたり、それだけで嬉しい。もちろん女性向きデパートの話だからファッションや髪型なんかも楽しめる。個人的にはデザイン広報部のディスプレイ作業なんかも楽しい。

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Galleria di Vittorio Emmanuele, Milano

私は恋愛ドラマはぜ〜んぜん見ないんだけど、これはイタリア語のために見てる。

またもとんでも無く日本番はださいサブタイトルが付けられたモンタルバーノは1999年にイタリアで始まり、ヨーロッパ中で有名になった本格派の刑事ドラマ。主人公のモンタルバーノ役ジンガレッリは舞台でも有名な俳優で、あまりにヒットして長いことやり過ぎだからかなり前から辞めたかったらしい。それでも今年までず〜っと続いて37話で一応完結した。驚きの最後!と思った人も多い。もともとアンドレア・カミッレーリの小説で作家が2019年に亡くなった事もあって、やめてよかった。あまりに人気が出たから、よくあるようにスピンオフ作品 Il Giovane Montalbano(若き日のモンタルバーノ)も作られた。

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Michele Riondino

元のシリーズに慣れてた人には、突然のフッサフサの髪の毛にまずびっくり!作品の舞台ヴィガータ(シチリアの架空の街。実際にはシチリア島のあちこちで撮影してて、最も印象的なのはラグーサ)に着任する前から始まる。主人公はまたまた有名なイケメン俳優のミケーレ・リオンディーノ。ちなみにルーカ・ジンガレッリも若い頃はイケメンで知られていた。つるっとしてるのしか見た事ないけど。ルーカがコメディも得意な良い俳優なのに対してミケーレはいい男役をしてるのしか見たことないのは私だけ?

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Ragusa, Sicilia

ラグーサは個人的にとっても思い入れの深い場所って事もあって、毎回タイトルバックに出る景色が最高。それにテーマ音楽もシチリア音楽を意識した印象的なもので、話の内容は現実のシチリア問題が満載の複雑なもの。ということで、作品としての質が高い分、語学勉強にもかなり高度。方言も頻出だし、イタリアらしいマシンガントークや犯罪絡みの専門用語や偏屈な人たちの冗談など、よほどできる人でないと全部聞き取るのは難しい。

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Don Matteo

マッテオではなくマッテーオ神父は、絶対超おすすめ。2000年からやってるドラマ。神父探偵ってイギリスのブラウン神父が最初らしいけど、同じイギリスの牧師探偵「グランチェスター」なんかぜーんぜん聖職者らしからぬ雰囲気と内容で、好きじゃないの。それに対してマッテーオ神父は、聖職者らしい神様万歳!なところが好き。だってそうじゃなきゃ、わざわざ神父とか牧師にする意味あるの?

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Gubbio

モンタルバーノのシチリアの迫力ある風景や深刻な話の内容とは全然違った、中部イタリアのこじんまりした街が舞台という事もあって、穏やかで気楽な雰囲気。犯罪があるのにそれも変だけど、血も涙もない極悪非道の輩とか残酷な場面とかはまず出てこなくて、犯罪者のほとんどはいわゆる弱い人間で、昔懐かしい感じのいい音楽がかかるとドン・マッテーオが神のみ言葉をとくと、罪人は涙ながらに改心する。

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Spoleto

主役の完全無敵のヒーロー神父は、元西部劇の英雄だったテレンス・ヒルで国民的スターだった事もあり、人気番組だったのに撮影場所がお金がかかり過ぎで打ち切りになりそうだったのが、舞台をグッビオからスポレートに移して続行中。イタリア語勉強にはかなり役立つと思う。グッビオもスポレートもウンブリア州で、留学していたペルージャからすぐだから何度も行った思い出の場所。ロマネスク聖堂も素晴らしくて、コロナ明けには久しぶりに行ってみたい。

 

以前は全く見られなかったけど、ネットフリックスとかケーブルとかで日本でも少しずつ見られるようになってきた。やっぱり字幕がついてる方が、入りやすいからイタリアのテレビやYouTubeを直に見るよりおすすめします。

 

Ciao!

 

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