天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【語学】旅先での言葉。最悪な時も楽しい時も。

旅に言葉は必要だろうか?

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Vigevano

躊躇せずに言おう。絶対必要だと。

言葉のできない人はツアーに参加、もしくは誰かできる人と一緒に行く方がいい。絶対に良い!どんな目にあっても良いなら、別だけど。

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Galleria, Milano

飛行機の出発が遅れて乗り換えられないとか、台風で飛べませんとかなったら、予定はキャンセルしてめちゃくちゃになる。往路でロスバゲなんて最悪な事態も起こる。空港職員がストライキをすることだってある。何日もミラノのホテルで帰りの飛行機を待つ日本人男性にあった事があるので実際の話。彼は全く話せないから、ひたすら日本の代理店頼み。どんな代理店か知らないけれど三日も待ってもラチがあかなかった。数年前HISで飛行機を取ろうとして、空港の名前が全然違うのを発見。間違ってると電話したら、想像絶する酷い対応。私はバーリの空港の名前を調べられるけど、知らなかったらありもしない名前の空港に不安にならないですか?

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Bobbio

到着後も色々問題はある。置き引きは当たり前、スリも手練手管。慣れない場所で転んじゃったり、疲れているのに頑張って風邪をこじらせたり。パスポート取られたら出国できないから、どうしたって何日か掛かる。初めてイタリアへ行った時、HISで飛行機と初日のホテルだけとって行ったんだけど、もらった地図にホテルが無かった。夕闇迫るローマを散々探してお巡りさんも出動し、結局全然違うところにあった。当時はスマホの時代じゃ無かったから最悪もいいところだ。二度ものすごく不愉快な目に遭ったので、あの会社は未来永劫絶対使わない。

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Pisa

結局全てが順調に行けば良いけど、何かあった時に言葉ができないとものすごく困った事になる。イタリアへ何回行ったか分からない、留学もしていた私なので、当然いろんな目にあっています。自分も取られた事があるし、何もかも無くした人や病気で入院した人の通訳をしたことも。病院の通訳は専門的な知識が無いので凄く嫌だったけど、困ってる日本人がいるから行ってくれと、外国人大学の先生に言われたのでした。

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Benedetto Antelami

怖い話ばかりじゃ無い。危険があってもそれ以上に素晴らしいから旅に行く。私にとっては聖堂や美術作品という圧倒的な目的があるけれど、普通旅で最もすばらしい思い出は何だろうかというと、人々との触れ合いという事がよくある。コミュニケーションの基本ツールは言葉だから、話せれば何倍も旅が楽しいし、できる事が広がる。

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Monza

帰国便でのこと。モスクワからいろんな国籍の人が乗っていました。ロシア人と日本人、ヨーロッパ各地の人、アラブ系の人など色々。飛行機では10時間以上も隣同士なんだから、気持ちよく過ごすためにまずは挨拶。「ハーイ」とか「チャオ」とか。凄く大切だと思う。ずっと嫌な雰囲気でイライラしながら乗ってるのと、楽しく過ごすのでは疲れも全く違うから。荷物の上げ下げだって手伝ってくれるし。通路を挟んでお隣は日本のサラリーマンでした。挨拶しようにも彼は顔を合わせようとしません。それに引き換え隣に来たフランス人のお兄さんは、やたら陽気に挨拶してくれました。前はロシア人、後ろはイスラエルの女の子で、日本人サラリーマン以外の全ての人と挨拶し、時々会話しながら帰りました。周囲がみんな挨拶して喋っているのに、日本人男性だけ頑なに黙っていました。どうしてだろう。海外出張へ行くくらいなんだから簡単な英語くらいできるはずなのに。片言でも間違ってもいいから、挨拶程度の簡単な会話をした方が場が和んでいいのに。イスラエルのパンク・バンドのドラマーが隣だった時なんか、ライブに招待してくれました!

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Fidenza

言葉ができて良いことは幾らでもあるけれど、イタリアの文化的な施設(博物館、聖堂、お屋敷など)はヴォランティアも含めて、施設の説明をしてくれる人がいる場合が多いので、私は必ず頼みます。大抵無料です。そういう人がいない場合、神父さんや監視役の人が忙しそうでなかったら、色々と質問します。知らない場合もあるけれど、大抵は自分の国や文化財を愛してて色々説明してくれます。そうやって今までに何人もの研究者に会いました。大都市でない限り、博物館の館長だったり、展覧会を企画した美術史の教授だったり、本当によく知っている人たちです。街のロータリークラブに連れて行ってもらって専門家を紹介してもらったり。みんな大歓迎してくれます。

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Pavia

今回も行く先々でいろんな人たちに助けられました。お洒落なモンツァ若い女性に始まり、話が感動的なのは神父さんたち。パヴィーアでは二人とお話ししました。聖堂ヴォランティアの人達は、素晴らしい説明にお礼を渡そうとすると、教会のお布施箱に入れてくれと言います。芸術雑貨屋さんみたいなとこのおじさんも面白くて、小さな版画をTさんにプレゼントしてくれました。馬肉専門の女主人もたくさん試食させてくれたし、歩いている途中でもお散歩中の人達に地元ちっくな情報をもらいます。若いお巡りさんがかっこ良過ぎて質問してみたら、思いもよらぬ発見だったり。

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Piacenza

帰国前日、夕方フィデンツァのビール屋さんで友人と二人で飲んでいたら、店主と彼の友人と「戦後の日本とイタリアの経済発展と社会のあり方の違い」というまともに硬い話になり(サムライ、スポーツ、漫画の話も出たが)、最後には、彼は新婚旅行で日本へ来たのですが、初日、隣に座った人達がおごってくれたと言いだしました。その時の親切は忘れない!ということで、10年以上前の、誰だか知らない日本人のおかげで無銭飲食ならぬ、店主のおごりとなったのでした。どなたか存じませんが有難う💗

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Lunigiana

とにかく、どんな旅でも言葉はできた方が百倍楽しい。若ければこれから仕事に繋がるかもしれない。仕事は関係なくても、くだらないテレビを見るより言葉の勉強をすれば、歴史や映画や小説の意味がより分かるようになる。とにかく世界が広がる。下手でいいし、片言でもいいから話してみよう。通じた時や、相手の言ってることが理解できた時、とても嬉しいし、自分に自信がつく。それが上達する源にもなる。そうすると何度でも旅に行きたくなって、言葉の上達に従って旅の内容も変化する。そんなことをしているうちに本も読めるようになって、海外ドラマ(北欧物は全く分からん)を見ても結構分かるようになる。人生が変わる。旅に行く前の一言会話から入って、本格的に勉強につながれば、全く人生が変わるかも知れない。私は完全にそうでした。初めてのイタリア旅行に感謝します。

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