天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【旅】ヴァチカン博物館:グレゴリウス・エジプト美術館

友人Mがヴァチカン博物館へ行くので、思い出を書いてます。最初の方に出てくるグレゴリウス・エジプト美術館へ。

白と黒のコントラストが美しい

初めて見た時、無知な私は、こんな素晴らしい古代エジプトの作品が集められているのに単純に驚いた。でも考えてみれば、旧約聖書にはエジプトの話が何頁も出てくるのだから、古代エジプトキリスト教徒の源の一つなんだと分かる。教皇のうち何人かはエジプト文明にとても関心が高く、19世紀の教皇グレゴリウス八世時代に、エジプト学者だったウンガレッリ神父の提唱で開館した。どんな宗教もそうだけど、表面的で強権的な理解しかできないゴリゴリの頭の硬い人と、本質を大切に広い視野を持つ人がいる。

象形文字がかっこいい

象形文字っていうのは具体的な物を絵にしたところから発展した物だけど、一言に言っても色々ある。エジプトのヒエログリフが一番有名だけど、メソポタミア楔形文字とか日本語もそうだ。見た目は可愛いかったり面白いけど、合理的じゃない。だっていくらでも必要だし、覚えるのに時間がかかり無駄が多い。地中海やアラビアの表音文字の方がよっぽど合理的で私は好き。だって漢字を覚える労力を、物事を深く考える時間に充てられるじゃない。

フレスコの女性頭部

このフレスコの女性を見た時、やっぱり地中海文明だと思った。ポンペイの壁画とそっくり。二重に違いないパッチリ大きな目と、隈取りしてるんだろうけど、瞳、まつ毛、眉毛、豊かな黒い髪がはっきりした顔立ちを作る。鼻は高くて肌は真っ白って感じじゃない。今のイタリア人にも多い傾向だ。

紀元前664−524年の浮き彫り

古代博物館には、どこでも破片が沢山あって、私はイマイチ苦手。でもここの破片には色々絵が彫り込んであって芸術的!職人の質が高かったのがはっきり分かる、動物や鳥の光景と、縞模様のデザイン性が東方と西方の美術の融合を見るようだ。

アンクやスカラベ

古代エジプト文明はとーーーくの昔に滅んだのに、今も人々を魅了する古代文明の王者だと思う。エジプト十字のアンクや黄金虫を模ったスカラベなど、現在も若い人向けの様々なデザインに取り入れられてる。私はイタリア留学時代に、あるエジプト人の女の子と仲良かったんだけど、彼女は色々なことを教えてくれた。英語ができたから向こうで観光ガイドをやってたんだって。古代エジプト人は頭をパワーの源と考えていたので「後頭部を前頭部と同時に描くために横向きで描いた」という話が印象的だった。

おもちゃかな?

これはおもちゃか、副葬品か?身の回りものを一緒に埋葬するのは、死後の世界を信じる宗教には一般的で、イタリアではエトルリアのお墓が凄い。

紀元前1300−1250年の彫像

エジプト専門の博物館といえば、トリノに世界で2番目(一番は当然現地)を争う巨大な博物館があるんだけど、ここに収められたものは、ローマとティヴォリのハドリアヌス帝の別荘から出土したものに個人コレクションが加わってできた。ラムセス二世の象も歴史的には印象に残るけど、造形的にはファラオの神官で医者だった人の像があってそれが素晴らしい!個人的には、人間と動物が合体したものや動物の像が面白く、上の写真で〆と思います。写真は自分で撮影、説明はヴァチカン博物館の出版物から。ヴァチカンの旅は始まったばかり・・・(*_*)

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