天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【ドラマ】イタリア発ドラマ・日本で視聴可能

日本で視聴可能なイタリアのドラマを紹介しています。

Panicale

原題:Signora Volpe

邦題:英国諜報員シルヴィアのイタリア事件簿

例によって邦題は説明的でカッコよくないけど仕方ないか。イタリア語のタイトルは「シニョーラ・ヴォルペ」で、意味は「狐夫人」。主人公の苗字とかかってるんだけど、キツネは「狡猾な人、抜け目のない人」って意味を持つのでそれもあるかな。それに何より「狐夫人」とかって近世の文学みたいな響きが素敵で、題名から色々連想させる。邦題は正反対で、そのまんま説明してくれるので連想力が失われる気がする。

Panicale,paesaggio

このドラマはイタリア語学習には向いていない。ほとんどが英語でたまにイタリア語が混ざる程度だから。でもイチ押しなのは、なんといっても景色!絶景!美しい自然の中にある中世イタリア都市の面影が堪能できる点で、本当に素晴らしい。

パニカーレの中央広場

イタリアとかいっておきながら、話はロンドンの最新のオフィスで始まる。当然英語。でもあっという間にイタリアへ移動する。しかもフィレンツェとかローマとかミラノとかヴェネツィアとかありがちなんじゃなく、思いっっっきり小さな村パニカーレへ。あとはシリーズ全部、基本的にパニカーレ周辺で起きるから、毎回中世都市の面影と自然美を堪能できる。

中央広場のバールで

パニカーレはイタリア中北部ウンブリア州のちぃさな街。で日本語でパニカーレって検索すると、カシミアのブランドも出てきます。もちろん一年中マイナーなヨーロッパの街を検索してるような人なら違うと思うけど。日本にも一部入ってきてるブランドで、めちゃくちゃイタリアらしいデザイン。男物のニットカーディガンをピタっと着ちゃうのが正しいイタリアの着方(公式サイトのモデルさん参照)。脱線終わり。

自然の孤島ってかんじ

こんな環境だから、家のすぐ裏が緑に囲まれてるんだけど、例えば同じヨーロッパの刑事物でも「信念の女刑事ヴェラ(邦題)」とか「シェトランド」とかの、美しいけど荒涼とした寂しい自然とは違って、流石イタリアの明るく穏やかな自然が安らぐ。ロンドン人にしてはイタリアっぽいおしゃれの主人公は旅行者のくせに、事件解決しまくりっていう、よくある地元警察の無能ぶりをアピールするドラマだけど、お料理探偵とかリフォーム探偵とかのど素人モノとは違って、元が国際的な諜報員だから説得力はそれなりにある。

Signora Volpe

警察もただ無能なだけじゃなくて、彼女がいい感じになる相手役の俳優は結構有名な性格俳優で存在感あるし、やっぱりファッションが日本では着られない服だらけで、楽しい。私はイタリアで生活してた時、ほとんど向こうで買った服だったんだけど、帰国したら着る機会がなくてすごく寂しかった。

tartufo

シルヴィアはボロボロになったルネサンス期の館を修復して住もうとしてて、羨ましいのなんのって。それはともかくその修復に来る村の親子とか、トリュフを掘り出す豚を飼育してるおじいちゃんの息子とか、とにかくあの小さな村の住人(パニカーレの人口は現在5600人)の多くが、ふっつーに英語を喋るのだけは受け入れがたかった。制作にはイギリスが関わってるし、欧米圏の観光客や、屋敷を購入しようなんていう人が増えちゃうんじゃないかって心配しちゃうくらい私には綺麗なドラマ。あれを信じてやって来た欧米人は英語が通じないのに騙されたと思うかな?

Masolino da Panicale

最後に一言。パニカーレっていうと私がすぐに思い出すのは、このドラマではありません。西洋美術研究者としては当然だし、中でもイタリア中世が専門なら誰でもそうだと思うけど、画家のマゾリーノです。マゾリーノは、ミケランジェロも通ったルネサンスの学校と言われた聖母マリア・デル・カルミネ聖堂の礼拝堂(今はブランカッチと呼ばれている)の画家です。マサッチョがあまりに有名なのでその影に隠れがちだけど、豪快なマザッチョに対して可愛くて優しいマゾリーノの絵が私は大好きです。

 

とにかくちょーお勧めドラマでした🌟

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