天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【文化】国立市と友好都市になるルッカ

東京都の国立市とイタリアはトスカーナ州ルッカ市とは友好都市計画を進めています。私はこの計画に関わっていて、小さなパンフレット作りにはかなり関わりました。出来立てホヤホヤの紹介パンフレットです。私は、記事は結構書いていますし、写真提供や校正をずいぶんやったのですが、デザインには関わっていません。元は美大卒のデザイナーだったのだから残念ですが、何もかもするわけには行きません。市のため未来のためにボランティアで製作したのは「くにたちイタリア商店の会」です。お疲れ様でした。

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ルッカ紹介パンフレット

表紙は、ルッカの街中にある最も印象的なアンフィテアートロ広場を外から覗いた場面です。国立のマスコットキャラくにニャンも登場。国立を知っている人ならご存知の通り、国立って旧駅舎に異常に愛着のある人々が沢山いて、つまらない新駅ビルの前に旧駅舎を復元しているんですが、くにニャンはその駅舎を元にしたデザイン。ルッカと国立の市長同士が硬い握手。ルッカ市庁舎で撮影。

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Anfiteatro, Lucca

アンフィテアートロとは古代ローマの競技場のこと。観覧席を住居に立て直して住み続けたのは世界でも珍しい現象です。中世の姿を近世に再現しています。

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パンフ最初の見開き

最初の頁は、イタリア関係者なら誰でも知ってる超重鎮、西村暢夫大騎士(イタリア政府から授与された)が執筆。正直言って私だったら絶対書かない内容ですが、大騎士が日本とイタリアの橋渡しとして最初に貢献されたのは紛れもない事実ですし、大変人格者です。

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San Frediano, Lucca

日本では区別なく大聖堂って言いますが、イタリア語ではBasilica(バジリカ)です。この聖堂はルッカの歴史で最も重要な聖堂の一つですが、司教座聖堂ではありません。ただ聖堂好きならすぐ気付く通り、様式的に非常に珍しく、ファサードの巨大モザイクは大変印象的です。行く度に何枚も写真を撮っているのですが、お天気や時間によって印象がずいぶん違うのに、キリストはいつだってこちらを見つめています。

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パンフ次の見開き

次は音楽と美術の話。当然私は美術欄担当です。当初、ルッカのガイドブック的な内容を想定していたので、重要な美術館や施設の一言紹介を書きましたが、的を絞った記事にしてほしいと言われて、街のど真ん中に彫像がある最大の芸術家、チヴィターリの話を中心に、ロンゴバルド時代、ロマネスク時代からルネサンスへと、ルッカ美術を代表する作品を紹介しました。チヴィターリは繊細で優美な聖母の彫刻家ですが、私は斬首された洗礼者ヨハネの写真をすごく使いたかったのに、拒否されました。若い人には切られた首の方がウケたと思うんだけどな〜。でももちろんこの聖母子は最高です。マリアはなんだか仏教美術にも通じる達観した穏やかさを感じさせます。

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Matteo Civitali,Lucca

で食の話。大体この冊子の制作は商店の会がやっているのですが、食関係の人々が中心なので、私には食にスペースを割き過ぎに思えるけれど、大多数の人は食に関心が高いので自然かもしれないです。国立にはレストランも含め、イタリアの食材を扱うお店が沢山あるので是非どうぞ。

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パンフ3番目の見開き

ルッカで私が大好きなことは沢山ありますが、食に関しては、すぐ隣のフィレンツェと違って安い!美味しい!落ち着ける!こと。特にファッロを使った伝統料理はいつでも食べます。

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国立のイタリアン・レストラン、アルトパッショ

次は地理とか行事とか人口など基本情報頁。このページではずいぶん書いてるんだけど、編集サイドと意見が合わなくて大変でした。ルッカへの旅の一言案内みたいになってるのですが、ルッカへの行き方(どうやって行ったって好きにすればいいけどさ)なんか私には理解不能なんだもん。日本からヨーロッパの街へ行く時、とにかくヨーロッパの国へ入ってさえしまえば大丈夫。別にミラノかローマじゃなくても、ロンドンでもアムステルダムでも問題ない。そっからフィレンツェかピサへ飛んでもいいし、電車好きならパリから夜行で来るとか色々ある。とにかく安くしたい私はたいていモスクワ乗り換えです。言葉が心配でとてもそんなことはできないと言うなら、アリタリアで直ローマ(成田からは圧倒的にローマ便が多い)かミラノに着いて、あとは間違いなく急行電車でフィレンツェで降り、乗り換えてルッカ着。これしかないね。ジェノヴァとかを回ってきたいならピサから来る手がいい。フィレンツェもピサも近いし、あの辺は安全だからお金に余裕のある人は、車をチャーターして寄り道しながら来るのも最高。途中に高級温泉や綺麗な場所が沢山あるから。

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パンフ情報色々頁

私の愛するヴォルト・サントの祭典(ルミナーラ)とコスプレで世界でも有名なルッカ・コミックスの紹介の他、ルッカの達人たちがいろんな場所をお勧めしています。と言っても私以外の人は皆食関係(レストラン、お菓子屋さん、料理学園)だけど。

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Palazzo Mansi

私としてはお洒落なルッカを紹介したかったんだけど、全然できなかった。ルネサンス後期からある宝飾屋さんなんか、店構えもアール・ヌーヴォーの美だし、15世紀のネックレスとか平気でどんどん触らせてくれる!日本では考えられないことだらけ。若者向けの経済的なお店もまた良くて、ウィンドー・ディスプレーからして斬新だし、売ってるものもラインが綺麗でカッコいいんだ💕

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ルッカ司教座聖堂ファサード象嵌細工

ま、とっても小さな本に色々詰めないといけないから、載せられないことが沢山出ちゃうのは当然です。最後は、どうして国立とルッカが有効都市なの?っていうまともな内容。市長たちのメッセージで閉め。

 

手作り感満載の小さなパンフレットが、無駄に捨てられたりしないできちんと読んでもらえますように、これを読んで有効都市とか文化交流とか、ルッカの街とかいろんなことに興味を持ってくれる若い人が現れますように、心から願ってる。国立市民にお知り合いがいたら、ぜひ伝えてください。お願いします💖

 

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