Paradiso パラディーゾ 天国
私は2月後半から9月まで!!大学ではイタリア語、西洋美術史、イタリア史の授業ができません。今はビデオ通話に抵抗のない人とだけイタリア語の授業を続けていますが、多くの人はすっかりお休みになっています。でも、こんなに長い間休んだら、語学はものすごく後退しちゃう!せっかく今まで積み上げてきた努力が水の泡にならないように、ブログをできる限り更新するので、読んで、そこから自分で発展させて勉強を続けてください。今度会ったときに実力が激減したりしていないように。
生徒でない人も、イタリア語に興味を持ってもらえれば嬉しいから、単に語学勉強ではなく、関連した文化的背景などの内容も同時に書いています。元々そういう方が得意だし。写真はローマのベルニーニが作った最高傑作です。どれが最高傑作かは人によって判断は異なるでしょうが、これに関しては作者自身がそのように考えていた節があるし、聖堂自体をほぼ全てベルニーニ一人でデザインしたという意味で、理解できます。もちろん私も初めてその空間へ足を踏み入れたときには、感動しました。深い心に染み入るような感動と言うのではなく、ぱっと目の前が明るく開けて、心が躍るような驚きでした。小さいながらもまさにこれぞバロックと言えるでしょう。聖堂の内部空間全てが天国 Paradiso パラディーゾを表現していますが、天国とはキリスト教徒にとっての終わりに他なりません。
are 動詞とere 動詞については書いたので残るは ire 動詞です。
最初に嫌なこと。
ire 動詞には基本変化が二種類あります。(直接法現在の場合)
今日はそのうちの面倒な方から。数は少ないですが頻度の高い動詞が多いので。
原型 finire フィニーレ (動詞)終わる 終える
io finisco フィニスコ
tu finisci フィニッシ
lui/ lei finisce フィニッシェ
noi finiamo フィニャーモ(普通の変化と同じ)
voi finite フィニーテ(普通の変化と同じ)
loro finiscono フィニスコノ
今までの規則に従えば io fino となるはずですが、そうはならず finisco となります。その流れでいくと noi finisciamo と言いたくなるのですが、一人称複数は常に基本に忠実なので noi finiamo となるのに注意。ほとんどの初心者が間違えるところです。
動詞の人称変化を覚えるのは何よりも最初にするべきことで、名詞や形容詞の男女単複の変化や、冠詞をどうするかよりも重要だと私は考えています。人称変化をすることにより動詞には主語が含まれる為、たった一つの単語で文章の骨格となるからです。
finire は英語の finish からすぐに覚えられる単語でもあります。
このおもしろ可愛い絵はイベリア半島のロマネスクの最も特徴的なものです。絵の下ある Apocalisse とはなにか。
Apocalisse アポカリッセ とは「黙示録」のこと。新約聖書の最後にある、預言文学で、世界の終末が語られます。「ヨハネの黙示録」を描いた美術作品は無数にありますが、中でもLuca Signorelli ルーカ・シニョレッリが Olvieto オルヴィエートの司教座聖堂 Cattedrale カッテドラーレ に描いたフレスコ affreschi は強烈で、ミケランジェロより早く裸体 nuda で礼拝堂 cappella カッペッラを埋め尽くしたのは彼です。
元々この礼拝堂は1447年に天使のような画家修道士 Giovanni da Fiesole ジョヴァンニ・ダ・フィエーゾレに発注されました。Beato Angelico ベアート・アンジェリコ(天使のような神の恵みを受けた者)として知られる画家です。 ところが彼は大人気画家であり、極めて従順な修道士だったので教皇のいるローマへ呼ばれて行ってしまいました。十五ヶ月で彼と Benozzo Gozzori ベノッツォ・ゴッツォリを筆頭とした、彼のBottega ボッテーガ(工房)が仕上げたのは天井部分で、壁は残されました。アンジェリコの最高傑作とは思いませんが、いかにも Beato Angelico の工房らしい作品です。呼ばれて行った教皇庁に描いたフレスコ はそれは素晴らしいものなのに、長くヴァチカンでは公開されていません。
アンジェリコの工房がいなくなった後、何人かの画家が後継に考えられます。ラッファエッロの師匠だった Perugino ペルジーノは、当時世界最高額級の大巨匠で、しかも忙し過ぎたため頼めませんでした。1499年に、40年以上経過してやっと決まったのが Signorelli シニョレッリでした。
上の画風からいきなり下の画風になっちゃったのですが、ドメニコ会の修道士たちは驚かなかったのでしょうか。彼らはフレスコ の内容には、神学的に深く関わっていたのですが、画風まではどうだったのだろうと思います。
自動詞(〜が終わる)
Il mondo finisce fra poco
世界は間も無く終わる
Il lavoro della cappella e` finito nel 1502
その礼拝堂の仕事は1502年に終わった
他動詞(〜を終える)
Luca ha finito di affrescare tutto in maniera molto originale
ルーカは全てのフレスコ を大変独自の手法で仕上げた
Luca ha finito di lavorare anche per la cappella sistina
ルーカはシスティーナ礼拝堂でも仕事をやり遂げた
それにしても当時の男性の格好はすごい。こういうのが理想だったんでしょう。ルネサンス恐るべし!
finireの終わると言う言葉を止める(辞める)と混同してはなりません。
finireはすっかりし終える、と言う意味なので仕上げる、やり遂げる、と言う意味で終わると言うときに使うのです。
だから
Ho finito il lavoro
私は仕事を終えた(仕上げた)
Ho smesso il lavoro
私は仕事をやめた(職を変える、退職した)
悪魔光線が飛び交っています。それにしても天国を現した天井はアンジェリコが、世界の滅亡である黙示録をシニョレッリが描いたのは、適材適所の最高の例ではないでしょうか。ルーカは裸体や「うぎゃーっ!」となった人を描くのが得意技でしたが、正反対のアンジェリコを尊敬していたのでハルマゲドンの大惨事の中に自分とアンジェリコを描きました。締め殺される人を後目に涼しい顔をしています。この絵は特に、惑わされる人々に囲まれた、台の上のアンチクリストで有名です。
ちなみに Raffaello ラッファエッロもべアート・アンジェリコを自分のフレスコ に描いています。それはミケランジェロのシスティーナ礼拝堂と並んで、ヴァチカン博物館の最大の見どころですし、絵としては余程美しいものです。
アンジェリコは二つの画面の両方で、左隅に描かれています。ドメニコ会の黒い衣装をつけているのが彼です。ラッファエッロの方がだいぶ歳をとっています。ラッファエッロは多くの美術家を「アテネの学童」と言う美術史上最高に名高い作品に描きましたが、アンジェリコだけは「聖体の論議」と言う別の内容に描きました。内容から明白なように、アテネはルネサンスの文化人が夢中になった古代ギリシャ・ローマがテーマですが、アンジェリコは100%キリスト教の人だったからです。
Raffaello e` finito troppo presto
ラッファエッロはあまりにも早く終わった(死んだ)
ma la sua fama non finisce mai
しかし彼の名声が終わることはない(彼の名は永遠だ)