天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリア語・美術】ire 動詞:聞き感じるロマネスクのバルガ

直接法現在の動詞の最後の変化です。

前にire 動詞の第二変化をやったのでここでは第一変化。

より簡単な are  ere と同じ変化の仕方です。

 

原型 sentire センティーレ 聞く、聞こえる、感じる、など

io sento セント

tu senti センティ

lui/ lei sente センテ

noi sentiamo センティアーモ

voi sentite センティー

loro sentono セントノ

 

全ての動詞は二つの部位からできてます。

意味を持つ頭の部分と、人称(主語)を表す後ろの部分です。

後ろの赤字部分を切り落とし、主語によって入れ替えれば文章ができます。

この変化には aprire (open), partire(発つ)などがありますが多くはありません。

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Barga

Domani parto per Barga 明日私はバルがへ発ちます
partire はほぼ出発すると言う意味で使うので簡単ですが、sentire は内容が日本人には難しい言葉だと思います。英語で初めて hear を知ったときに、発音と文字の関係も難しいですが、物音を「聞く」のも、人の話をよく「聞く」のも、伝聞として「〜だそうだ。〜と聞いている」と言うもの、そこから派生して「便りをもらう、消息、噂を知る」なども皆一緒で、ときには「叱られる、罰せられる」とかまで内容に幅があるのに驚きました。今と違ってなかなか受け入れ難かったです。sentireは英語のhearの意味と似たような意味に、英語のfeel「感じる」と言う意味が加わるので、さらに幅広くなります。その上他動詞と自動詞、再帰動詞があります。他動詞から。

 

肉体的に「感じる」と言う意味で

Sento fresco a Barga 私はバルがでは新鮮な空気(涼しく)を感じる

Senti freddo / caldo ? 君は寒いの・暑いの?

Sentiamo un profumo dell'aria di campagna! 
田舎の芳しい空気を感じよう(わ〜!良い空気だね〜!)

Sentite sete/ fame ? 君たちは乾き・空腹を感じるか
(あなたたち、喉が乾いたの?お腹がすいたの?)

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Barga

「聞く」と言う意味で

Senti! 聞いて(命令法)

Abbiamo sentito la notizia del Salvatore
我々は救世主のお告げを聞いた

Sentite che cosa ne penso io
お前たち、私がどう考えているか聞くが良い

写真はトスカーナの素晴らしい村バルガと、その大聖堂です。バルガは大変小さいですが、私にとっては大好きな村の一つで何度も訪ねています。住む勇気はありませんが、いつでも喜んで行きたい場所です。山々に囲まれた丘には典型的なロマネスク聖堂があり、中にはこれぞロマネスクと言わんばかりの説教壇と守護聖人の巨大な木彫像があります。質の高い彫刻家による大理石の説教壇には、救世主イエスの誕生の場面が描かれています。星に導かれ(馬に乗った二人の頭上にあるのが星)、聖母子のもとへ向かう三賢人です。右の年長の賢人はもう聖母へお参りしています。彼らはヘロデ王に、幼子を見つけたら報告するように言われていましたが、胸騒ぎがしたのでヘロデの宮殿へは帰りませんでした。

 

感情、感覚的に「感じる」

I tre magi hanno sentito paura 
三賢人は恐れを感じた

Hanno sentito la simpatia per Madonna col bambino

彼らは聖母子に親愛の情を感じた

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San Cristoforo

Senti il bello di romanico?
君にはロマネスクの「美」が感じられるか(分かる)

 

文句の付け所のない木彫蔵は聖クリストフォロスです。肩の上の小〜さなイエスが愛らしく、同時に威厳に満ちているのが中世ならでは。これがルネサンスとかなると普通の子供になっちゃうのですが、ロマネスクやビザンチン様式のイエスはどんなに小さくても王の威厳があります。足元の青い波は川の表現。クリストフォロスはお年寄りや子供などが川を渡るのを助けていたのです。手にした棍棒もいい感じです。丈夫な杖は巡礼の必需品で、巡礼者を渡していたのが分かります。ある時子供を背負ったはずなのに、川の真ん中でどんどん重くなっていきクリストフォロスは流されそうになりますが、身を呈して子供を守ると実はそれがイエスだった。と言うお話。中世らしい物語で、お釈迦様のお話などと共通点があります。ここでは貴族の装束を付けていて、これもロマネスクならではです。

 

Cristoforo ha sentito strano

クリストーフォロは変だと感じた

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Crocifissione

次は自動詞としての使い方

 

Lui non sente

彼には(耳が)聞こえない

il vino sente di aceto

そのワインは酸っぱい感じがする(味がする)

Chi non sente non comprende a fondo l'arte

感性が豊かでない者は芸術を深く理解できない

小学館伊和中辞典より)

 

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Barga

再帰動詞

Mi sento depresso con corona virus

(私は)コロナのおかげで気分が憂鬱です

ma mi sento bene vedendo le foto di Barga

しかし(私は)バルガの写真を見ると気分が良くなります

 

他動詞

Maria ha sentito svenire con l'arcangelo Gabriele

マリアは大天使ガブリエルのために気が遠くなりました

Maria e Giuseppe sentono di amare il loro bambino

マリアとヨセフは彼らの幼子を愛していると感じています

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Gesu` Bambino

さっきは三賢人でしたが、これはその前の場面。

Annunciazione 受胎告知(右)に引き続き、ベッドで休む Santa Maria マリアを気遣う San Giuseppe ヨセフ、よく見ると馬と牛がグルグル巻きになったイエスを覗き込んでいたり、女たちが体を洗ったりしています。生まれたてなのに堂々と仁王立ちになっているところもブッダを連想させますね。説教壇の一面に三つの場面が、枠を使うことなく描かれています。構図や威厳のある表情、彫りの確かさなど、素晴らしい芸術です。

 

これで動詞の基本変化は終わりです。sentire を使って、懐かしいバルガに思いを馳せました。

Mi sento la mancanza di te, Italia con la bellezza

美しいイタリア、貴方がいなくて寂しい

 

 

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