天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本・映画】芸術家の人生:ラファエッロ

Ciao Tutti! お休み楽しんでますか?私はいつもと変わらず本とコンピューターに浸かっています。

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La Fornarina, 1944

いよいよ来週がミケランジェロの授業の最後となりました。以前はシスティーナの天井画と祭壇壁画【最後の審判】を2回に分けてやろうかと考えた事もあったんだけど、この1年以上盛期ルネサンスシスティーナ礼拝堂にかかりっきりで私も疲れたので、次の秋講座でシスティーナとはオサラバしようと思います。

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Raffaello, 2017

ミケランジェロは物凄く本格的に見てきたので【最後の審判】は、また別の機会があればって事でよろしくお願いします。いつもの私の望み通り、やたら有名な同じものばかりやるんじゃなくて、知られざる素晴らしい作品や作家を紹介したいので、ウルトラ有名な【審判】に関しては、どうぞ本を読んでください。

www.ou.tmu.ac.jp

ということで来週がミケランジェロの最後で、休みなくラッファエッロが続きます。オンライン授業の開講は普段の対面授業より人気が無いみたいで、なかなか大学も苦しい戦いをしている中、秋講座の開講もとっくに決まり、私の授業に参加してくださる皆様に本当に感謝しています。Grazie mille!(ありがとうを一瞬で千回言います)

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Raffaello, 2021

再来週から始まる「ラッファエッロ」もシスティーナ礼拝堂の作品を追うので、美術史に燦然と輝く傑作【アテネの学童】も触れるけど、中心は「使徒言行録」のタピスリーです。ミケランジェロが異様に複雑で難解極まる表現だったのと裏腹に、素直な内容なのでご心配なく。

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Raffaello, 2017

そこでラッファエッロについて資料を紹介しようと思ったら、まともな研究所(美術史や歴史など)の本はミケランジェロやレオナルドとは比較にならないほど少なく、その代わり映画や漫画がありました。それもほぼ恋愛ものです💕

私はイタリアに住んでいた時「イタリア人ならラッファエッロが好きだ(レオナルドやミケランジェロやカラヴァッジョなんかより)」という事を言われたことがあります。日本の美術に関心のある人の間では、間違いなく評価が低いので印象的な発言でした。個人的には、ミケランジェロは突出した大芸術家だと思いますが、レオナルドをそう思ったことがないし、ラッファエッロがいいと思えるようになったのは結構大人になってからでした。私は外見とは真逆に尖った人間ですが、これでも人間が丸くなったのでラッファエッロの良さが分かるようになったのかもしれません。

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ラファエロ その愛

やっと今回の内容に入ります。里中満智子の漫画はズバリ少女漫画ちっくに「ラファエロその愛」です。研究書を探しに都立の図書館へ予約してまで行ったのに大した本がないし借りられないから、ひっさしぶりに少女漫画を読んじゃいました。2、30分で読めるので良いかもしれません。一緒に行ったMさんは「ラッファエッロがモンのすごく良い人」に描かれていたと感じたそうですが、私は「優柔不断極まりない人」に描かれていたと感じました。本当はどうだったのかもっと正確な資料を読まないとだめですね。

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La Fornarina, 1944

ごく一般的な入手しやすい本としては「ラファエッロの秘密」があります。これはカラヴァッジョなどの「秘密」シリーズで、イタリアのテレビで美術番組を作っていた人が書いただけあり確かに読みやすいものです。でも正直、私はこのシリーズ(著者)が好きではないので、何も知らない人で読書経験のあまりない人にはお勧めしますが、本の読める人はもっと別なものを読んだ方がいいかもしれません。

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ラファエッロの秘密

レオナルド、ミケランジェロ、ラッファエッロの三代芸術家を主人公にした入門書は何冊か出ています。どれも絵が多く、3人で一冊だしとっつきやすいと思います。西洋美術の通史も漫画があります。今では何でもかんでも漫画じゃないとダメなのかと思うと、日本の将来は暗いですね。漫画には漫画ならではの良さがあると思いますが、歴史や思想などはやはりもっと文字数の多い本で、さまざまな角度から深く考えながら読みたいものです。

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ルネサンスの三代芸術家

このマンガ西洋美術史シリーズは一冊ではなくルネサンスは2になります。ボッティチェッリダ・ヴィンチ(イタリアならレオナルドと書くところですが)、ミケランジェロラファエロティツィアーノ(ここまでがイタリア人で)エル・グレコルーベンスとなっています。私のイメージと絵が違い過ぎで、誰が誰だか???

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マンガ西洋美術史

小説もあります。ちょっと古いですがいわゆるミステリー(犯罪もの)でそれなりによく出来ています。意外にきちんと調べてあって、ず〜っと昔読みました。

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ラファエロ 贋作事件

先にゴッホの映画を紹介したのでラファエッロを探したら日本語のは見つけられませんでした。引き換えイタリア語は沢山あって、先述のリヴィオの言葉を思い出します。1944年製作の映画は少女漫画の上をいくロマンスで題名もラッファエッロではなく、その悲劇の恋人と言われている「ラ・フォルナリーナ:パン屋の娘」です。史実では全然恋人かどうか分からないし、どれが彼女なのか、描かれているのかさえはっきりしないのにね。

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La Fornarina

レトロなポスターがカッコいいので色々載せてみました。ウィキから拝借しています。(ちなみに私はめっちゃくちゃ少額ですがウィキ・サポーターです。これを読んでくださっている方は知識を大切に考えてくださる方々だと思うので、寄付してみてはどうでしょうか)今年製作された映画はネット配信されています。3番目の図「繊細な天才ラッファエッロ」です。

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Luca Viotto

最後に超イケメンの写真で締めます。ルーカ・ヴィオットは2017年のヴァチカンも協力して製作されたテレビ映画で「芸術の王子(君主)ラッファエッロ」で主役を演じました。ミケランジェロには望めない喜びです。

 

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