天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリアの旅】季節について考える

旅をするにはいつが良いだろうか。

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ルッカの巡礼資料館の映像

旅と天候はとても関係がある。いくらでもお金と時間のある人は良いけれど、普通の人は限られた時間と経済でやりくりするから、季節は重要だ。どの国でも良い季節というのがある。イタリアは伝統的にはひたすら冬は悪い季節だった。雨が降り湿気も多い。と言っても全体的な降水量は日本より少ない。が、近年世界中が天候不順なのかイタリアも以前のようにはいかなくなった。前は本当に降られなかったのに、最近は傘無しでは絶対に旅に行けなくなった。

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中世イタリア商人の活躍を表す地図

中部イタリアに住んでいて、イタリア中旅したから一応一年を通しての天候は知っていて、自分が旅をするのは9月と決めていた。9月14日がルッカのヴォルトサントの祭典の日でもあるし。とにかく9月はとても良い季節だ。8月のように暑過ぎて動けないこともないし、間違っても寒くない。良い季節なので結婚式が多い。歴史中央地区や海岸に立つ大聖堂など、建物の外で多いに祝うので、私たち観光客もよく目にする。時にはお祝いの声をかけたりすると喜んで応えてくれる。

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今年もプラートとピアチェンツァで三つの結婚式を目撃

イタリア中が夏の大休暇から覚めて動いているので、不便もない。夏の休暇などに当たると、銀行さえ閉まるし、交通手段からお店からとにかく閉まる。ビーチでは逆に夏だけ開くお店もあるけれど、イタリアはビーチに寝転んで時間を潰す国ではないと思っている。もちろんシチリアサルデーニャのエメラルド海岸なんかへ行ったし、素晴らしい思い出ではあるけれど、私にとってイタリアはやはり芸術文化の国。

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ピサの博物館の目玉作品ドナテッロの聖遺物容器

暖かい時期には荷物が小さくて済むのも大きな利点。冬はどうしても衣類だけでも膨らんでしまうので、機内持ち込み鞄にドレスも入れて旅したい私にはきつい。何より冬が良くないのは、早く暗くなることだ。夏から秋にかけては夕方の8時でも結構明るくて、1日をたっぷりと堪能できる。博物館や聖堂など、内部が明るいので夕方でも結構見えるから。反対に冬は鑑賞できる時間が入館時間も短くなるし、見辛くなって写真撮影はかなり厳しい。その上寒くないから真夜中まで古城や大聖堂広場で飲んでいられる。ビーチだけではなく、博物館のようなところでも冬季は一切開かない施設もある。寒がりながら旅して風邪引くのも嫌だしね。

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コッレッジョの天井フレスコ

ところが今年は台風と嵐の中を縫うようにして飛行機に乗った。私たちの前日の飛行機は全てキャンセルだったので、出発当日は成田に飛行機の大行列が出来、離陸まで散々待った。東京が台風で出発できなかった事もある。帰国便だったので助かったが、往路なら計画は台無しになる。イタリアも雨がちになったし、思い切って来年は9月を止めることにした。

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ノリメタンゲレ(我に触れるな)

9月でなければ6月が良い季節。5月の半ばまでは季節が不安定でかなり寒かったりするが、6月に入れば寒い事はない。私は寒いのが嫌いなのだ。断然薄着が好き!6月も9月もハイシーズンだからもちろん安くはないけれど、折角行くなら数万円高くても良い季節に行きたい派です。今度は6〜7月にかけて行こう。と決めたのですが、旅の参加者達から、行きたい場所を聞くとアッシージとかヴェネーツィアとか出てきて、悩んでしまった。

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水没するヴェネツィア

アッシージへ行くなら聖フランチェスコ巡礼にしたいので、行く前に授業でフランチェスコについてやっておきたい。長年の参加者なら一応知ってはいるけれどしっかり説明し直したい。ヴェネーツィアはあとどのくらい持つかわからない、本当に失われつつある特別な街だけど、嫌いなのでなかなか決心がつかない。嫌いな理由は簡単で、観光地過ぎるため、混んで、バカ高く、感じ悪い。(言葉が分かると、悪い事も聞こえてくるのは確か。)その上、何世紀にも及ぶ運河への垂れ流しはじめ、下水道設備と埋め立て問題で街が汚く臭い。夏は特に臭い。勿論何度か訪問していて、若い頃は夢のような街(特にリド島など)と感じたものだけれど。結局カラッとした夏好きの私は南部イタリアの美しさが大好きで、プーリアへ舞い戻ってしまう。トスカーナは最も美術作品の集中した地域で、街全体が作品のようだ。ローマは別格だし、シチーリアの迫力は一度は行く価値あり。

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フィデンツァの守護聖人

そんなことを考えている内に6月に行くなら出遅れてしまった。飛行機代はひたすら早く買わないとどんどん値が上がるので、半年どころか一年近く前に買いたいのだ。私は残念ながらお金持ちではないし、お金は本、入館料、現地での移動費、装飾品などに使いたいから飛行機にお金はかけられない。それならいっそ思い切って冬のイタリアへ、ひっさしぶりに行ってみるか。冬に良い街は北イタリアだ。そうヴェネツィアは冬でないと。昔、カーニヴァルの時期は島が沈むかという混雑だったけれど、最近はそうでもないらしい。ヴェネツィアへ行くならトルチェッロへ絶対に行こう。初期キリスト教時代の遺跡と聖堂が残る。

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ボナンノ・ピサーノのピサ大聖堂西扉彫刻


訪問地は修復の様子などこれから調べるけれど、来年は冬のイタリアへみんなを連れて行くつもり。時期的には経済的なはずだけど、北部は南部より基本的にお金がかかるので、それ程は違わないかもしれない。クリスマスはキリスト教徒でないならば訪問に適した時期とは思えない。年末年始は高いし、夏に使える巡礼宿のような所は、寒さに弱い日本人にはこたえるので宿代も掛かるだろうから。自分のお土産抜きで、30万くらいで全部できれば良いな💘

 

 

 

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