お買い物は全くしない。もしくはほとんどしない、という人もいる。もちろんそれぞれの勝手。私はお買い物が大好きなので、必ずイタリアで買ってくる。服も靴もイタリアのデザインの方が好きだし、変な体型の私にはその方が合うから。
今回は何が何でもヴィジェーヴァノで靴を買う、と決めていました。彼の地は、世界で初めて靴工場が作られた場所で、靴博物館もあります。ものすごく面白かった。女性ばかりの旅だからみんなすごく盛り上がった。写真は全て博物館で撮ったもの。イタリアを象ったブーツは、シチーリアとサルデーニャが無いけどそれもある意味真理だし、北イタリアが垂れ下がって形をなさないのも、深読みすれば理解できる。結局ローマを中心とした中部イタリアから半島の南部が歴史的にも最もイタリアらしいのかもしれない。ヴィジェーヴァノは紺色の隠れたギリギリの辺りだろうか。
博物館はガラガラで私たちだけの独占状態。入り口には街と靴の歴史を語るヴィデオの暗室があって、エステ家のお姫さまの話から始まる。
イタリア、ルネサンスなどの歴史を読んでる人には有名なエステ家だけど、ベアトリーチェはルネサンス・ミラノの最大の英雄(悪者)スフォルツァ家に嫁いだことで、様々な作品に描かれている。彼女が履いたんだって。へー。へちゃくちゃになってるなー。当たり前か五百年も前の話だもん。革でできた、厚底のスリッパみたいな履物は、時空を超えて私の心に迫りました。これじゃあ走れないなー。運動が得意だったはずなんだけど。靴の本も展示してあり、驚くべき厚底の作り方が解説してあります。
上は男たちの靴で、アメリカの小説家スコット・フィッツジェラルド、イタリア王家サヴォイアはフィリベルト、最後にファシストという言葉を創造したベニート・ムッソリーニの靴です。歴史を知らない人にはなんの感動もないかもしれないけれど、フィリベルトはイタリア史としても、フィッツジェラルドやムッソリーニは世界的な歴史的人物。特にムッソリーニの靴は、世界が右傾化する今、背筋が寒くなるような思いでした。
こんな呆れたデザインのコーナーもあります。ガガ様が履くかもしれない、いっじょーに厚底な黒い靴、先にヒールがついてる赤い靴、木型そのままみたいな靴、手前のは足指が見えてるらしい?
どうやって履くのか理解不能な靴もいくつもあって、これはストッキングが張り付いた靴で、実際使用されたものだって。女優さんも大変です。
シュールレアリスムの人気芸術家マグリッドに捧げられた靴。彼の初期作品を革で靴に仕立てています。
中国コーナーはムッソリーニよりも怖かった。私は絶対、民族主義者というか差別主義者ではないけれど、纏足は怖い。女性が逃げないように歩けなくするため、幼少期から小さい靴を履かせ続けるテンソクほど人権無視なものは無い。20世紀初頭に廃止されたけれど、現在もまだ纏足状態で生きてきた女性たちが農村には生きている、という記事を読みました。https://www.huffingtonpost.jp/2017/05/29/chinese-foot-binding-was-more-than-an-erotic-practice_n_16862992.html
日本コーナーもあります。一国に捧げられたコーナーとしてはこの二つだけで、いかに日本が独自なのか、再確認。個人的にはもっと綺麗な下駄や草履を展示したいです。
1933年の市長の靴。ヴィジェーヴァノの街の印を付けた革のブーツ。なかなか派手です。
靴博物館の入り口にひっそりと佇む靴職人とその弟子。弟子の見上げる姿が愛らしく、ちょっと切ない作品です。
というわけで、当然私も買いました。ヴィジェーヴァノの靴屋さん全部をゆっくり回りたかったけれど、聖堂も行かないとならないし、レストランも行ったしで断念。物凄くかっこいいパンクなお兄さんが、やたら感じが良いお店(クレアに載ってた)でも買いたかったけどサイズがなかった。赤いバックスキンとヘビ皮がイタリアらしい。歩きやすいヒールで、一緒に行ったMさんとお揃いなんだけど、彼女のは黄色でもっとモードな感じ。サイズも違うから全くお揃いに見えないの。このお店でもっと買えば良かった!!信じられない安さで、かっこいいのが沢山あった(今回最大の後悔でした)
博物館には「ヴィジェーヴァノの靴職人」という1959年に出版された小説に捧げられた場所もあります。ルーチョ・マストロナルディはこの街出身の作家で、欧米各地に翻訳された出世作は、自身の街を物語るもの。出版当時の靴が並べられています。私は60年代や70年代が好きなんだけど、こういうのもカッコいい!
文字通り「世界一地美しい広場」にエントリーするのが納得できる広場は、泊まったアパートの屋上から撮影!
最後に一言。フィレンツェのフェラガモ博物館より100万倍良かった💓