天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【映画】世にも怪奇な物語

原題 Histoires extraordinaires

制作 1967年 イタリア・フランス

昨日は一日放送大学の青山昌文教授の「美学・芸術学研究」を読んでいたんだけど、笑ったり納得できなかったりしながらも、芸術とはなんだろうかと考えました。これは私のライフワークだから一年中考えてるけどさ。でそんなところへ休憩に映画を探してみたら芸術っぽいのが見つかったので鑑賞。さすが60年代!1970年代にかけてのこの辺りの映画は、今では考えられない類の面白さがあって好きな作品が沢山ある。っていうか、「すきっ」って簡単に言えないところが面白い。いいんだか悪いんだかわんないんだけど、ゲ・イ・ジュ・ツなんだろうな〜???みたいなのが目白押し。

f:id:Angeli:20190726120110j:plain

DVD

当時のポスターが物凄い迫力なのに対して、最近出たDVDは至極平凡でつまらない表紙。アラン・ドロンブリジット・バルドーの二大スターを持ってくるという芸のなさ。この映画は3部作のオムニバスで、二人は真ん中の作品に出てくる。3部作の2番目って、誰が考えても一番ダメってことじゃない?最初と最後は大事だし、最も印象に残るから良い作品を持ってくるのが普通で、確かに一番平凡な内容だし、主演のアラン・ドロンがそりゃーイイ男だけど他の人より演技が下手。

f:id:Angeli:20190726120735j:plain

日本版

ヲーッ!日本版もおどろおどろしい!今回は珍しく題名はほぼ原題どおり。BB(ブリジット・バルドー)って最大のスターだったのか、どこでも大きく扱われてるけど実際にはジェーン・フォンダの方が断然主演。ポルノかと思われるような思い切った、ある意味カッコいい衣装で大活躍するし、とっても綺麗。実弟ピーター・フォンダ演ずる伯爵に恋して狂っちゃう役。中世とSFが合体したみたいな1960年代チックな衣装は、いつも楽しい。それに壁にかかったゴブラン織りはパオロ・ウッチェッロの絵の3流作品って感じなのも興味深い。

f:id:Angeli:20190726115132j:plain

ポーの原作

独特な幻想ホラー画家フュスリの表紙の小説。もともとこれはホラーの生みの親エドガー・アラン・ポー江戸川乱歩の名前がここから来てるのは周知の事)の小説「黒馬の哭く館」「影を殺した男」「悪魔の首飾り」が元になっている。中学生の頃、学校の帰り道必ず図書館へ寄って毎日いろんな本を読んだ。そこでポーや乱歩も読んだんだけど、少年探偵団と違ってエログロ小説が多い乱歩は、気持ち悪いわ怖いわで夢に出てきて大嫌いになったのに反して、本家本元のアラン・ポーの作品は不思議な感じが強く、絵画や映画ではできない文字の力を痛感した。しっかり書いてあるのにそれがどんな場面なのか、必死に想像するのにできない。それは一体どんなものなのだろう?どうなっちゃったのか?怖い詩みたいだった。

f:id:Angeli:20190726130233j:plain

Fellini

そんな幻想的な映像では説明できないポーの作品を映画化すると、ああいう風になるのか、などと考えさせられた。個人的には第3部のフェッリーニ作品が一番興味深い。自分のお金で初めて行った映画館、その作品はフェッリーニの「81/2」だったし、彼の映像美と批判精神にテレンス・スタンプも熱演だった。

 

あの悪魔の化身の少女はダリオ・アルジェントの「サスペリア」が引き継ぐことになるんだね。B級ホラー帝国イタリアの誕生だ!

 

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ