天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本】ヨーロッパ中世末期の民衆運動

題名:ヨーロッパ中世末期の民衆運動

著者:M.モラ Ph.ヴォルフ 

翻訳:瀬原義生

 

サブタイトルに「青い爪、ジャック、そしてチオンピ」とあるように、ウィクリフ、フス、ロラード派などは大異端者と言う了解のもと、民衆革命(巻き込まれたと言うような受動的な意味ではなく)を題材にした研究。

 

宗教改革5百年の今年再読。14世紀前後に多発したチョンピ、ジャクリーなどの乱は歴史における重大なターニングポイントで研究や翻訳もそれなりにあるが、これは民衆の関わりに的を絞って北欧を除くヨーロッパを対象に記される。宗教改革や異端運動の一般知識の上に読むもので、決して入門書ではない。国別に上から目線(権力側の資料が主だから仕方がないが)で解説されてきた事とは違った視点で捉えられ、世界情勢が非常に不安定な現在再読の価値あり。オタク的な図像研究などよりよほど美術を理解する上でも重要と信じる。

 

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