天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本】本と国民性。ルッカの場合

ゴールデンウィークいかがお過ごしですか?

私は普通の働き方と違うから、みんなが出かけるときはできるだけ邪魔にならないように過ごします。要するにあんまり出かけないで、時間に余裕のある時にしかなかなかできない事をする。

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1928年の論文

今回は国立市ルッカ市(イタリアはトスカーナ州の超素敵な街)の姉妹都市提携のためにルッカから市長御一行が来国立するのでその準備も兼ねて、溜まってるルッカ関係の資料を読んでる。もちろんイタリア語プラスたまにラテン語ラテン語の読めない私にはこれがキツイんだけど、中世西欧を勉強してれば当たり前に出てくるのでなんとか読み解きながら読んでる。ルッカ関係の本はたくさん持っていて、最近の物は比較的読みやすいんだけど、写真のみたいにかなり古い資料や、地味な論文などはどうしても後回しになってる。古いものはペーパーナイフで上の頁を切り開きながら読んだりする。それだけで映画みたいでかっこ良くない?28年の論文はもちろん活版印刷で、800年から1000年(中世盛期より前)のイタリアにおける宗教生活を扱ったもの。その頃ヨーロッパはまだまだだった時代にルッカはいち早く繁栄の兆しが見えた特別な街なのだ。

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1849年のルッカ

この本はルッカに初めて行った時に買って何度か読み始めたけれど、まだイタリア語力が足りなくて読み切れていなかったので今回やっと完読。ルッカの民衆史がテーマ。1:街の起源からカストルッチョ・カストラカーニ(封建領主の英雄)まで。2:パオロ・グイニージ(街最大のルネサンス貴族)まで。3:司教座聖堂法確立まで。4:共和国の最後まで。5:イタリア建国まで。という構成。基本知識として必読。とにかくルッカでは、日本のダサい本と違って本自体がアーティスティックなものが多い。表紙がぐるっと1849年のルッカを描いた版画で、中にも様々な時代の版画が挿入されている。

 

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小型本

ルッカに特にかっこいい本が多いのは、マリア・パチーニ・ファッツィという出版社があって、そこがセンス抜群なのだ。略してMPFはつい最近歴史中央地区にすごく素敵な書店も出した。

 

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書店

ルッカには大手の有名書店ももちろんあって、そこも素晴らしい内装だったりしてルッカのお洒落度が際立つ。イタリアには地元愛に満ちた人々が沢山いて、郷土史関係の書籍が多い。日本だったら街の図書館の地味〜な一角に揃ってる資料みたいなものが、MPFでは観光客もお土産にできるような可愛くてお洒落で手頃な金額のものから、研究者向けまで色々ある。絵画に覆われたお店では、出版物関連のイベントも行われて映像も交えた知的な空間が創出される。

 

そうそう、郷土愛といえば私も一応地元を愛していて、昨日も一日国立を案内しました。来てくれる人は大抵素敵なところだと言ってくれます。また来てね💖

 

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