天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本】システィーナ礼拝堂の図像探究のためにも(地理・年表)

先日、本当に久しぶりにオンライン授業ではありますが、都立大OUの講座が再開しました。人数が多いのでみんなと会話することはできません。でも参加者が、私の授業を待ちわびてくれたと知ることほど嬉しいことはありません。できることなら全員を連れてイタリアへ行きたい!

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ロンゴバルドとビザンチンイタリア半島

コロナになってプラスの面は、とんでもなく外出しないし人に会わなくなったので風邪をひかなくなったこと。毎年冬には風邪をひいていたのに去年は一度も引かなかったのに、授業を目前にして夜中まで資料を調べていたら風邪ひいちゃって熱があったのに、90分の授業を乗り切ることができました。オンラインの良い点を再確認。しかもリップサービスでも事務局からは「生き生きしたとても楽しい授業」とか言ってもらった。本来の私を知っている参加者からは、おとなしかったと言われたけれど。(おとなしいって「大人しい」と書くと思うと、日本的だなと思う。大人は黙ってろってことですか?波風立たせず、息を殺して様子見て生きろとでも??私は永遠に大人になれない)

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ヨーロッパ(ラテン)

そんなわけで初回の授業は、ルネサンス時期の地理を把握することからはじめました。世界史と地理は深く結びついているので、常に地図を片手に歴史書を読むのが理想です。システィーナ礼拝堂が中心なので、当然教皇領が中心となります。

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私の本棚の一部

地理はgoogle・mapもしょっちゅう使うんだけど、歴史地図が必要なので、時代に合わせた物を探す必要があります。多少日本語でも出ていますが、高額なものも多くやはり図書館利用を勧めます。

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図説ヨーロッパ歴史百科

 例えば、この「図説ヨーロッパ歴史百科」は最初英語版で入手しました。日本語が出たのは何年も経ってからで、しかも何倍も高く不必要に豪華な装丁ですが、授業でも使えると思って泣く泣く購入。内容は、かなり良いと思います。これ一冊読んだだけで世界史の勉強になりますからぜひお勧め。

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聖書・キリスト教歴史年表

キリスト教の歴史年表です。長ーーーーっく広げて、感覚的に、古代から現代までのキリスト教の大事件を把握できます。イタリアにいた頃はキリスト教年表など簡単に入手できたのですが日本だとなかなかそうはいかないので、これはおすすめできます。しかも2800円でした。キリスト教の出版社(いのちのことば社)だけあってルネサンス時期も、文芸のルネサンスではなく異端審問や宗教改革の時代として把握され、見方によって内容もすっかり変わるところも興味深いです。

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世界史図録

なんと言ってもお手軽なのは教科書のような堅い本専門の山川出版から出ている「世界史図録」。この初版では内容にとんでもない間違いを発見しましたが、改定されているので使えると思います。日本も含めた世界が対象だし、断然安い分内容も薄いですが、何も読まないよりよほど良いし、年表と地図もそこそこ入っています。

この他に「コンサイス聖書歴史地図」も割と入手しやすいかと思います。キリスト教関連資料は、専門の本屋さんがあるので銀座や四谷などに行ける方は書店へ行ってみるのも楽しいと思います。普通の本屋さんと全然違う雰囲気で、グッズがあったり喫茶店もあったりします。ちなみにお勧めは「聖パウロの足跡地図のクリアファイル」と「みことばクッキー」!

www.kyobunkwan.co.jp

www.paulus.jp

www.wlpm.or.jp

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Atlas of the CHRISTIAN CHURCH

これは私が勉強しはじめた頃ロンドンで買った愛読書で、大切にしているけどもうボロボロです。 デッラ・ロッビアの感動的なイエス像が表紙で、普通の世界歴史地図には見られない地図がたくさん入っています。

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宗教改革期の派閥別地図

残念ながらというか、当然ながらというかヨーロッパのことを勉強しようと思えば圧倒的に英語ができた方が豊富な資料が入手できます。中世の研究には、重要なフランス語やドイツ語資料が目白押しなように、ルネサンスのことを勉強したいならイタリア語ができるのとできないのとでは雲泥の差です。

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巡礼についての解説頁

語学はいきなりできるようにはなりませんから、まず手当たり次第日本語資料に目を通すべきでしょうが、もし貴方が若くて勉強が嫌いでないなら絶対に語学に力を入れるべきです。コロナで明白になった日本(経済も人権などの社会意識や文化程度も)の遅れは、一つには語学力に問題があると思います。英語ができれば世界中のさまざまな出来事を自力で知ることができて、日本と比較検証することができるのだから。これから日本が鎖国することもないでしょうから将来仕事を探すときにも絶対役に立ちます。私は後悔しない主義ですが、最大の後悔をあげるとすればもっと若いうちに真剣に語学を習得すべきだったということです。もう若くないと思っている人でも、語学が嫌いでないなら必ずある程度は進歩しますから、ぜひ勉強してください。海外の書物、映画やドラマ、音楽を聞いたり旅に行ったときに喜びが全く違いますから。(世界中の人とネットでゲームもできます💖)しかし勉強の最大の喜びは、自分で上達したことを体感したときでしょう。自力でやったという達成感は何物にも変え難いものだから。

 

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ