天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリアの街】パエストゥムとサレルノ司教座

2018年9月25日(四日目)

 

サレルノが最高なのは、この旅の当初から計画しているパエストゥムに行くため。30分で着きます。

 

Paestum

 

ポンペイに行かない代わりってわけじゃないけどパエストゥム訪問。

 

ここについても以前書いているので見てください。パエストゥムの説明があります。ヘラ、ケレス、ネプチューンの三つの違った様式の神殿が残った世界でも有数の古代ギリシャ遺跡です。今からもう、アドリア海の真っ青な海と空、広々した空間に堂々と立つ神殿が想像できます。シチーリアでも感動しましたが、ここが最も状態が良いのです。

 

3 templi

 

二つは判別可能ですが三つ目が遠くにあるのが分かりますか?みんなが疲れていなければ歩きましょう。外の神殿を回ったらお昼にしましょう。博物館レストランと博物館カフェの他に「パニーノの神殿」と言うお惣菜パニーノ店もあり、どれもいい感じです。そのどこかで。

 

Mozzarella di Bufala

 

北部と違って南部イタリアは、とにかく新鮮!野菜もそうだけど日本人にとっては絶対チーズ!チーズには熟成させたものとその日に食べる新鮮なものがあって、南部では絶対新鮮系がお勧め!写真は水牛のモッツァレッラブルスケッタ。超シンプルだけど、それだけにトマトやチーズ、オリーブオイルの味が最高💛

 

お昼が終わったら、いよいよ「飛び込む人」に会いに博物館へ。

 

飛び込む人

 

このなんとも言えない楽しげなお墓のフレスコを拝みに行きます。以前は詳しく書いてるので読んでね。

 

 

この周辺はとっくに世界遺産登録されている場所ですが、珍しいエトルリアギリシャのフレスコが極めて多く、非常に観がいのありそうな博物館です。

 

Tempio di Netturno

 

絵かと見紛う美しさです。

 

パエストゥムを満喫したらサレルノへ帰ります。サレルノ駅目の前のホテルへ、荷物と共に入室。元気のある人は私と街へ繰り出しましょう🍷

 

Salerno

 

私は何が何でも司教座聖堂へ行くと決めているけど、疲れていたら宿で休んでいてください。ナポリよりずっと安全だし、たまには外出組とお休み組に分かれて、別々に食事しましょう🍝

Duomo di Salerno, San Matteo Evangelista

 

私と大聖堂へ向かった人を、福音書記者が迎えてくれる。

 

パエストゥムからサレルノへ帰ってきたら、宿で一息してすぐ司教座聖堂へ向かいます。宿が駅前だと、移動には圧倒的に便利。

 

San Matteo Evangelista

 

なんと派手な聖人でしょうか❗️よく観れば確かな技術で製作された銀の彫刻と判ります。もっとよく観察すれば、天使のような存在と本が見てとれます。西洋美術を勉強していれば、これでマタイと分かるはずです。福音書記者マタイの象徴は「羽の生えた人のようなもの」なので天使みたいなのは、実は天使ではなくマタイの象徴、手に持っている本は当然、自分で書いた福音書です。現代のド派手な飾り付けでも福音書がお花で表現されています。

 

 

サレルノ守護聖人は、なんと福音書記者マタイ。なんとって書いたけど、だって福音書記者ってたった4人しかいないのだから、そりゃー大したものです。しかもマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネという順番で新約聖書は並んでいるので、聖書を開けたらまずマタイが目に入ります。因みにマタイが「有羽の人のようなもの」なのは、マタイがキリストの人間界における系譜から書き始めた事と関連があると言われます。ライオンのマルコ(力強い内容)、牛のルカ(ルカは馬小屋でイエスが生まれたと書いたので)、鷲のヨハネ(彼の文章は飛翔するようだから)と比較すると、断然意味が明快です。ヴェネツィアが聖マルコの遺体を盗んで来たのは有名な話ですが、サレルノにはシリア生まれのマタイの御遺体があります。上は聖人のお祭りの写真、9月21日、私のイタリアの旅に参加しにみんながナポリに着くその日です。う〜んちょこっと残念。

 

 

近くで見るとかなり怖い。これは1544年にサラセン人の大襲撃を受けたサレルノを、聖人が救ったときの奇跡。大聖堂で祈る人々、突如、天が割れ現れた聖人は「サレルノは私のものだっ!!」と怒鳴ると、一天にわかにかき曇り嵐や竜巻がサラセン人を乗せた船を木っ端微塵にしたのでした。その時からサレルノのシンボルは聖マタイとなりました。

 

 

 

 

Simbolo di Universita` di Salerno

 

サレルノの象徴表現はいくつかありますが、とにかく聖マタイが主人公です。ここではペンと本を持っています、ペンの代わりに本と祝福の手というのもあり、これは上記の奇跡を忘れないためです。それではこの象徴はなんでしょう?ペン両脇には長衣の人たち。Hippocratica Civitas Studium Salerni と書いてあります。ヒポクラテスは紀元前460-370年頃生きたギリシャの医者です。彼の最大の功績は、医学を迷信や呪術(祈祷)などから解き放ち、臨床と観察が大切、というまさに科学の真髄に導いた事です。現代だって非科学的な思考は数多に見られるのだから、真に知的な人でした。それがなぜサレルノ

 

Universita` di Salerno

 

サレルノには9世紀にもう高名な医者がいて英仏の王様などがやって来たという、世界初の医学校があったそうです。12世紀には当時知られた世界中で有名になり、13世紀にはバチカン公認となっています。要するに世界初の医大であり、大学としてもボローニャ、パリに次ぐのです。シンボルの人に戻るけど、長い衣を着た人は知識人で、彼らは医者なのです。

 

Cattedrale San Matteo

 

横道に外れましたが、という事で聖マタイへ捧げられた司教座聖堂へ。交差部にドームがかかっていないのは古い証拠。さらに聖堂前に中庭がついているのも歴史を感じさせます。

 

近世に撮影されたバロックの正面です

 

 

ビザンチンのモザイクもあちこちに残っています

 

 

床モザイクも最高品質

 

コマチーニ

 

コマチーニってイタリア語でよく言うんだけど、幾何学的で精巧な床モザイクを各地で製作した人々のこと、またその作品。中世に豊かで重要だった聖堂に観られる。千年経っても色褪せない素晴らしい技術。この聖堂内では、床だけじゃなく、説教壇や衝立などにも使われて居ます。

 

守ってくれている。こういうところは日本と同じ

 

 

観終わった頃は日が暮れていると思うけど、ここまで暗くないんじゃないかな。聖堂は旧市街の真ん中だから、そこで食べて帰ろう。サレルノではあちこちの聖堂で無料のコンサートもやってるみたいだし、もし私たちが居る二日にそんなイベントがあったら行ってみない?

 

海を背景に、聖堂前広場でコンサート

 

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