天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリアの街】世界最高峰の考古学博物館とルッカの十字架

2018年9月24日(三日目)

 

移動の日。この旅では2回しか移動しませんし、前後がナポリなんだけど、間に二日サレルノへ泊まります。

 

Croce di Lucca

 

アマルフィポジターノに泊まろうかと思った私が甘過ぎでした。アマルフィにはそれなりに宿の数あはるけれど、カップル用、家族用でダブルベッドだらけ。どこでもそうなんだけど、人数分のベッドを探すと言うのが最大のネックになってアマルフィは却下。ポジターノは、私のような貧乏人は見たら目が潰れちゃうくらいの金額で却下💰

 

ティレニア海沿岸地図

 

サレルノにするか、海に面したバルコニー付きのロマンチックな宿にするかすごく悩んだ末、サレルノに決定。ロマンチックな宿は辺鄙な場所には見つけたけど、行くのに時間がかかる。それに反してサレルノならナポリから40分(急行なら30分)で、その上しょっちゅう電車があるので凄く気が楽です。マイオーリの海に張り出した宿を考えたけど、そこへ行くには一日二本しか選択肢が無かったから。と言うことでサレルノでは超駅前のめっちゃくちゃ便利なホテルに二泊。シンプルだけど広いし、仕事が確実と評判です。と言うわけでサレルノへは夜到着しても心配なし。1日の最後に移動します。

 

月曜日なので閉まっていないところで最重要なのが、世界最高峰の考古学博物館です。

 

Museo Archeologico Nazionale di Napoli

 

私は正直言って、ナポリは詳しくありませんし、考古学は門外漢なので、ここへも2回しか行ったことがありません。しかも一回は風邪をひいて具合が悪いのに無理して頑張って見たので、今回は万全の体制で臨みたいです!

 

この超広大な建造物は16世紀に馬の調教用に建てられました。全く信じ難いことです。17世紀には大学として改築され、1777年にナポリ大学が旧イエズス会修道院へ移動すると、ブルボン家など王家の収蔵品を展示する場(大図書館もある)となり、1860年いよいよイタリアが生まれた時、国の所有となりました。

 

怖可愛いワニのモザイク

 

世界史の教科書に必ず登場するアレキサンダー大王のモザイクはここにあります。

 

紀元前333年のイッソスの戦いで、遂にアレクサンダーは王の中の王と言われたダレイオス3世自らが率いるペルシャ軍10万と激突。圧倒的少数だったにも関わらず、アレクサンダーは縦横無尽に多数の軍隊を指揮し、ダレイオスの母、妻、娘を捕虜にする。彼のカリスマ性が轟いた瞬間だった。ポンペイ出土。

 

西洋美術館にあるローマ風景にも描かれている、かの有名な(ルネサンス期には史上最高の作品と評価され、複製や様々なヴァリエーションで表現された古代彫刻)ファルネーゼヘラクレスもここにあります。

 

私のお気に入りは、黒い青銅の走る人や動物たちの像のある部屋

 

紀元前5世紀頃の最高にカッコいい神はゼウスかポセイドンか?

 

18世紀にポンペイやエルコラーノなどの遺跡からどんどん発見された、ポルノな日用品は学者たちをドギマギさせ、大混乱を引き起こしましたが、現在は「秘密の部屋」に収納されています。目を疑うような大胆な造形のものが目白押しです。

 

山ほど出土した男根

 

楽しげな巨根の焼き物たち

 

 

ポンペイから出土したものはほとんどここにある。突然の噴火で埋まってしまった人々の姿が生々しい。街の再現模型。

 

 

カメオ技法で製作された古代ローマのガラスの壺

 

とにかく絶対見切れない量の芸術品や日用品が、様々な技法で堪能できる、間違いなく世界最高峰の博物館です。

 

この博物館は(も、と言うべきか)巨大で疲れるので、午前中一杯見学。

 

宿の方向へ向かいながら、お昼にしましょう。

 

Pasta e fagioli

 

南イタリアの海岸地域は、言うまでもなく海の幸が断然お勧めです。私が食べたいのは伝統料理の豆のパスタ(ムール貝そえだとさらに良い)です。でも博物館の前に新しくできたヴィーガンのピッツェリーア Vitto Pitagorico があるから、お腹が空いてみんながイライラしてたらそこでも良いけど、やっぱり伝統ナポリ料理の店もたくさんあるから辛抱するか。

 

博物館を出るとまず目の前に聖子羊聖堂があり、コンスタンティノープルの聖母聖堂が見えます。この道を歩きます。美術アカデミーと二つの聖堂を通過。

 

San Pietro a Majella

 

今では中庭にベートーベンがいるクラシック音楽のコンサートを主にする聖ペテロ聖堂を左に曲がります。すると大きな広場に出ます。駐車場になって雑然としていますが、実は中世らしさを留めた地域で、誰〜も行かないと思うけど、私の愛するルッカのヴォルト・サントに捧げられた聖堂があります。何が何でも行きます。

 

Volto Santo di Lucca a Napoli

 

Croce di Lucca

 

Croce di Lucca

 

1688年建立。ルッカのヴォルト・サント(聖十字架)に捧げられた聖堂でしたが、20世紀に病院の一部とするため、最も芸術的だった部分が壊されました。仕方のないこととはいえ残念です。同時に聖堂ではなくなり閉じられていましたが、つい最近開かれました。すぐ上は夢のような本屋、として解放された時の写真です。中には、まだ往時を偲ばせる、外からは知る由もない素晴らしい祭壇やフレスコが残っています。私たちが行った時に空いているかどうか調べきれませんでしたが、兎に角行きます。入れたら私は感動で、話しかけられても聞こえなくなるかもしれないので、一緒に行くみんなは知っておいて。

 

時間をかけてナポリ料理を味わった後に、街を歩きながら地味な聖堂を見つつ宿にたどり着いたら、カバンをとっていざサレルノへ。

 

サレルノは世界初の医学校の地。当然医学の歴史博物館があります。怖い部分もあるけれど、人間の知識と学問の発展、逆に言えば不合理な迷信が、いかに一般的であり、人間は感情でものを考えるかと言うことが分かります。

 

 

医学校や病院がどのようなものだったかを示す様々な資料。

 

ヴァーチャル博物館、サレルノの医学学校と言う名前

 

http://www.museovirtualescuolamedicasalernitana.beniculturali.it/it/

博物館のUチューブです。その名の通り、ヴァーチャルに再現していて面白いので見てみて。司教座聖堂博物館もある。

 

 

ま、サレルノへは何時に着くか分からないから、みんなの様子を見て決めます。

 
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