このところずっとシスティーナ礼拝堂を詳細に観ています。昨日も大勢が大変熱心に講座へ参加してくださり、心から感謝します。ここで紹介している本もずいぶん読まれていて、入門とはかけ離れた本にも飽き足らない様子の方に、授業でやっと納得したと言っていただけました。もっと詳述しているものはないかと探されている人も何人かいるのですが、紹介した日本語の物以外をお求めなら、論文か英語かイタリア語文献しかないでしょう。しかし論文は部分的な、実に専門的な研究なので、私としてはそこまでするよりもっと多くの芸術家や、世界史、美学としての哲学など幅を広げた方がいいのではないかと思います。
参加者は全員、歴史、美術、文学、作品の背景や画家の個人的な人生など、皆それぞれの興味を持ち、それを深めているのが伝わり、本当に嬉しいです。
今取り組んでいる「ミケランジェロの天井画」は、空前絶後の複雑な内容を持っているので、一回の授業が実に盛り沢山できっと頭が疲れることと思います。私の授業はいつも盛り沢山ですが、今回は、様々なことを同時に考えるので特別大変です。でもみんなで違った訳の聖書を読んだり、一人ではできないこともできて楽しいです。昨日は、神様に楯突くヨナをみんなで読みました。
10月からの三ヶ月、秋講座ではラッファエッロを取り上げます。ミケランジェロとは性格も画風も、人生も全く違った天才です。悩み、怒り、猛烈で、孤高であると同時に、本当はとても暖かい人だったミケランジェロとは違い、明るく、社交的で、みんなに愛され、誰とでも上手くやれた美男子ラッファエッロは、実は非常に冷静で、大変若くして成功の頂点を極めました。
この一年システィーナ礼拝堂に取り組んでいるので、メディチ家の史上最年少教皇レオ十世によって発注されたタピストリー(織物)を中心に見てゆきますが、ミケランジェロの授業とは違い、ずっと肩の凝らない授業となるでしょう。複雑怪奇な作品ではない上、画風も晴れ晴れとしたラッファエッロらしい美しいものです。もちろんミケランジェロも美しいですが、彼の作品とは戦わなければならないのに引き換え、ラッファエッロの作品はゆったり堪能できるのです。
作品解説がそれほど難しくないので、彼の人生の話に時間が割けます。ローマでの話を中心に、取り巻きたち、女性関係、発注者たちも華やかな人ばかりです。ラッファエッロは女好きがたたって死んだと言われてきましたが、本当でしょうか?信じ難い量の仕事をこなしながら、いくら大勢を使うのが上手かった彼とはいえ、そんなに遊びまわっていられたのでしょうか?
屈強な男性の裸体で溢れるミケランジェロの授業とは正反対に、柔らかな女性たちが大勢出てきます。ミケランジェロとの対比も見ものです。
コロナで本気で自粛している私は、全く美術館へ行けていません。そういう方も多いと思います。今年の最後はラッファエッロの美しい作品で、癒されて終わりたいと思います。来年はルネサンスと離れて全く違った内容で始める予定ですので、盛期ルネサンスに興味のある方、ぜひこの機会によろしくお願いします。
秋講座の申し込みが始まっています。上記、大学のサイトからお願いします😃