前回はuomo(男)の単語を巡って書きました。今日はdonna(女)を巡りたいと思います。写真は女性を扱った美術作品で、作品に興味を持ってくださった方のため、作者と現在存在する場所を示しました。
Donna ドンナ 女(微妙だけど、どんな女?って覚えやすくないですか?)
まず名詞の確認。対で覚えよう。
donna:uomo 女:男
人間に対して使用
femmina : maschio メス:オス
種の性別。植物や動物にも使える
signora : signore 奥様、ご主人(日本語では訳し難い。英語のMr.などと同じ)
肩書き、女主人など社会的に使用。呼びかけ
signorina
未婚女性に対して使用されたが、結婚観の変化などで時代により使用法に変化がある。昔は未婚男性を指すsignorinoもあったがほとんど死語か冗談になった経緯もあります。
例文
donna per bene
育ちの良い女性(良家の子女)
時代錯誤の感もあるけれど、こういう簡単な単語だけれども上手く訳せないというのは注目すべきだから、例にあげました。
donna di classe
上流階級の女性
最近日本も経済格差が大きくなっているけれど、欧米は日本より明確に社会階層の名残があるし、小説や映画などにはよく出るので知っておくべき表現。
donna in carriera
キャリアウーマン、経歴につながるような仕事をして働く女性。働いていれば誰でもキャリアウーマンとは言わないのに注意。
donna di gusto
趣味の良い女性。この言葉は好き。センスが良いとか洗練されているとか、そういう時に使う。
donna cannone
大砲女(どーいう意味だ?と思うけど巨大な女性を指すらしい。フェリーニの映画によく出るサーカスの女性を想像してください)
buona donna
気の良い女(娼婦を指す俗語にもなるところが面白い)
calzone da donna
女性用靴下(ストッキング)
le mie donne
私の女たち(一族の女性みんなを指す。南イタリアっぽい)
ちなみにイタリア語は語尾を変化させることで、意味を付け足します。英語でもdogをdoggy、catをkitty、ワンワンとか子猫とか、可愛い、小さい、愛らしいという感じを付与するのと同じで、それをほぼ全ての単語に使うことができるのがイタリア語の特徴です。
donnina ドンニーナ
ina をつけると上の英語と同じように小さくなります。若い女性とか小柄。
donnone ドンノーネ
逆に one をつけると巨大化。大女
donnetta ドンネッタ
etta は愛らしい、愛おしい感を出します。別に小柄じゃなくても結構
donnaccia ドンナッチャ
accia というのは蔑称と言って、悪い意味をつける時。素行の悪い女性、というか犯罪者まで行かないけれど不良というか礼儀知らずな問題のある女。
聖母マリアのことをMadonnaとも言いますが、元は貴婦人に対する尊称でした。私の世代でももう使わないと思うけど、かつては日本にも大学やクラスにマドンナがいました。漱石の小説でなど知ることができます。
英語のwoman がmanにwif(元は女、後に妻)を付け足して作られたのと比較し、donnaはラテン語domina女主人=という意味で気分が良いです。このカノーヴァの有名な作品もナポレオンの妹だけあって、いかにも女主人という雰囲気。
これはローマのボルゲーゼ美術館のカノーヴァの作品ですが、調べていたら「アントニオ・カノーヴァ作 天然大理石彫刻 パオリーナ・ボルゲーゼ」が楽天で売られているのに気づきました。どうみても彼の作品ではないし、本物は当然二百万ちょっとで買えるようなものではありません。実際にはいくら出しても買えないのが事実です。よく見ると「カノーヴァの作品をモチーフにして作られた」と小さい字で書いてありますが、大きく何度も「カノーヴァ作」と書かれています。美術作品の贋作の闇市場は巨大なものです。これは贋作というにはあまりにも似ていないのですが馬鹿なお金持ちが買っちゃうんでしょうか。知り合いがフランスからステンドグラスを買い、自分の建造物に嵌め込んだ時に裏返しに嵌めたのを思い出します。古代の美術品の個人コレクションはほぼ贋作か盗品だと、ニューヨーク市大ジョン・ジェイ・カレッジ刑事司法大学院のエリン・トンプソンは言っています。フェイク・ニュースが世界を席巻するなか、楽天でも許してはいけない気がする。それより国会で平気で嘘が通用するのを許さない世界になって欲しいけど。心から。