天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本】美術館を訪ねる

このところずっとネットで別世界に行く時間が長かったので、更新してなくてすみません。読んでくださっている方に心配されたので、書かせていただきます。

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小さな美術館巡り

私の都立大オープンユニバーシティの講座「世界の美術館」も順調に進んでいます。アテネの国立考古学博物館(古典様式の紹介用。以下、同様に一定の様式にテーマを当てて紹介しています)、パリの国立中世美術館(ロマネスク&ゴシック)、ロンドンの国立美術館ルネサンス)、ローマのボルゲーゼ美術館バロック)まで終わったところです。今週末から近世になります。普段は圧倒的にイタリアを中心に話しているのですが、今回は毎回違う国の美術館を紹介しているので、正直言っていつもとは違った大変さです。ほとんど読めぬドイツ語と格闘中の現在・・・。せめて英語版も作ってほしいところです。振り返ってみると、結局大変有名な大美術館ばかりになっていますが、これから先はそうとも限らないので、乞うご期待!

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イタリア・ルネサンス美術館

今回の講座のテーマのために、美術館や博物館を紹介する本をたくさん読みました。私にとっては、松浦弘明先生の本は普段から馴染み過ぎだし、一国一館と決めた時から、ルネサンス美術を所蔵する美術館は世界中にあるのに対して、バロックは絶対イタリアだっ!と思ったので、この本はここで紹介するだけ。いつものようにしっかりした内容です。ルネサンス好きの人、どうぞ!

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ぶらぶら美術博物館

美術館のガイドブックは、沢山あります。西洋美術館など、大美術館はたいてい所蔵作品のガイドブックを出しています。メトロポリタン美術館ルーブル美術館グッゲンハイム美術館などの有名美術館は、日本で編集された紹介ガイドブックがあります。珍しい美術館・博物館やマニアックなガイドブックも多少はあります。

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Tokyo Museum

手軽な値段と内容なのは、この手のお散歩用美術館巡りのようなタイプで、非常に沢山出ていました。芸能人(?)や美術史の素人が紹介するような、個人の感想を綴ったタイプも結構あります。私は最初から(高校生ぐらいから専門書を選んでいました)こういうものを読まないので、よく分かりませんが親しみやすいのかもしれません。手にとって気に入ったものを読めばいいと思います。

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全国美術館ガイド

全国美術館ガイドは、専門的な美術出版社が定期的に更新して出している正統派です。1800館という数字は他にはなかなか無いでしょう。百科事典的にとっておける資料です。

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世界美術館の旅

文字はできる限り少なく、基本は写真で構成されているという最近の傾向に合わせた本も、色々あります。作品に焦点を当てるのか、それとも旅に焦点を当てるのかで内容は全然違うものになると思いますから、自分に合ったものを選んでください。

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名作に出会える美術館案内

私は東京の郊外に住んでいるのですが、東京の美術館を紹介する本は、思いの外多い気がしました。確かに知られざる小さな美術館や、都心には現代美術を扱う空間は少なくありません。日本の美術館巡りも当然ありますが、東京に比較し少ない気がしました。それらは当然、日本美術や民芸館、写真や陶芸、版画なども頻繁に扱っています。

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日本のBEST美術館100

統計をとったわけでは無いので間違っているかもしれませんが、世界の美術館案内関連の書籍は、時代的には1980年代から90年代にかけて非常に多く出されている気がしました。現在と違って、日本経済に翳りが見えない時代で、心にもお金にも余裕があったのかもしれません。特に世界を対象にしたものから、日本国内を対象にしたものへシフトしている印象を受けました。トップに乗せた、近場の小さな美術館でお茶を飲んでくつろぐ、みたいなのが最近流みたい。

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世界美術館めぐりの旅

今日はこの本で締めたいと思います。1928年に創業した、日本最古の洋画商である日動画廊の社長夫人が、世界中を旅して西洋美術館を紹介しています。1978年から84年まで、好き勝手に選んで優雅に旅できるなんて、羨ましい限りです。全くの素人ではありませんが、全く研究者ではありません。15、16世紀のイタリア絵画(最も有名なルネサンス美術!)を初めて観たと言っているし、ヴァチカン美術館のページでは、ミケランジェロではなくベン・シャーンやビュッフェを掲載しています。大体ヴァチカン美術館自体続編に収録されているし・・。作品や美術館の選び方で、時代の流行がわかります。まず印象派、そして20世紀の美術。フランドル絵画も僅かにありますが、まるで中世には芸術は存在しないと言わんばかりに皆無です。写真も白黒の粗いものだったり、現代人にはついて行けない世界です。でももっと昔は写真そのものがないんだから、文章で作品を紹介しました。だから19世紀の研究者たちの文章の見事なこと。

 

早く三回目のワクチン打ちたいなー。打ったらまず美術館へ行きたい。

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ