天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本】ルネサンスを知るために(美術)

都立大オープンユニヴァーシティ事務から連絡がありました。オンライン授業はコンピューターに抵抗がある人が多いのか、なかなか参加者が集まらず大苦戦を強いられている中、私の授業は既に沢山の応募があるそうです。一年半も都立大では授業ができず、もう少しで世捨て人のゲーマー(脱出しまくり!歴史建造物建てまくり!)になりそうな勢いでしたが、生徒になってくださる人たちに救われました。こんな、流行りも、ウケも無視した専門的なブログでも読んでくださる方が結構いて感謝に耐えません。ありがとう千回。グラツィエ・ミッレ!Grazie Mille!!

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Pinturicchio

で、授業の前に読んでおくと良い、ルネサンスに関心のある人に読んでほしい本の第三弾は、美術史の本です。ちゃんとした本屋さんへ行けば、何かしら一冊くらいはあるでしょうから、まずは手に入るものならなんでも良いのですが、何冊か挙げます。アマゾンでルネサンスと検索すると塩野七生著のルネサンスがたくさん出てきますが、あれは小説だということを忘れないで欲しいです。好きならとっかかりには良いと思いますが、NHK大河ドラマと同じでエンターテインメント。

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ルネサンスの美術

塚本博著『ルネサンスの美術』。「すぐわかる」とひらがなで書かれていることからも明白なように、手っ取り早く知りたい人、ゼロスタートの人向けには良いシリーズだと思いますし、この著者の本はもっと本格的なものもあるのでお勧めします。入手も簡単。

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イタリア・ルネサンス美術史

この図説シリーズも入門書として非常に役立つのではと思います。松浦弘明先生には、装丁は一般向けであっても内容は極めて本格的な著書もあります。

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西洋美術の歴史シリーズ

この本は上のような一般書ではありませんが、大学図書館にありそうな西洋美術史のシリーズものです。時代を追って分かれていますがルネサンスに関しては1、2とあるのでまず1からどうぞ。百科事典のようにできているので、気になる項目から読んでみるのも良いと思います。図書館は、基本的にどこでもリクエストできるはずです。この本はそれほど豪華本ではなく持ち運びもできるので借りられる可能性大です。

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イタリア・ルネサンスの巨匠たち

この本はイタリアで出版されているシリーズです。イタリア語オリジナルは安価ですが、日本語版は3880円、時にはコレクター値段で一万円以上!がついているので、やはり図書館にリクエストしてください。チマブーエからベルニーニまで30人の美術家が選ばれていますがボッティチェッリミケランジェロのような有名人は無理なく探せます。版が大きい上写真枚数が圧倒的に多く、一人で一冊ということもあり非常に観やすいので、私も沢山持っています。今回の都立大OUの授業に関係があるのは、ボッティチェッリ、ギルランダイオ、シニョレッリで、関連という意味ではフィリッポ・リッピ、フラ・アンジェリコラファエロ(シリーズに表記された名で記しました)辺りです。

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ペルジーノ展:甘美なる聖母の画家

今回の授業でもシスティーナ礼拝堂でも最も重要な画家であるペルジーノに関しては、日本語で読めるきちんとした本は見つかりませんでした。この2007年に損保ジャパンで行われた展覧会カタログが多分、彼に関する最も固まった資料です。大型本ですが安く入手できるので、好みならば入手したら良いでしょう。

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西洋美術史入門

西洋美術史の簡単な解説本はあちこちから結構出されているので、気に入ったものを一冊手に入れたらどうでしょうか。図版の大きさや文字など、自分に合ったものを選べば良いと思います。美術史の知識がもうあるというような人は、入門書ではなくもう少し踏み込んだものに。

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もう一つのルネサンス

岡田先生にはたくさんの著書があり、独特な視点のものから現代美術に至るまでありますが、この「もう一つのルネサンス」は初期の力作です。基本を読んだ後にどうぞ。

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ルネサンスの芸術家工房

この本は私の愛読書です。この本を読んで美術史をやりたいと思ったような本の一冊です。素晴らしい内容ですが、入門書ではないので歴史や美術をある程度知ってから読むべき。

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イタリア・ルネサンスの文化:ブルクハルト著

正直いって、私のブログを読んでくださっている方にはもうお分かりの通り、私は馬鹿らしいほど簡単な解説書が嫌いです。小学生ではあるまいし、大人なら漫画だけでできたルネサンス美術史とか、やめて頂きたい。だってどんなに簡単に解説するにしても、それほど簡単にはいかないはずなものを無理矢理簡単にしてしまうということは、真実をかなり捻じ曲げているということに他ならないからです。どんなにカタイ本でも、時には間違いもあるし、新たに判明した事実や、時代によって大方の研究者の見解が変わるなど、絶対正しいものはないけれど、無理に簡単にしようとした本よりは余程真実に近いはず。

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ルネサンス(クセジュ)

大体美術の本なのだから図版を一生懸命観る必要があり、それを手描きにして紹介するのも、私には馴染めない。漫画が大好きならば、上のような本に付け足して楽しんでください。

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イタリア絵画史:ロンギ著

簡単な本から始めました。最後の方、クセジュ文庫など、図版は既に知っているのを承知で、文章を読み込んでいくタイプです。クセジュは私の基本文庫で、ルネサンス絵画史もあります。ロベルト・ロンギはイタリアの美術史において大変有名な人なので一冊入れてみましたが、ルネサンスというよりイタリア絵画をどう捉えるかという内容です。本当はロンギ以外にもイタリア人の重要な美術史家は何人もいますが、ここで紹介したいような翻訳が無いのでこの辺で。

 

注)以前、オンライン授業は当日出席できなくてもいつでもみられると書きましたが、そうではなくて、授業当日から一週間以内だそうです。失礼しました。オンラインだろうが、とにかく授業が楽しみです🎨 

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