天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリア語】綴と発音を土地の名前で覚える3

イタリア語の文字の綴(つづり)と発音を、イタリアの土地の名で勉強する第三弾。

Fenis フェニ in Valle d'Aosta ヴァッレ・オスタ

子音sで終わるのはイタリア語の基本と違う。イタリア語がなぜ日本人に発音しやすいかと言えば、日本語のように母音で終わるからで、そうなると多くの場合カタカナで明快に発音できる。さらに本当はFenisという綴もeの上にアクセント記号を付けたもので、この辺がフランス文化の影響が濃いのを感じる。州の名は「アオスタ渓谷」。valleは英語のvalleyをすぐ連想できる。d’というのは所有を表す前置詞 di のことで、続くaostaが母音で始まるので省略してd’となる。なのでアオスタの渓谷という意味なのだが、カタカナにすると「〜の」というところが一音になってまるでダオスタという名のように感じてしまう。これはよく見かけることなので意味を考えるときには注意が必要。ただ音はディ・アオスタではなく続けて発音しダオスタとなる。

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フェニスのお城はまるで絵本に現れるような姿

Volterra ヴォルテッラ in Toscana トスーナ

Rはイタリア語の中で最もイタリア語らしい響きを持つもの。カタカナでは書けないが巻き舌。Romaのように冒頭に来るか、ここでのようにrrと重なれば何が何でも巻く。ラなんて気軽なもんじゃなく、もっと強烈な音。

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エトルリア博物館で祝杯をあげ続ける夫婦の石棺はリアル過ぎ

L'Aquila ラックィラ in Abruzzo アブルッツォ

定冠詞がついた名を持つことは非常に珍しい。他にはLa Speziaがある。定冠詞 La と名詞 Aquila(鷲)だが、母音なので省略して一続きで発音するとラ・アクィラではなくラックィラとなる。州名は破裂音Bに二重子音が重なり、力のこもった音。

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平らな屋根は建築途中、象嵌が印象的なファサードはラックィラの特徴

Cefalu` チェファルッ in Sicilia シーリア

イタリア語のアクセントの基本は音を大きくすることではなく伸ばすこと。だからリズムが出る。でアクセントの位置は単語の後ろから二番目のシラブルにあるのが基本ではあるけれど絶対ではなく、チェファルのように最後に来ることもある。最後にアクセントが来るときはアクセント記号が必須なので間違えようが無い。問題は日本語では書けないこと。よくチェファルーと書いているけれど間違い。何が間違いかっていうと最後のアクセントは音を伸ばさないのが規則だから「ー」は間違いなのだ。だから私はチェファルッと書いてみました。

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アラブ・ビザンチン・ノルマン様式の三大バジリカの一つを持つチェファルッでは崖っぷちの修道院に泊まったのを思い出す

 

 Caserta Vecchia カゼルタ・ヴェッキァ in Campania カンパーニァ

s の発音は清音「セ」と濁音「ゼ」があり、母音に挟まれたら濁音。カゼルタはaとeに挟まれてるので完全に濁音で発音しやすい。chi は「チ」でも「シ」でもなくいつでも「キ」で、頻発するので最初に身に付けること。古いカゼルタという意味で、古く無い方には信じがたい巨大な大宮殿がある。ヴェルサイユに対抗して建てられた18世紀ヨーロッパ最大の宮殿。でも私は宮殿好きじゃなく聖堂好きなので、丘の上の、今では小さな村となった中世都市「古いカゼルタ」の方が好き。カンパーニァはインドヨーロッパ語の共通で、破裂音pの前の「ン」の音は nでなくmとなる。

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大宮殿があるカゼルタより中世の小さな村の方が私は好き

Catania ターニァ in Sicilia シーリア

イタリア語にはKが無いのでカの音はcaで表す。ca:カ ce:チェ ci:チ co:コ cu:ク che:ケ chi:キ あらゆるイタリア語の綴と発音の中で何より先にこれを叩き込んでください。nia はニャというよりニァ。ニャはgnaと書く。

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街を襲った溶岩を再利用した広場の中心は象の泉

Vicenza ヴィチェンツァ in Veneto ヴェーネト

Cの使い方の練習。ceはセでなくチェ。zは微妙に濁る人もいる。

 

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建築の神様パッラーディオの街ヴィチェンツァで知り合ったイタリア系アメリカ人の兄妹

Lucca ルッカ in Toscana トスカーナ

Cの練習。さらに二重子音なのでつまる。

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生涯を捧げることになった洗練されたロマネスクの街ルッカ

Cividale チヴィダーレ in Friuli Venezia Giulia リウーリ・ヴェネツィアジューリア
Cの練習。ciはチ。GはCからできた文字なので音も同類。Cを濁音にすればGになる。ca→ga はカ→ガ ci→gi はチ→ジ ciu→giu はチュ→ジュ というように。Fの次にUが無いのでフとはっきり言わないように注意。

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私が知る限り最強の祭壇彫刻がある蛮族の街チヴィダーレ

Cagliari カ(リ)アリ in Sardegna サルデーニャ

今まで避けてきたのが gli の発音。gli 以外の組み合わせはなく gla とか存在しないから1文字として覚えた方がいいくらい。発音をカタカナで表記するのは無理なので発音記号を記すとʎで Cagliariはˈkaʎʎari となる。ちなみに発音記号は世界共通だから知っておいて損はない。ほとんどがカタカナ表記で通じるイタリア語において唯一、明快でない音で無理に書くなら「リ」と「ギ」を掛け合わせたような音。口の中につばが溜まるような汚い音というと言い過ぎか。対してgnは簡単で gna:ニャ 

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古代的な雰囲気を残すカリアリの街でも取り分け印象的な聖堂

gli はイタリア語を勉強すれば盛んにでてきます。なぜって冠詞にも代名詞にもあるから。避けて通れない。でも一語で使うことはないので、文全体で見れば分かってもらえるから安心しましょう。

 

3回連続でイタリア語の文字の綴と発音をテーマに書きました。フランス語を除いてラテン系の言語は日本人には親しみやすい音をしています。私の経験では英語勉強で最初につまづいたのが発音と綴の問題でした。それなりに読めるようになって以後も、発音に自信がな無くなかなか喋れませんでしたが、そういったストレスがイタリア語の場合、非常に低かったので勉強が楽しかった。旅でもちょっと話せると全く楽しさが違うし、勉強してる人も、教養のため読んでくださってる方々も、アルファベットを見たら思い出して💙 

 

 

 

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