天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【本】ラッファエッロ・絵本から本格的なものまで

前回の講座「システィーナのミケランジェロ」の後、休みなく始まった「ローマ(システィーナ礼拝堂を中心に)のラッファエッロ」ですがちょっと休憩している間に、突然秋が深まりました。私は一年中変わりないけど、一般には読書の秋です。ぜひ読みまくりましょう!

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Raffaello il pittore della dolcezza

ということで授業に合わせてラッファエッロの本の紹介です。二回目の今回は、もう少し本らしいものを用意しました。でもまず絵本から。イタリア語では非常にたくさんの絵本が出ています。デジタル絵本もあるので最後に紹介しています。絵本の中では上のシリーズが大好きで何冊か持っています。全部ではないですがラッファエッロやレオナルド・ダ・ヴィンチ、ジオットなどは邦訳もあります。残念ながら邦訳は何故か装丁がダサいのですが・・・。このシリーズの好きなところはなんといってもセンスが良くてイラストだけで無く装丁が好きなのに・・。

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Raffaello

イタリアの子供向け絵本です。語学をやっている人はネットでも買えるし、旅先で買ってもいい。もう少しで(あと、どのくらい待てばいいのだろう?)またイタリアへ行った時に。

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Gioca con Raffaello

まさに今年授業でやってきた内容の本が下。「ヴァチカンにおけるミケランジェロラファエロ:システィナ礼拝堂」不思議なことに表紙の絵はミケランジェロでもラファエロでもなくペルジーノの絵です。ペルジーノの名では本にできなかったのでしょうね。中公新書のカラー版は、さすが「カラー版」というだけあって写真が豊富で内容の割に非常に低価格(たった千円!)で、散々お世話になっています。著者の深田麻里亜氏は次に紹介する本でも書いていて、日本の若手の美術史家で、とてもまともな書き方。美術史の正統派という感じがします。美大出身の私からすると、ほとんどの美術史家は歴史家ですから当然とは思うんだけど、絵自体の、芸術というか美術の見方がズレてる気がしてなりません。構図や背景に描かれている物や、どの作品の誰との共通性(影響関係)などが真面目に事細かく語られますが、それってそんなに重要なことなの?って気がしてしまう。そんな共通性を探さなくてもタッチや雰囲気だけで、初期のラファエッロがペルジーノとそっくりなのは絵が好きならあまりにも明快。構図の共通性を示されないと師弟関係に気付けないとすれば、よほど絵を見る素質が無い、と思ってしまう。大抵は研究者も分かってるんだろうけど、中には、とんでもなく違った作風の絵を、文字資料や細かい共通項で関連付けてるのを目にして、心底びっくりする。昔はファンアイクとヴァンダイクがごっちゃにされてた事もあったくらいで、時代も全然違うけど、何より恐ろしく作風が違うのに、いかに研究者が作品でなく資料に頼っているかが判ります。

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ラファエロ ルネサンスの天才芸術家

次に紹介するのは「ラファエロ:作品と時代を読む」で、どれか一冊選ぶとすれば、この本かもしれません。ミケランジェロの時にも紹介した同じ研究者たちの共著です。越川、松浦、甲斐、そして上述の深田先生たちです。ただ「システィーナ礼拝堂を読む」があまりに本格的な内容だったので、それに比較するとちょっと一般的になってる感じ。といっても美術史の知識がない人には苦しい本です。多少、美術やルネサンス史を読んでいる人にお勧めします。

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ラファエロ 作品と時代を読む

ルネサンス関連では当然触れられるし何冊もあるんだけれど、ラッファエッロ一人についての本はやはりかなり少ないので古い本も紹介します。

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ラファエロ

このシリーズは、イタリア留学時代に散々買い集めたので思い入れがあります。イタリアへ行って感動したことは山ほどありますが、美術が好きで滞在していた私にとっては、これほど多くの美術家の資料(本他)が商品化されているということが感動でした。日本では全く名前も聞いたことがない美術家が山ほどいて、素晴らしい作品が次から次へと出てくるし、画集も非常に豊富です。このシリーズは一人一冊で手頃だったのでよ買いました。有名な画家については邦訳が出ています。最新の研究ではないですが、まず一通り知るのに便利ですし、なんといっても大判で作品が見られます。

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グレート・アーティスト49 ラファエロ

1990年から毎週一冊出た「ザ・グレート・アーティスト」は全巻100冊で49番目がラッファエッロ。何でだろう?どういう順番かはよく分からないけれど、現代美術まで入るすごく面白いシリーズでした。オールカラー36頁という超とっつきやすい物ですので、入門者には絶対お勧めです。表紙がこれかっ?ていうのも興味深い。ネットにちょこちょこ出るみたい。今、全部欲しくなってるとこ。困った。

bussolascuola.blogspot.com

ネットのラッファエッロ紹介。イタリア語ですが雰囲気だけでも💖 簡単なYouTubeでラッファエッロの人間関係や人生や作品を見られます。アニメではラッファエッロがヴァチカンの「署名の間」で英語を話していて楽しいです。

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