天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【美術】システィーナ礼拝堂のミケランジェロ

おかげさまで、1年以上できなかった都立大の講義もオンラインではあるけどやっと再開でき、楽しく授業しています。都立大OUとしては例外的に大勢の参加者も皆熱心で、ここで紹介する本を読んで、旅に行ったりもしているようでとても嬉しいです。

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Michelangelo, Cappella Sistina

講義できなかった1年以上、さまざまな内容を考えていました。初めて緊急事態宣言が出された当初は、今こそ歴史的にパンデミック(社会に大規模に疾病が広がった状態)について考えるべきと思い、「ペスト」について散々調べました。親しくしていただいている石坂先生が日本を代表するペストの研究者(病理学的ではなく歴史研究)なので極めて専門的な資料も提供していただき、講座を用意していました。ところが何度も中止になる内、毎日いつ終わるともしれない病気の話ばかりされるのにうんざりしているのは私だけでは無いだろうと思い始め、やっと再開が決定した時には、晴れ晴れと私の専門(正確には中世だけど)の内容で明るい授業をしたいと感じるようになりました。

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Michelangelo, Cappella Sistina

それで原点に帰って、間違いなく美術史上最も重要な場である(他に無いとは言わない)システィーナ礼拝堂を選びました。私の講義に興味を持ってくださる方なら、訪問した人も少なからずいるでしょうし。ところがここからが私流で、システィーナといえばミケランジェロと思っている人が圧倒的だけど、そうではなく創建当初から始めました。あそこでは大勢の素晴らしい美術家が仕事をしているのに、まるでミケランジェロしか居ないような紹介の仕方は間違っているし、ミケランジェロの最高傑作は絵ではなく彫刻だと、以前から常に考えてきたからです。

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Michelangelo, Cappella Sistina

そこで現在行ってる春講座では創建当初のシスティーナと教皇の画家たち(ペルジーノ、ボッティチェッリ、ギルランダイオ、ロッセッリとその弟子たち、ラッファエッロ、ピエロ・ディ・コジモ、フィリッピーノ・リッピ他)等が描いた「イエス伝」と「モーゼ伝」を取り上げています。次の授業ではかの有名な「海が真っ二つに割れる」モーゼの大奇跡などについて話します。

夏講座は、ミケランジェロが主役。参加者の募集が始まったところなので、ぜひ上をクリックして都立大のページへ行ってください。夏講座は天井画「創世記」からはじめ、「最後の審判」まで、とにかくローマのミケランジェロを追いかけます。ミケランジェロは非常に長生きだった上、複雑な人物で彼の全てについて話すわけには行きませんが、フィレンツェの隠れていた地下礼拝堂など、極最近公開になった場所や、ルーブル自慢の所有作品「瀕死の奴隷」など、ローマ以外の話もすることになるでしょう。西洋美術史上、最強最大の悩める芸術家ミケランジェロを知ってみたくありませんか?

 

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