天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【展覧会】プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光

*以下は2018年の記事です。

 

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」に行って来ました。

 

公式サイトです。

https://artexhibition.jp/prado2018/

 

ベラスケスは美術が好きな人なら誰でも知ってるビッグネームです。正直言って、私は初期イタリアバロック以降のバロック、特にオランダやスペインのバロックが、今一好きではありません。ルーベンスなんか西洋美術館へ行く度に、やっぱり好きじゃないな〜と思ってしまう。

 

今回行ったのは、スルバランの自画像(?)と言われている作品を見るためでした。スルバランは中学生の時に画集で非常に気に入り、それ以来本物はあまり見られていませんが、好きな画家です。張り詰めた空気の中に熱烈な信仰心が溢れているのに、時間が止まったような彼の絵は、描き方は自然主義的な部分もありますが、シュール(超現実的)です。私は、完全な美と善の支配する超越的な世界に子供の頃から惹かれているので、超現実的な空間を無視できません。スルバランの作品も数点来ているのが、見に行った理由でした。

 

でも期待以上に面白い展覧会で、有名画家の名前だけに頼ったうんざりする展覧会とは違って、質が高く十分鑑賞できる環境(異常に混んだりしていない。パンダにお客を取られたか?)で満足でした。

 

ルーベンスは、どうしてそんなに評価が高いのか私には理解しかねる(歴史的、政治的背景以外)のですが、ベラスケスは流石で、彼が一枚上なのが明確です。思わず今回の目玉になっている、「バルタサール・カルロス王子の騎馬肖像」のグッズを買ってしまいそうになりました。王子のかぶった帽子も買いそうでしたが、後があったので買い止まれました(やれやれ)。

 

4歳くらいの女の子がお父さん(にしては年配な気もした)に「あれ何?」としつこく聞いていました。磔刑について聞かれた時は「キリストだよ」と答えましたが、ティツィアーノのビーナスのことを聞かれると、最初は無視し、しつこく聞かれたので「絵だよ。絵!」と言う返事。太った素っ裸の横たわる女性の隠部を見つめる楽器演奏者、と言うとんでもない絵を説明することは難しかったようです。

 

私は一般の人と、美術に関しては特に、感覚が乖離しているので、周囲の人の反応を見るのも楽しみです。時々は見知らぬ人たちと話したり、ちょこっと説明したりします。

 

非常に印象的な作品が何点かあります。カタログを買いたかったけれど、いつものやたら偉そうな分厚くて重い装丁だったので、辞めました。あんなもの買ってたら家が潰れますから。もっと軽くて、手頃なカタログにしてほしいといつも思っています。

 

王妃の間へ続く階段に飾られていた、道化師らの作品群は、人間の残酷さや悲しさ、生きる事の難しさなど複雑な気持ちにさせますが、ある意味で最も感動的なもので、ぜひ注目してほしいです。

 

 

ベラスケス展は撮影できませんが常設は大抵撮影できるので、携帯でいい加減に撮ったルノアールです。ティツィアーノと近い、横たわるデブ女です。こう言うの見てると、勇気付けられますが・・・。どこが良いの????

 

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ