天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

【イタリアの街】カンパーニア州:パエストゥム、ポセイドンの街

ナポリからポンペイサレルノアマルフィをすっ飛ばしてパエストゥムを紹介します。

 

 

 

Tuffatore

 

このフレスコは1968年にネクロポリスから信じ難い状態の良さで発見されたものです。フレスコ好きには喫水の作品で、私はまだ実物を見たことがありません。両親さえ見ているというのに、恥ずかし〜よー!本格的な美術書なら、どこにだって載っている超有名な作品です。物凄く観たいですっ!何年もず〜と前から見たかったのに、私は中世以降の芸術とフランチージェナ巡礼街道を主にあちこち回って居た関係上、カンパーニアにはあまり時間をかけていません。ということで今年は絶対に見たいです。

 

 

Tempio di Cerere

 

パエストゥムなんてイタリア語をやっていればすぐ分かるように、イタ語でなくラテン語です。でも元々はギリシャ語でポセイドニアといいました。ギリシャ神話の海神で、よくハリウッドでも活躍します。結構ゼウスに対抗して悪者だったりします。ここはギリシャ神殿が素晴らしい状態で残されていることで、世界有数の場所。ギリシャでは破壊が進んでしまったのでこっちの方が素晴らしい、という人もいるくらいです。何しろ神殿は一つでなく、三つも残っていて、これはシチリアのアグリジェントより凄いことです。シチリアにはセジェスタとかセリヌンテなど、完璧な形で残っている神殿がありますが、ここは街が想像できるくらい固まってあるだけでなく、最初に書いた、非常に貴重な絵画を所有する博物館があることで、頭一つ抜けています。

 

 

 

最初の「飛込み人」が最も人気があり、珍しい内容ですが、他にも楽しいのがまだまだあります。

 

男同士で、食事用ベッドに横になりいちゃついています。ラケットみたいに見えるのは楽器で、空になった杯を持ち上げ「お〜い、お酒ーっ」て人もいます。みんな上半身裸で月桂冠をかぶっています。月桂冠って、子供の頃から興味を持っていました。私はアクセサリー好きなので、装飾品も観るのは好きです。でも裸で月桂冠っていうのは、オリンピックを想像しないでしょうか。ところが宴会のシーンです。近年修復され、すっかり色が明るくなりました。これが宴会の場面なのは疑いようがありませんが、飛び込む人については、なんだか分かっていません。

 

 

これは組み立てたところ。石棺の内側に絵が描いてあるのです。この石棺に眠っていた人はどんな人だったのか、めっちゃ明るい人だったらしく、ひたすら楽しそうな絵が魅力です。今、気が付いた。飛び込み競技を宴会しながら楽しんでるんですね。飛び込みの場面だけ枠取りがあるし、きっとそうだ。眠っていた本人は、見ていた方か飛び込んでる方か。熱狂的なファンだってこともありえます。

 

 

こっちの方がどんなものか伝わりやすいですね。家の形をしていて、女性だからかとか想像しますが、男でも家形はあります。屋根の部分が無くなっていますが、ここに眠っていた人は動物好きな優しい人だったらしく猫が、足元で心配そうにしていて、馬や鳥も描かれています。お化粧もきちんとしているようです。

 

 

 

最後にもう一個だけ、この絵なんか、物凄くシュールというか、現代の大人の絵本みたいな感じです。三途の川を渡ろうとしているのでしょうか。カロンなのか悪魔的な天使が最高です。牛の毛の柄も勢いがあります。

 

この他にも面白いフレスコがたくさんあって、上手だなーふ〜んって言いたくなる、ギリシャの壺絵が並んでいるのとは随分と趣きが違います。もちろん彫刻や浮き彫り、いろんな展示物が丁寧な説明付きで見られるそうです。

 

 

古典ギリシャは西洋文明の原点として、世界史に輝いています。中でもヴィーナスやサモトラケのニケなど絶対的に美しく、特に美術に関しては文句のつけようがありません。ですが古典ギリシャの絵画というと全く残っていないので、この紀元前5世紀に描かれた、誰かのとても愉快なお墓の絵は、パエストゥムの名を世界的なものにしているのです。

 

旅について:私は考古学は苦手で、一般的なことしか知りません。だからパエストゥムにもまだ行ってなし、泊まろうとも思ってないけど、アマルフィにでも一泊して両方見ちゃえばいいかなーとか考え中。

 

西洋美術、イタリアの旅、読書が大好きな貴方へ、中世西洋美術研究者SSが思う事いろいろ