天使たちの西洋美術

美術、イタリア、読書を愛する西洋美術研究者SSの思ったこと

ティツィアーノ展

Google+からの乗り換えで過去の記事を写してます。2017年の記事です。

 

おととい毎度の上野へ行ってきました。ティツィアーノ展の入場券はバレンタインチケットといって、一枚で二人入れる超お得な券だったので込み込みかと思ったら、最適な混み方(興行的には残念かも)で、ゆっくり見られました。

 

http://www.tobikan.jp/exhibition/h28_titian.html

 

美術史的にはティツィアーノは、レオナルド、ミケランジェロ、ラッファエッロの三大画家に次ぐ特別な画家扱いを受けているので、もっと有名だと思っていたら以外に有名でないのを実感しました。考えてみれば美術史の本を読む人って数える程しかいないのかもしれませんが、美術史まで行かなくても、西洋美術全集とかルネサンス画集とかそういったものを見ていれば、ティツィアーノがスーパースターなのは知ってるはず。でも違うんだな〜。世の中って短期記憶でできてる部分が大きいんですね。ちょっとしたテレビとか広告で動いてる。ほんと常々思うけど媒体の責任は大きく、悪も大きい。

 

やっと展覧会について。

 

          

 

展覧会自体は悪く無かった。デッサン、下書き、版画ばかりで占められてると(過去にはそういうフェルメール展があった)騙された感じがするけど、ほとんどが油彩の完成品でそれなりに綺麗な絵が多く、割とわかりやすい内容ではないかと思います。

 

ティツィアーノはどんな画題でも描ける職人で、特にこの展覧会でもメインにしているような美人画が得意だけど、長生きしたので本当はいろんな作風がある。こういう綺麗な絵は装飾としてはいいかもしれないけど全然感動的ではないのに対して、後年の宗教画題はやはり感じさせるものがあるし、気合を入れた肖像画などは実力を感じます。

 

ヴェネチィア絵画を話す時に、源として忘れてはならないヴィヴァリーニとベッリーニ工房の作品は、多大な影響を与えているだけあっていつも発見があります。

 

個人的には、最大級に愛しているロットとピオンボの作品がかろうじてあったことが一番嬉しかったこと。ま、ロットに関しては工房作で彼の絵ではないので相当劣っていたけれど、異常に孤高感の強いロットが工房を運営していたことや、確実に彼の影響が認められることに慰められました。一方ピオンボは、私は彼の作品を求めてあちこち歩いて回っているし、ローマでの大展覧会には何度も足を運び泣きたくなるほど重い画集を買ってきた愛する画家です。一点とはいえ最も見たかった作品が見られたのが今回の展覧会の最大のヒットでした。貧しい羊飼いが振り向いた表情を捉えた小さな絵ですが、偉い人たちの肖像画ばかり並んだ壁の端で圧倒的に輝いていたと思います。

 

イタリアやヴェネツィア好きな人、美術の好きな人是非行ってください

 

 

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