イタリア語でsotto in suソット・イン・スッと言われる下から見上げる技法、「天井」を超えて「天上」が見える。という考えはポッツォの考案ではありません。遠近法と視覚の問題に取り組んだ美術家は大勢います。さらに「イグナチウスの栄光」ではイエズス会のシンボルIHSでしたが、盛期バロック美術のソット・イン・スッに付き物の象徴的な印はピエトロ・ダ・コルトーナの「神意の凱旋の寓意」に極めてルネサンスらしい形で表されていました。最後を締めるのはバルベリーニ宮殿です。Pietro Berrettiniが本名のピエトロ・ダ・コルトーナは盛期バロックの三代巨匠の内最年長の1596年生まれ。ジェノヴァ出身のガウッリが1639年、トレント出身のポッツォは1642年生まれなので半世紀違います。ガウッリとポッツォは二人共1709年に昇天しました。バルベリーニ宮殿の大広間の天井を見れば、ルネサンスらしさがみられます。天使の代わりに、ふくよかな理想的な美女たちとプットーという可愛らしいぷくぷくの幼児が半裸の姿で戯れている。陰りの無い明るい画風はカラヴァッジョの始めたバロック美術とは正反対です。
聖ペテロ寺院 Basilica di Santissimi Pietro e Paolo は正式には聖ペテロとパウロのバジリカです。その二人が共にあることに大きな意味があるからですが、一般にはペテロだけの名で呼ばれています。ベルニーニの大柱廊のなかを歩いて、その巨大さを痛感したりしたいものですが、時間がなかったり気持ちがはやって、一目散に大聖堂(バジリカ)へ直行してしまいがちです。でも広場を眺めれば噴水が二つあり二人の像があるのが分かります。それはペテロとパウロです。旧約聖書と新約聖書、伝統と革新、ユダヤ教と世界中の人々を二人は象徴しているのです。
ヴァチカン市国とその博物館 Citta del Vaticano con Musei Vaticani 聖堂クーポラ(大ドーム)へ登ったり、地下墓地を尋ねれば世界一の博物館と合わせて丸一日は十分かかる。博物館には西洋美術史上最も有名なラッファエッロの「アテネの学童」、ミケランジェロの涙が出るほど美しい「ピエタ」、ベルニーニの天才が発揮された聖堂や彫刻が目白押し。
花の聖母聖堂と大聖堂博物館 Santa Maria del Fiore, Musei dell'opera del Duomoルネサンスを象徴する司教座聖堂のクーポラ(巨大ドーム)は、大聖堂横の大聖堂博物館から目の当たりにできる。聖堂内は、博物館にほぼ全ての美術品が運び出されがらんとしているので、何時間も待って入場する必要なはい。博物館は圧巻で、美術愛好家なら卒倒しそうなほど。
ジオットの塔 Torre di Giotto とにかく高いところが好きなら登ったらいい。この塔は外観の彫刻が美術史上極めて重要なので、外から眺めるだけでもいいし、高いところ好きなら隣の大聖堂のクーポラに登る方が面白い。
洗礼堂 Battistero di San Giovanni 大聖堂や塔より、歴史的美術的によほど価値があるのが、大聖堂の目の前にある洗礼堂。世界一有名な扉(ミケランジェロが「天国の門」と呼んだ)はオリジナルが大聖堂美術館にある。天井モザイクが素晴らしく、最後の審判の地獄絵図が大迫力。修復されたばかりなので一番の見頃。
聖マルコ大聖堂と博物館 San Marco con tesori 問題なく一番外せない建造物は、西洋における最大のビザンチン様式聖堂の一つサン・マルコ。「ヴェニスの商人」ならずともうんざりする程ヴェネツィアではいちいちお金がかかり、大聖堂もいくつもの部分に分かれて支払う仕組みになっている。歴史や美術に特別な関心が負ければ、飛ばしてもいいのかもしれないが、私にとってはそれはあまりにも勿体無い。東ローマ(ビザンチン)帝国陥落を思い出す様々な略奪品が展示されている。モザイクを間近にみられる博物館やファサードの上から海や運河が眺められ、気分も上がるはず。
Domani parto per Barga 明日私はバルがへ発ちます partire はほぼ出発すると言う意味で使うので簡単ですが、sentire は内容が日本人には難しい言葉だと思います。英語で初めて hear を知ったときに、発音と文字の関係も難しいですが、物音を「聞く」のも、人の話をよく「聞く」のも、伝聞として「〜だそうだ。〜と聞いている」と言うもの、そこから派生して「便りをもらう、消息、噂を知る」なども皆一緒で、ときには「叱られる、罰せられる」とかまで内容に幅があるのに驚きました。今と違ってなかなか受け入れ難かったです。sentireは英語のhearの意味と似たような意味に、英語のfeel「感じる」と言う意味が加わるので、さらに幅広くなります。その上他動詞と自動詞、再帰動詞があります。他動詞から。
肉体的に「感じる」と言う意味で
Sento fresco a Barga 私はバルがでは新鮮な空気(涼しく)を感じる
Senti freddo / caldo ? 君は寒いの・暑いの?
Sentiamo un profumo dell'aria di campagna! 田舎の芳しい空気を感じよう(わ〜!良い空気だね〜!)
Annunciazione 受胎告知(右)に引き続き、ベッドで休む Santa Maria マリアを気遣う San Giuseppe ヨセフ、よく見ると馬と牛がグルグル巻きになったイエスを覗き込んでいたり、女たちが体を洗ったりしています。生まれたてなのに堂々と仁王立ちになっているところもブッダを連想させますね。説教壇の一面に三つの場面が、枠を使うことなく描かれています。構図や威厳のある表情、彫りの確かさなど、素晴らしい芸術です。
これで動詞の基本変化は終わりです。sentire を使って、懐かしいバルガに思いを馳せました。
Mi sento la mancanza di te, Italia con la bellezza
1981年のブルガリア映画Yo Ho Hoが元になっていて、ブルガリア語だから全然わからないんだけど、病院で寝ている男と少年、彼らの会話から生まれる異次元の物語と言う設定はそっくりそのまま。モスクワ国際映画祭で特別賞をとっています。「落下の帝国」では少年が少女になって、中年のおっさんが若いイケメンになり、異次元のお話部分の映像が格段に美的になってる。ただ世界遺産で撮影するだけじゃなくて、様々な芸術家や作品に対する高い関心が現れていて、ポスターを見れば、美術好きの人ならすぐにダリを思い浮かべるし、建造物だけじゃなくメブラーナのような伝統的な舞踊(本当は宗教儀式だけど)などもあちこちに現れる。